2023年7月11日、リトアニアで開催されるNATO首脳会議を前に会談に臨むトルコのエルドアン大統領(左)とスウェーデンのクリステルソン首相。
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- トルコのエルドアン大統領は7月11日、スウェーデンのNATO加盟に同意した。
- その数時間後、アメリカはトルコへのF-16戦闘機の譲渡を進めると発表した。
- スウェーデンは、ロシアのウクライナ戦争をきっかけにNATO加盟を求めていた。
トルコは、NATO加盟国からの一連の譲歩を受け、スウェーデンのNATO加盟を支持することについに同意した。
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン(Recep Tayyp Erdogan)大統領は、厳しい交渉を行い、アメリカからF-16戦闘機を手に入れたようだ。
「スウェーデンのNATO加盟は、この重要な時期に、すべてのNATO同盟国の安全に利益をもたらす歴史的な一歩だ。これにより我々全員がより強く、より安全になる」とNATO事務総長のイェンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)はリトアニアのビリニュスで開催されたNATO首脳会議の前夜に語った。
ロシアのウクライナ侵攻を受け、31カ国の加盟国の結束のイメージを打ち出そうとしているNATOにとって、この発表が大きな後押しになることは間違いない。
また、3カ国が長い間、ロシアの侵略を恐れてきたバルト海沿岸地域での存在感も大いに高まることになる。
トルコは1年以上にわたり、クルド人武装勢力を匿っているという疑惑を理由に、スウェーデンのNATO加盟を阻止してきた。
トルコがスウェーデンのNATO加盟への反対を取り下げた数時間後、この決定と関係があると見られている動きとして、アメリカのジェイク・サリバン(Jake Sullivan)大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はアメリカ軍のF16戦闘機のトルコへの譲渡が進められることになると述べた。
「エルドアンは、ビリニュスでの会議が西側諸国から最大限の譲歩を引き出せる瞬間であることを知っていた」と、ブルッキングス研究所のフェローで外交政策アナリストのアスリ・アイディンタスバス(Asli Aydintasbas)はワシントン・ポストに書いている。
さらに同氏は、トルコは長年にわたり空軍の近代化を目指してきたとし、「エルドアン大統領の最も重要な要望はずっと前から明らかだった。アメリカにF-16を売ってもらう必要があるのだ」と付け加えた。
NATOの規則では、新しい国を同盟に受け入れるには全加盟国の同意が必要であり、スウェーデンの加盟を引き延ばしたエルドアンはかなりの影響力を持っていた。
ロシアとの関係やエルドアン大統領の抑圧的な国内政策に対する西側の警戒心を覆し、エルドアン大統領が譲歩を引き出したのはこれが最初ではない。
トルコはスウェーデンに対し、トルコがテロリストと見なしたクルド人グループに対して行動を起こすよう圧力をかけた。 イスラム教徒の少数派であるクルド人グループは、トルコと長い間波乱に満ちた関係にあり、スウェーデンは圧力に屈し、テロ対策法を抜本的に見直した。BBCが報じたところによると、スウェーデンはクルド人グループの何人かをトルコに送還するという。
エルドアン大統領はまた、NATOの行き詰まりを利用して、トルコのEU加盟を再推進しようとしている。トルコは数十年にわたって欧州経済圏への加盟を求めてきたが、エルドアン大統領政権下のトルコの権威主義的傾向への懸念から、交渉は行き詰まっている。
エルドアン大統領はロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領との関係を維持し、ロシアへの制裁を拒否することで、ウクライナ戦争の最中にバランスをとろうとしている。そしてさらに、NATO内での影響力を高め、西側同盟国からの譲歩を勝ち取ろうとしている。
「もちろん、脱出用のハッチはある」と大西洋評議会(Atlantic Council)の上級研究員のリッチ・オウツェン(Rich Outzen)は述べている。
「エルドアン大統領はトルコ議会にボールを渡し、直接的には何も承認しなかった。しかし、現在、NATO、スウェーデン、トルコを一度に助ける良い取引に向けた準備が整った 」