InstagramがリリースしたThreadsは“Twitterキラー”となるか?
Emin Sansar/Anadolu Agency via Getty Images
Instagram(Instagram)の新しいアプリ「Threads(スレッズ)」は、メタ(Meta)の従業員や有名人、インフルエンサーにとって束の間のオアシスとなっていた。しかしメタは同アプリのリリースを前倒ししたことから、限定アクセスは短期間で終了した。
Twitter(Twitter)にそっくりなこのテキストベースアプリは、1月から開発が進められ、7月5日(アメリカ東部時間)に華々しくデビューを飾ることとなった。当初は7月6日に公開される予定だったが、5日の午後7時(同)にスマホでの配信が開始された。
Threadsは7月頭ごろから、インフルエンサーや有名人、ジャーナリストといった数多くのコンテンツクリエイターに特別に提供されていた。
TikTok(ティックトック)で2200万人超、Instagramで79万人超のフォロワーを持つコンテンツクリエーター、ローレン・ゴッドウィン(Lauren Godwin)はInsiderの取材に対し、7月3日の夜からThreadsのベータ版にアクセスできるようになったと語る。数日間アプリを試してみたが、反応は上々だ。
「スマホを開いて、まず起動したのがThreadsでした。今ではそれが当たり前になっています。このアプリは私にとって、新時代の始まりです」(ゴッドウィン)
Insiderでは、Threadsへの早期アクセスに招待された5人の情報提供者(うち1人は匿名が条件)から話を聞いた。全体として、評価はメタにとって芳しいものだったが、クリエイターらはThreadsのみに一本化することには依然として躊躇していた。
「美しさという点では、このアプリはおそらく私が見てきた中で最も優れた部類に入る」と、70万3000人のFacebookフォロワーを持つゲームクリエイターであるアヴォリ・ヘンダーソン(Avori Henderson)は指摘する。彼女もメタから同アプリへの早期アクセスに招待された一人だ。
ヘンダーソンは、動画アップロード時のクオリティは「Twitterよりもはるかに素晴らしい」と付け加える。
「うまく立ち回れば、このアプリはTwitterを追い詰める存在となるかもしれない」と話すのは、61万8000人のフォロワーを持つInstagramのクリエイターで、Threadsをいち早く利用しているロニー・マーツ(Lonnie Marts)だ。
ただしThreadsは「Twitterキラー」と呼ばれてはいるものの、現在イーロン・マスク(Elon Musk)がオーナーとなっている件(くだん)のプラットフォームをクリエイターらが完全に切り捨てることはないだろう。
「私はこれからもTwitter上で活動するつもり」と語るのは、TikTokで24万6000人、Twitterで4万5000人のフォロワーを持つロベルト・ニックソン(Roberto Nickson)だ。彼は、7月3日にThreadsのベータ版へのアクセス権を入手した。
「UIは非常に馴染みがあるもので、決して一から新しく作られたものではありません。Twitterを使ったことがある人なら、すぐに使い方が分かるでしょう。ほぼそっくりそのままですからね」(ニックソン)
Threadsへの投稿は、500文字が上限となる。テキストに加えて、動画(最長5分)や写真、さらにはリンクも含めることができる。
東部時間の7月5日には、デスクトップPCからも一時的にThreadsにアクセス可能になった。
Screengrab/Threads; Insider/Sydney Bradley
7月に入ると、メタの社員たちは、早期アクセスでアプリを使ってくれるインフルエンサーや有名人を集めるのに奔走していた。
Insiderは、メタがクリエイターらに送った専用スタートガイドの内容を入手した。そこには、アプリのベータ版をダウンロードする手順や、投稿時のベストプラクティスなどが記載されていた。
ガイドは4ページからなり、リリース時期のメッセージ送信についてや、新アプリからInstagramのストーリーズやフィードに投稿をシェアできることなども書かれていた。
Insiderが確認した、同アプリのホームページ画面のスクリーンショットによると、YouTube(ユーチューブ)チャンネル登録者数480万人のコナー・フランタ(Connor Franta)のほか、オンライン上ではゲイリー・ヴィー(Gary Vee)としても親しまれるヴェイナーメディア(VaynerMedia)の共同創業者兼CEOのゲイリー・ヴェイナチャック(Gary Vaynerchuk)などのインフルエンサーが、Threadsのプレリリース版に投稿している。
アヴォリ・ヘンダーソン(@avoristrib)のプロフィール画面によると、彼女のThreadsユーザー番号は308。
Screengrab/Avori Henderson
新アプリはまだ「骨組みだけ」
Threadsはソーシャルメディアの中でまばゆい光を放つ新アプリだが、まだ欠けている部分もある、と一部のクリエイターらはInsiderに語る。
「完成されたものとは言えませんね。スペースもリストもないし、トレンドトピックもない。まだ骨組みだけの段階です」(ニックソン)
さらにヘンダーソンはハッシュタグがない点について指摘し、ゴッドウィンはアプリ内に発見タブがほしいと注文をつける。
Instagramの責任者であるアダム・モッセーリ(Adam Mosseri)は、早期ユーザーから寄せられたアプリのハッシュタグに関する質問に対して「現時点ではまだですが、検討はしています」とThreads上で回答している。
2人のクリエイターはこのアプリに投稿する行為を何と呼べばよいのか戸惑い、誤って「ツイート」というフレーズを使ってしまった。アプリ上ではすでに、投稿を何と呼ぶべきかという議論で盛り上がっている。
モッセーリもこの議論に加わり、「『Posted(投稿済み)』、あるいは『Threaded(スレッド済み)』あたりの線がありそうだが、どうもしっくりこない」と投稿している。
そして、多くのクリエイターの頭に確実に浮かんでいるであろう疑問が、潜在的な収益機会がどれぐらいあるかという点だろう。
「クリエイターたちがただ語るだけの場所ではなく、実際に収益を上げているところを見たい」とヘンダーソンは語る。
とりわけThreadsに欠けているのは、同アプリをめぐる憶測で最初の頃に言われていた、分散型プロトコルだ。Twitterの数々の失態を受け、Mastodon(マストドン)やBluesky(ブルースカイ)といった分散型のテキストベースアプリが、打倒Twitterを狙う競争で地位を築いている。
「当社では、Mastodonの基盤となるプロトコル『ActivityPub』を本アプリでサポートできるよう、全力で準備を進めています」とモッセーリはThreads投稿で説明し、「分散型ネットワーク特有の複雑な問題が重なったことで、リリースに間に合わせることができませんでしたが、準備は整いつつあります」としている。
ニックソンはメタの分散化戦略について次のように指摘する。
「これは宣伝目的以外の何物でもないと思う。でも同時に、彼らが実際にこうした試みをサポートしているという点が非常に重要なんです」
なお、Insiderはメタにコメントを求めたが回答は得られなかった。