作家・起業家のグラント・サバティエ氏。
Courtesy of Grant Sabatier
- 作家のグラント・サバティエ氏は、大半の資金をインデックスファンドに投資して、経済的自立を果たした。
- 彼の投資戦略は、純資産が増えるにつれて発展していった。
- 彼は不確かな未来に備えて、分散投資をしている。
グラント・サバティエ氏は、シンプルな投資戦略を続けることで、30歳にして経済的自立を果たした。その戦略とは、できるだけたくさんの資金をインデックスファンドに蓄えることだ。
「経済的自立を目指すたくさんの人と同じように、私もインデックスファンドを優先する戦略から始めた」と、現在37歳のサバティエ氏はInsiderにそう語った。「2011年初めにジョン(通称ジャック)・ボーグル氏の著作を読んで、インデックスファンドに投資すべきと確信した」
アメリカ人投資家、故ジョン・ボーグル氏が考案したインデックスファンドへの投資は、比較的リスクが低く、費用がかからない資金の運用方法である。
インデックスファンドとは基本的に、幅広いマーケットを代表する銘柄を集めたものだ。たとえば、S&P500にはアメリカ企業の業界最大手500社が含まれているため、このインデックスファンドに投資すると、アップル、マイクロソフト、アマゾンといった企業の株を一部購入することになる。インデックスファンドでは大儲けできないかもしれないが、幅広く分散投資することで、単一の銘柄による巨大な損失を被るリスクを回避できる。
たとえば、2000年11月に運用開始されたバンガードS&P500インデックスファンドへ、当初から1万ドル(約144万円)を投資していた場合、2022年4月下旬の時点で5倍以上となる5万500ドル(約728万円)に成長していることになる。さらに、こうした種類のファンドはコストがかからない傾向がある。
「私はすぐにトータルストックマーケットのインデックスファンドに投資をした」とサバティエ氏は語った。初期の投資戦略は、彼の著書『FIRE:最速で経済的自立を実現する方法』(朝日新聞出版)に詳しく書いてある。
サバティエ氏は貯金や投資のお金を増やすために、さまざまな副業を行って収入を増やすことに集中した。20代半ばには、彼は最大で収入の80%をインデックスファンドに投資していたという。
「経済的自立を目指すなか、私はできるだけ早く、たくさんのお金を貯めて投資しようとしていた。福利効果を理解していたので、貯蓄を前倒しすれば、福利の利率も促進できるとわかっていた。25歳で貯める1ドルには35歳で貯める1ドルよりも価値がある」
サバティエ氏は規律正しく、継続してインデックスファンドへ投資し、それが実を結んだ。30歳になると、投資で125万ドル(約1.8億円)の資産を築いていた。
「私が投資を始めたのは、忘れもしない2010年だ。今年を除くここ12年のリターンはずっとかなり上昇しているので、福利効果の恩恵をたくさん受けることができた」
2011年と2012年当時、サバティエ氏はアマゾンやフェイスブックなどの個別株にも投資したという。「幸いなことに、私の購入した株の大半が値上がりしたし、経済的自立を目指すなかでかなり上がったものある」さらに、2013年にはビットコインへの投資も始めた。
経済的自立を達成したあとの考え方の転換
2015年に経済的自立を果たして以来、サバティエ氏の資産は増えつづけている。それは福利効果、つまり、投資総額から生まれる利益に利子が発生しているおかげだ。「私のポートフォリオでは現在、何もしなくても毎年40万ドル(約5700万円)から50万ドル(約7200万円)のリターンがある」そうだ。
ポートフォリオが成長するにつれて、サバティエ氏の投資戦略は変化していった。「たとえば、純資産が500万ドル(約7億2000万円)を超えた時点で、投資の視野を広げることだけでなく、分散投資の拡大もさらに意味をもつ。私は実際に、トータルストックマーケットのインデックスファンドから資金を取りだし、ほかの分野に投資を始めた」
いまでも資金の大部分はインデックスファンドと個別銘柄への投資で、純資産の約2%が暗号通貨への投資だ。だが、サバティエ氏はポートフォリオを拡大して、ほかの資産クラスも付け加えている。
まずは不動産だ。サバティエ氏は、生活の拠点となるオハイオ州コロンバスと、インディアナ州に家を所有している。また現在、メイン州で物件を探している。不動産投資についてサバティエ氏は、その地域が気候変動によってどれくらい影響を受けそうかを主な要素の1つとして考慮している。
「現在の気候モデルを考えると、コロンバスは本当に暮らすのに最高の場所の1つだ。その一方で、トゥーソン、ヒューストン、ニューオーリンズ、アメリカ南部の大部分は、ここ数年、そうした場所の大半で不動産価格が上昇しているのとは裏腹に、洪水、ハリケーン、竜巻、森林火災の増加を考えると、実際には暮らすのに最悪の土地に入る」
次にコレクティブ(収集品)。サバティエ氏は過去6年間、スポーツカードのコレクションを所有していた。スポーツカードへの投資からはたいしたリターンを見込めないと思っていたが、「何よりもうれしい投資だった」という。「そうした資産クラスには純資産の2〜3%以上を投資しないが、集めるのが楽しくて、そこに価値を感じるなら、まちがいなく時間をかける甲斐はある」
また、2017年からはビンテージの腕時計も集めている。「これはかなり優れた市場力学が働く、とても興味深いマーケットだ。時計によっては非常に価値がある」。繰り返しになるが、ビンテージの腕時計に未来を賭けないほうがいい、と彼は語気を強める。「ただのお金をかける趣味でしかないけど、長い目で見たら儲かる可能性がある」
そして、スタートアップ企業。サバティエ氏は最近、ユーザーが経済的自立を果たす支援をするトピア(Topia)というアプリをはじめ、スタートアップ企業への投資も始めた。
企業への投資となると、「どんな種類の経済的リターンがあるのかだけを考えてはいない。それによって、自分の人生がどんなふうに豊かになるのかを考えている。時間をかけて自分のお金が増えるのは素晴らしいが、統計的にそうなる可能性はかなり低い。なぜなら、多くのスタートアップ企業が倒産するからだ。でも、こうした投資は、自分の人生を有意義にしてくれるものになる」
不確かな未来への備え
インデックスファンドを通じて株式市場への投資を始めた当初、サバティエ氏はそれが資産を築く確かな方法だと思った。そして、基本的にはそのとおりだった。資金の大半をインデックスファンドに投資して運用し、長期的な福利効果を見守って、サバティエ氏は経済的自立という目標を達成した。
だが、サバティエ氏は株式市場のリターン(これまでの状況だと、インフレ前では年率10%)だけに頼りたくはないし、ほかの人もそうすべきではないという。
「経済的自立に関心をもつ大半の人が、できるだけ多くの資金をバンガードのトータルストックマーケットのインデックスファンドなどに投資する」という。これは、いつまでも年利10%で資産が成長しつづけるという発想だ。
「未来は誰にも予測できないが、市場(アメリカ経済)がただ大きく成長する可能性がますます高まっている。でも、ここ10年間、30年間と同じ割合でこの先も成長するとは思えない」
サバティエ氏は未来について極端に楽観的なわけではない。そして、それを反映して彼の投資戦略は進化している。「特にここ5年で学んだのは、おもに不確かな気候変動のせいで、不確実性が高まる時期に差しかかっていることだ。未来はどうなりそうか? 私の投資の考え方は、かなりそこに根ざしている。そして、できるだけポートフォリオに柔軟性と順応性をもたせている」
だからこそ、たとえば不動産投資の際に気候変動を考慮に入れ、株式市場からのリターンが小さくなる可能性に備えて、分散投資しているのだ。
「始めたばかりの人にとっては、インデックスファンドが素晴らしい基礎になると思う」という。とはいえ、「ただ盲目的にいつまでもインデックスファンドに投資したほうがいいというアドバイスは短絡的だ。時間をかけて分散投資を増やしたほうがいい」
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