CO2削減量を示す「デカボスコア」が表示されたECサイトがYahoo!ショッピングに登場した。
撮影:湯田陽子
環境配慮型商品を購入できる「Earth hacksモール」が、ヤフーのECサイト「Yahoo!ショッピング」にオープンした。
環境配慮型の商品を扱うECサイトは、楽天の「EARTH MALL with Rakuten」など数あるが、Earth hacks(アースハックス)モールの特徴は、各商品に従来の製品と比べたCO2排出削減率を「デカボスコア」として表示していることだ。
デカボスコアは、2021年11月、生活者一人ひとりのアクションから脱炭素社会を進めることを目指し、博報堂と三井物産が立ち上げた「Earth hacks」が開発。
デカボとは、脱炭素を意味する「デカーボナイゼーション(Decarbonization)」の略だ。すでに、トヨタ自動車や日本航空、UCCグループをはじめ約70社の120商品に導入されている。
Earth hacksモールの特徴は、各商品にCO2削減率「デカボスコア」が明記されている点だ。
撮影:湯田陽子
年間30億円以上の売り上げ目指す
これまではEarth hacksのサイトを核に展開してきたが、活動をさらに強化・加速するため、2023年5月に博報堂と三井物産が50%ずつ出資して会社を設立。
2030年までに、1000社以上・1万商品以上のデカボスコア化、スコアの算出・更新料や削減コンサルティング、ロゴ使用料などで30億円以上の年間売り上げを目指す。
新会社の設立会見では、Yahoo!ショッピングを運営するヤフーのほか、味の素と大日本印刷、新たにEarthhacksと取り組みを開始した企業、すでにデカボスコアを導入しているトヨタ自動車や日本航空、UCCホールディングスも登壇し、自社の取り組みを紹介。Earthhacksのチーフ・デカボ・オフィサー(CDO)にはトラウデン直美氏(右から4人目)が就任した。
提供:Earthhacks
CEOの関根澄人氏は7月10日の会社設立会見で、デカボスコアについて、
「今日僕が着ている服は紙の糸から作られているが、このCO2排出量が3.0キログラムだと言っても、『3.0!すごく少ないですね!』(という反応)にはほぼならない。
3.0キログラムが少ないか多いかが分からないところがあるため、従来の製法や素材に比べてどの程度CO2削減に貢献しているかをパーセンテージで示す、それがデカボスコア」
と語った。
製品ごとのCO2排出量の可視化についてはさまざまなツールがあるが、Earth hacksではスウェーデンのスタートアップ・Doconomy(ドコノミー)や日本のサステナブル経営推進機構(SuMPO)など、ISOに準拠したツールを活用している。
この点について、関根CEOはBusiness Insider Japanの取材に対し、デカボスコア立ち上げ当初はDoconomyのツール(2030 Calculator)を活用していたが、「ものによってはベストなカリキュレータ(計算ツール)が違っていることが分かってきた」という。
取材に応じたEarth hacksの関根澄人CEO。「日本一のCO2可視化企業の三井物産と、日本人に刺さる伝え方に長けた博報堂が組んでいることは大きな強み」と語った。
撮影:湯田陽子
「Doconomyがベストなものもあれば、SuMPOのツールのほうが適しているものもある。お客さま(導入企業)の商品や課題を理解した上で、適したツールで算出できるようにサポートする。ただし、ツールは必ずISOの規格に準拠したものを使うという方針で実施している」(関根氏)
デカボスコアは1度算定したら終わりではなく、1年ごとに算出・更新していく。
Yahoo!ショッピングへの出店については、Earth hacks独自サイトの限界を感じていたことも理由だった。
「環境意識の高い人たちがわざわざ来るというサイトより、普段から多くの人が訪れるサイトに出店したほうが結果的に多くの人を集められる。そうした中で、ヤフーさんからは半年ほど前から我々の活動に共感をいただくようになり、僕らが行っていたEC機能やメディア機能をそちら(Yahoo!ショッピング)に移管しようということになった」(関根氏)
環境配慮型のECサイトは数あるが、その中でEarth hacksの強みについては、博報堂と三井物産のタッグにあるという。
「三井物産は、CO2可視化にこれほど力を入れている企業は日本にないのではというくらい強い。(子会社の)e-dashを持ち、製品単位でCO2排出量を算定するプラットフォーム『LCA Plus』を提供し、海外企業とのネットワークもある。
また、博報堂はSDGsのアイコンの日本語コピーや環境省の地球温暖化防止運動『チームマイナス6%』を手掛けるなど、日本人に伝える力に長けている。可視化と社会テーマを伝える点で日本一とも言える企業が共同で取り組んでいる意味で、どこにも真似できない大きな強みを持っているのではないかと思っている」(関根氏)