セブンイレブン「みらいデリ ナゲット(5個入り)」(税込259円)。
撮影:杉本健太郎
セブンイレブンは7月14日から店頭発売のナゲットを、プラントベースプロテインを配合した「みらいデリ ナゲット」に変更する。
プラントベースプロテインとは、大豆やえんどう豆を使用した代替肉のことだ。植物肉とも言われる。
これまで米マクドナルドをはじめ、世界中で代替肉を使用した商品が発売されてきたが、「ブーム」が一段落した印象は否めない。アメリカの有名な代替肉ベンチャー、ビヨンドミートの株価が2019年7月に234ドルだったところ、直近7月11日には15ドル前後にまで落ち込んでいるところにも、市況の変化が感じられる。
セブンイレブンが、代替肉ベンチャーのDAIZをはじめとするパートナー企業と代替肉領域に乗り出した背景には、「セブンの新ナゲットがこれまでの代替肉商品とは違うという確固たる自信があるからだ」と、DAIZ社長の井出剛氏は言う。
代替肉メーカー「こだわりを捨てた」第2世代へ
DAIZ代表取締役社長井出剛氏。
撮影:杉本健太郎
井出氏はこれまでの代替肉商品が失敗に終わってきたのは、「美味しくなかったから」というシンプルな理由だと説明する。そのうえで、「植物肉は世界の環境に貢献するから食べようと思う消費者は1~2割」「代替肉メーカーは消費者に『また食べたい』と思わせる味の努力をしてきたのか」と問いかけた。
そして、最も大きな問題点はこれまでの「第1世代」にあたる代替肉メーカーは「代替肉100%」へのこだわりを捨てきれなかったことだと指摘した。
DAIZは「第2世代」にあたるメーカーだが、海外のメーカーを視察しても第2世代の代替肉メーカーは、本物の肉と代替肉を混ぜる「ハーフ&ハーフ」「ハイブリッド」の方向に舵を切っている。本物の肉にしか出せない味の美味しさを認めたうえで環境負荷を減らす、という方向性だ。
「もっと自然に畜肉の良さを認めよう」と井出氏は語る。今回のナゲットはとにかく美味しさにこだわって鶏肉とプラントベースプロテインをミックスした。
「セブンのナゲットで世界の潮流を2~3年先取りした」
代替肉を使用した「ハーフ&ハーフ」「ハイブリッド」の商品がこれから世界中で登場すると井出氏は予想している。
今回のセブンイレブンとのナゲット開発で、「どれだけプラントベースプロテインを混ぜても違和感が出ない分子レベルでの調節を可能にした」(DAIZ CTO 研究開発部長 落合孝次氏)といい、さらにプラントベースプロテインを増やすことも可能だとした。
「セブンさんは世の中の流れを変える力がありますから。私たちもやっと日陰の身分から出て、世界の潮流を2~3年先取りしたと思います」(井出氏)
あえて環境アピールは一切しない
プラントベースプロテインに使用されている豆類が並べられている。
撮影:杉本健太郎
セブンイレブンで全国展開されることで、代替肉商品は遥かに身近になる。初めて手に取る消費者も増えるだろう。
だからといって、部活帰りの高校生や食事を買いに来たビジネスパーソンに「SDGsのために味は我慢してください」とは言いたくなかった。
「すーっと黙って代替肉を入れる。代替肉って言わないし、お店にも書かない。 でも、気付いたら食べているものの20パーセントがプラントベースプロテインだった。それでいいんです」(井出氏)
一方、株主には環境対応を進めていることをおおいにアピールできる。海外の機関投資家を多く抱えるセブンイレブンにとって有効な取り組みではないか、と井出氏は語る。