2023年6月30日の太陽。太陽表面の磁気のゆらぎを見ることができる。太陽の黒点は、私たちの星の磁場が強い場所に形成されるため、太陽表面の他の部分よりも温度が低い。
SDO/NASA
- 2023年6月、科学者たちは163個の太陽黒点を観測した。
- アメリカ海洋大気庁によると、過去20年以上のどの月よりも黒点が多かったという。
- 太陽活動が活発な時期には、送電網を破壊するような太陽フレアが発生する可能性がある。
科学者らによると、2023年6月の太陽には過去20年以上のどの月よりも黒点が多かったという。
アメリカ海洋大気庁(NOAA)は、2023年6月に観測された黒点の数は163で、この期間に予想されていた数の約2倍だった発表している。NOAAによると、太陽の表面にこれほどの多くの黒点が観測されたのは2002年9月が最後だったという。
黒点の数は、強力な太陽フレア(太陽における爆発現象)が地球に影響を与えるかどうかを予測するのに役立つため、科学者たちはこの数値に細心の注意を払っている。
太陽で観察される黒点の数が多いほど、電波障害や飛行機の欠航、送電網の混乱などを引き起こす可能性のある太陽フレアを放出する可能性が高くなる。さらに太陽フレアによって、見事なオーロラが現れるかもしれない。
太陽の黒点がこれほど厳密に追跡される理由
2023年5月23日の太陽の画像には、地球の4倍の大きさの黒点が写っている。
SDO/NASA
太陽の黒点は、この恒星の磁場が強い場所で形成され、太陽の表面の他の部分よりも温度が低い。
太陽の表面に黒点が多ければ多いほど、太陽表面の磁気活動が乱れていることを科学者たちは知ることになる。
NASAによると、磁場が乱れれば乱れるほど、突如として起こるエネルギー爆発である太陽フレアを引き起こす可能性が高くなるという。
予期していたよりも多くの黒点が観測されているため、予測よりはるかに強い太陽極大期(11年周期で訪れる太陽活動が大きくなる時期)が見られる可能性がある。
太陽極大期が近づいている
太陽は、約11年周期で成長と衰退を繰り返す太陽周期に従っている。太陽は現在、その極大期に向けて、活動が活発化する段階にある。
科学者らは太陽を注意深く観測している。なぜなら、太陽の活動が活発になればなるほど、我々のインフラを混乱させる荷電粒子を地球に送り込む可能性が高くなるからだ。
地球の磁場はほとんどの宇宙天気(太陽活動に起因する地球近傍の宇宙環境条件の変化のこと)から我々を守ってくれるが、荷電粒子がそのバリアを突破すると、電波障害などの軽微な混乱を引き起こす可能性がある。
これらはほとんど気付かれない程度のものだが、アメリカ連邦航空局(FAA)は、無線通信と衛星通信の両方がないと飛行機の飛行を許可していないため、一時的に飛行機が運航停止になる可能性がある。
専門家らが最も懸念しているのは、この活動のピークが送電網のような重要なインフラを破壊しかねない強力な太陽フレアを起こしてしまうことだ。
2023年の太陽は、すでに目を見張るような宇宙気象をもたらしている。強力な太陽フレアが北米、中米、南米に広範な電波停電を引き起こし、また予期せぬ太陽フレアによってアリゾナ州まで南下するほどの明るいオーロラが観測されている。
2023年3月24日、アメリカ・ワイオミング州リバートンで確認されたオーロラ。
NWS Riverton
誤った安心感
専門家らの予測では、今回の太陽活動の極大期はかなり穏やかで、黒点の数は1カ月に115がピークになるとされていた。
太陽物理学者のキース・ストロング(Keith Strong)は、黒点数が200個弱に達する可能性があるというベルギー王立天文台(Royal Observatory of Belgium)の予測をツイッターで紹介した。この数は前回の極大期で、2014年に月間の黒点数が146個に達したケースを上回っている。
専門家らは以前、Insiderにこのことが問題になる可能性があると語っていた。イギリスのレディング大学(University of Reading)で宇宙物理学を教えるマシュー・オーエンズ(Mathew Owens)教授によると、10年ごとに我々は電力インフラへの依存度を高めているという。
最近の太陽周期は特に静かで、我々に誤った安心感を与えていたかもしれないとオーエンズ教授は付け加えている。
「約100年間で最も静かな周期だった」 とオーエンズ教授は述べ、「静かな周期から少し活発な周期に移行することの危険性は、脆弱性が露呈することだ」 と付け加えた。
それでも、太陽の黒点が200個に達したとしても、観測史上最大の太陽極大期にはほど遠い。NOAAによると、1755年に太陽黒点活動の記録が始まってから19番目の太陽活動周期「第19太陽周期」では、1957年10月に359の黒点が観測されている。