会社員ならぜひ教育訓練給付制度を利用したい。
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- 社会人の学び直しが注目されるなか、ぜひ知っておきたいのが「教育訓練給付制度」だ。
- この制度は、国が社会人の学びをサポートしてくれる制度。雇用保険の加入者で一定条件を満たす人なら、受講費用の一部が還元される。
- 英会話や簿記などからプログラミング、歯科衛生士などまで、約1万4000講座が給付対象となっている。
「リスキング」が注目されています。皆さんの周囲でも、一度社会人になって、再び学び直しているという声を聞くことも増えているのではないでしょうか。
寿命が延びた今の時代は、複数のスキルを身につけながらさまざまなジャンルの仕事をすることが可能です。もっとシンプルに「何か新しいことを学んでみたいな」と思っている人もいるかもしれません。
ただ、学び直しには何かとお金がかかります。でも、会社員が改めて学ぶ際、補助を受けられる制度があることをご存じでしたか。
それを「教育訓練給付制度」と言います。私がファイナンシャルプランナーとして、ご相談者さんにこの制度についてお教えすると、「こんなにお得な制度があったなんて!」と驚かれることが多々あります。
実際に私も、かつて会社員だった時にこの制度を何度か利用しました。その体験談も交えつつ、会社員ならぜひ教育訓練給付制度を利用したい5つの理由をお伝えしたいと思います。
1.「会社員だからこそ利用できる制度」だから
教育訓練給付制度は、国が社会人の学びをサポートしてくれる制度。雇用保険の加入期間など、一定条件を満たしたうえで指定された講座を受講し、ハローワークに申請すると、費用の一部が返還されるというものです。
雇用保険の加入条件(1年以上、または2年以上など)を満たしていれば、正規雇用の人はもちろんのこと、派遣社員やアルバイト・パートなど非正規雇用の人も利用できます。なお、私は現在、フリーランスで雇用保険に加入していないため、残念ながらこの制度は使えません。
給与明細に「雇用保険」の欄があるかと思いますが、その箇所でお金を引かれている方なら、使える可能性大。まずは給与明細をチェックしてみましょう。
2.ラインナップを見るだけでも、やる気が出るから
先ほど「指定された講座を受講すると、費用の一部がもらえる」とお伝えしましたが、講座の専門性などにより、3つのタイプに分かれています。それぞれ、受講費の20%、または40%、または50%が戻ってきます(上限額あり)。
例えば、受講費の20%が戻ってくる「一般教育訓練給付」には、英会話や簿記、保育士、インテリアコーディネーター、WEBデザインなどがあります。
40%戻ってくる「特定一般教育訓練給付」には、税理士、社会保険労務士、行政書士、プログラミングなどがあります。
50%戻ってくる「専門実践教育訓練給付」は、専門学校の看護学科や歯科衛生士学科、キャリアコンサルタント養成講座などがあります。
厚生労働省のホームページにある一覧のほか、「教育訓練講座検索システム」で確認できます。
そのラインナップを見ていると、興味のある分野が見つかったり、「この講座にお金が出るなら、やってみようかな」と思ったりするかもしれません。対象講座は約1万4000講座にのぼります。
私自身も会社員時代(当時は条件や給付額などが少々異なりましたが)、いろいろなラインナップを見てやる気を高めていました。興味を持ったコピーライター講座などに何カ所か通いました。
「もし自分がこの講座を受講したらどうなるだろう……」と想像を膨らませてみることで、忙しい日々のことも一瞬忘れられるでしょう。新たな道への第一歩は、そんな妄想から始まるかもしれません。
3.とにかく「お得」に受講できるから
実は、これが一番大きなメリットといえます。先ほどの3つのタイプ別に、どれくらいのお金が戻ってくるかの例を見てみましょう。
一般教育訓練給付(英会話、簿記、Webデザイン等/20%[最大10万円]):受講費が30万円なら、6万円が給付される。
特定一般教育訓練給付(税理士、社会保険労務士、プログラミング等/40%[最大20万円]):受講費が50万円なら、20万円が給付される。
専門実践教育訓練給付(専門学校の看護学科、キャリアコンサルタント養成講座等/50%[最大で年間40万円、最長で4年。一定の条件の元で70%・最大で年間56万円]):4年間受講して資格取得をして、一定の条件の元で就職すると、受講費が320万円なら、224万円が給付される。
4.「収入アップ」の可能性があるから
この制度を利用して新たなスキルを身につけることができれば、今後の収入アップにつながる可能性が上がります。
最近、賃金を上げる会社が増えてきていますが、業種や会社の規模によってはまだまだ現状維持というケースも多いでしょう。
そんななか、スキルを磨いて他の業種や違う会社などに転職すれば、収入が上がるかもしれません。転職しなくても、スキルアップにより仕事の評価が上がり収入に反映される可能性もあるでしょう。
「物価はどんどん上がるけど、収入が上がらないな……」と感じている人こそこの制度を使ってスキルアップを図ってみてはいかがでしょうか。
5.社会保険料を取り戻した気分にもなれるから
社会保険料は大きな負担ですよね。じわじわと上がっているため、大昔に比べると同じ収入でも、今の「手取り額」は減ってしまっています。
そこでこの制度の出番です。お得に学ぶことができれば、納めた社会保険料を取り戻した気分にもなれるのではないでしょうか。
以前、筆者が利用していたころは、受講が終わる前に給付される仕組みだったのですが(早めに受け取れるのでありがたかったです)、今は受講してからでないと給付がありません。
そのため、「勉強を始めても、なかなか続かない……」という人も、「頑張れば、お金が戻ってくる!」と思いながら続けやすいと思います。
まとめ
ここまで読んでいただいて、教育訓練給付制度に興味が出てきた方も多いのではないでしょうか。
雇用保険の加入条件(1年以上、または2年以上など)を満たせば正規雇用・非正規雇用を問わず利用できます。
すでに会社を退職している場合でも、条件を満たしていれば離職日の翌日以降、1年以内に受講開始ならOKです。また、転職した人も、前の職場退職日からの空白期間が1年以内なら、雇用保険の加入期間の通算ができます。
興味を持った方は、ぜひ「教育訓練制度」を調べてみて、活用できそうなところからチャレンジしてみてください。