ウォーレン・バフェット
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- 投資家のハワード・マークスが市場にまつわる判断をしたのは、50年のキャリアでたったの5回だけだったという。
- ウォーレン・バフェットは、成功の大部分は過去60年間のおよそ12の決断によるものだとしている。
- この2人のエリート投資家のコメントは、ほんの少しの優れた洞察や賭けがいかに大きな利益をもたらすかを強調している。
投資においては、少ない方がむしろ豊かな場合がある。オークツリー・キャピタル・マネジメント(Oaktree Capital Management)の共同会長で億万長者のハワード・マークス(Howard Marks)は、マネー・マネージャーとしての50年間で、市場にまつわる判断をしたのはたったの5回だけだったと、2023年7月10日に公開したメモで述べている。同様に、バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)のウォーレン・バフェット(Warren Buffett)CEOは、成功の大部分を、過去60年間のおよそ12の決断によるものだとしている。
マークスはメモの中で、5つの判断について詳しく述べている。彼は「ドットコムバブル」と「住宅価格の暴落」を予測、2008年末に資産価格が急落した際には約3カ月で「75億ドルの資金投入」を実施、2012年には「株価が低迷から回復する」と予測、2020年初頭のパンデミックによる市場の低迷後は「買いを推奨」した。
このベテラン投資家の判断は5回とも正しかったが、彼は未来を予測することに深い警戒心を抱いていることを強調している。
「『50年間で5回』という数字が、我々がマーケット・タイマーであることに対する関心のレベルを物語っている。実際、我々はためらいながら行っている」
マークスはまた、市場が調子の悪い時だけ声明を出すと強調した。
「1つの鍵は、マクロ的な判断を頻繁にしないことだ」と彼は言う。
「ここぞという時を選ばなくてはならない。ウォーレン・バフェットが言うように『打ち頃の球』を待つのだ」
実際、バフェットはそのキャリアを通じて並外れた忍耐と規律を示してきた。例えば、彼はバークシャーが保有する現金の山を、2021年に過去最高の1490億ドルにまで膨れ上がらせた。というのも、納得のいく銘柄が見つけられなかったからだ。2022年にようやく掘り出し物を見つけ、その結果、バークシャーは過去最高の700億ドルを株式に費やし、120億ドルの買収を行った。
バフェットは、バークシャーの成功のほとんどがいかに一握りの動きによるものであるかを強調し、2023年の株主向け年次書簡にこう記している。
「バークシャーの経営に携わって58年、私の資本配分の決断のほとんどは、まあまあといったところだ。満足いく結果になったのは、12の本当に良い決断のおかげだ。つまり、5年に1回の決断ということになる」
バフェットはその例として、コカ・コーラ(Coca-Cola)とアメリカン・エキスプレス(American Express)を挙げた。
バークシャーは1994年に13億ドルを投じてコカ・コーラの4億株を取得した。現在、その価値は240億ドル相当になっており、年間7億ドル以上の配当金を得ている。
また、アメリカン・エキスプレスに対しては、1990年代半ばに13億ドルを投資した。現在ではその価値が260億ドル相当になっており、年間3億ドルの配当金を得ている。
バフェットは「投資家への教訓」としてこう記している。
「花が咲くと、雑草はその存在意義を失って枯れていく。時が経てば、数少ない勝者が奇跡を起こすのだ」
マークスとバフェットは、長いキャリアの間に並外れた決断と賭けを行ってきたが、それはほんのわずかなものに過ぎない。投資には慎重さが必要であり、適切な洞察や購入が桁外れのリターンをもたらすことは明らかだ。