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新たなデータによると、Apple TV+は加入者数を急速に増やしているが、動画広告事業を拡大するには不利である可能性がある。
この調査結果は、競合するストリーミング大手と同様、Apple TV+も動画広告を始める計画があるのではとの憶測が飛び交うなかで公開された。
ジ・インフォメーション(The Information)の報道によると、アップル(Apple)は2023年、広告事業を立ち上げるためにローレン・フライ(Lauren Fry)を広告担当エグゼクティブとして雇い入れた。このことが、同社が広告事業を始めるのではとの憶測を呼んだ。
サブスクリプション調査会社のアンテナ(Antenna)が6月28日に公開した新たなデータによると、Apple TV+は過去2年間で広告なしストリーミングサービス加入者のシェアを3倍以上に増やし、Paramount+、ディズニー(Disney)のHulu、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(Warner Bros. Discovery)のMaxを追い抜いた。
Antenna
Apple TV+は広告なしストリーミングのシェアで2021年に3%だったが、2023年5月時点で11%へと増加し、Netflix(32%)、Disney+(13%)に続く第3位となっている。
しかし、Apple TV+はまだ広告付きストリーミングを開始していない。一方の競合他社は、広告付きストリーミングにおいて最大の加入者増加(と、いうまでもなく新たな収益機会)を実現している。
また、すでに広告付きプランを導入済みのストリーミング事業者は先行者利益を得ている可能性があることを、アンテナのデータは示唆している。
2008年から広告プランを導入しているHuluや、2020年に広告付きプランを開始したPeacockなど、広告付きプラン導入開始からの経過期間が長いサービスほど、同プランを選択している加入者が多い(それぞれ57%と74%)。
Antenna
一方、広告付きプランの導入を2022年末に導入したばかりのNetflixやDisney+では、同プランの加入者はそれぞれ2%と5%しかいない。
アンテナのデータからはこのほかに、ストリーミング事業者にとって広告付きプランは大きな事業成長機会であることが分かる。あるストリーミングサービスに広告付きプランの選択肢があれば利用すると回答したアメリカ人は、「時々利用する」「常に利用する」を合わせると58%にのぼった。
広告付きプランと広告なしプランを組み合わせて利用する人の割合は、少ないながらも急速に増加している。
そして、広告付きプランに加入する人の割合は、世帯収入、年齢、性別、民族性に関係なくほぼ一貫している(ただしアンテナによると、Apple TV+のようなプレステージ的要素の大きいサービスを利用している人は広告に対する許容度が低い傾向がある)。高所得世帯は広告なしプランを選択するのではと懸念していた広告業界関係者の多くは、この結果に驚くかもしれない。
アンテナの共同創業者兼CEOのジョナサン・カーソン(Jonathan Carson)は、「広告業界にとって好ましいデータです。広告付きプランが普及するのは低所得者層のみだというのが当初の仮説でしたから」と話す。
広告付きプランに対する消費者の選好に影響を与える可能性がある他の要因としては、そのストリーミングサービスが1時間あたりに表示する広告の数や、広告がどれほど視聴体験の中に統合されているかなどがあると、アンテナは指摘している。