写真右から楽天ペイメント社長の小林重信氏と、執行役員マーケティング本部長の諸伏勇人氏。
撮影:小林優多郎
楽天グループ傘下で決済事業を担う楽天ペイメントは7月12日、スマホ決済「楽天ペイ」と「楽天ポイント」に関するキャンペーン施策を発表した。
今回の施策「おトクなペイは楽天ペイ スーパー還元」は、4つのキャンペーンの総称で、還元率、対象期間や対象者が異なる。
単に楽天ペイを利用するだけではなく、認知度の高い楽天ポイントと組み合わせたキャンペーンを実施することで、ソフトバンク系のスマホ決済「PayPay」に追従する狙いがある。
新規獲得やポイントカードと連動した4つの施策
楽天ペイに関する4つのキャンペーンを実施する。
撮影:小林優多郎
今回実施されるキャンペーンは発表時点で実施されていたものを含め以下の4つ。
1. 楽天ペイアプリ内の楽天ポイントカード利用でポイント増
楽天ポイントをためていれば誰でも参加できるのが「楽天ペイアプリ内の楽天ポイントカード限定!毎日だれでも楽天ポイント2倍」キャンペーンになる。
キャンペーン期間は7月3日10時から8月1日9時59分まで。キャンペーンにエントリーの上で、店頭で楽天ペイアプリ内の楽天ポイントカードのバーコードを提示すると通常の2倍のポイントがたまる。
ただし、7月13日0時から7月31日23時59分までの間は増量が2倍から3倍になる。
なお、特典分の楽天ポイントは12月31日まで使える期間限定ポイント。楽天ポイントは加盟店によって、付与率(200円で1ポイントや100円で1ポイント)や、付与対象額(税込か税抜か)が異なるので注意。特典ポイントの上限は合計500ポイントになる。
2. 新規/久しぶりの利用者は楽天カード・楽天キャッシュでの支払いで20%還元
主に新規利用者向けとなるのが楽天カードもしくは楽天キャッシュでのコード・QR払いで最大20%還元!」キャンペーンだ。
キャンペーン期間は6月30日10時から8月1日9時59分まで。エントリーの上、楽天カードか楽天キャッシュを支払い元にした楽天ペイのコード決済が対象となる。
還元上限は500ポイントで、11月30日23時59分まで使える期間限定ポイントとして付与される。
なお、2023年1月1日0時から6月26日23時59分の間に楽天ペイを利用していたユーザーもエントリーすれば抽選で1000名に20%分の期間限定ポイントが還元される。
また、利用の有無にかかわらずエントリーするだけで還元上限とは別に1ポイント付与される。
3.ポイントとペイの提示で利用のに抽選で還元
今回のキャンペーンに合わせて、楽天ペイとしては初めてPR動画も制作している。
撮影:小林優多郎
利用の度に抽選する「2人に1人当たる!楽天ペイ超トクトク祭」も開催される。
キャンペーン期間は7月13日10時から9月1日9時59分まで。楽天ポイントカードの提示と楽天ペイ(コード決済)の利用で、ハズレもしくは1等1500%還元(最大100名)、2等200ポイントが当たる。還元上限は10万ポイントだ。
1のキャンペーンとは異なり、提示する楽天ポイントカードは、楽天ペイアプリ内だけではなく、実カードや別のアプリなどで表示できるものも対象となる。
ただし、ファミリマートやJA-SS(ガソリンスタンド)など、キャンペーン対象外の店舗もあるので注意したい。
4.友だち紹介キャンペーン
友だち紹介キャンペーンも実施される。
7月13日10時から8月1日9時59分までの間、楽天IDでログインした状態で専用サイトから招待リンクを取得できる。このリンクを受け取った側が楽天ペイを使うと招待した人・招待された人それぞれに、2023年11月30日まで使える期間限定ポイントが700ポイント付与される。
招待されたユーザーは期間内に初めて楽天ペイに登録するユーザーに限られ、かつ招待後に3500円(税込、ポイント利用分を除く)分の決済をする必要がある。
招待する側に付与されるポイントの上限は7000ポイント(10ユーザー分)だ。
決済のライバル「PayPay」をポイントで追う
楽天ペイで使える機能。右上で黄色く「他社クレジットカードも利用可能」としているのは、2025年1月に他社カードの利用を制限する予定のPayPayを意識したものだろう。
出典:楽天ペイメント
還元率の大きさを見るとかなり大規模な還元キャンペーンに見えるが、実際は条件が厳しいものも多い。特に4つ中2つは新規加入者を重視している。
この背景にはもちろんスマホ決済で先をゆく「PayPay」の存在がある。
楽天ペイの認知度は3位に留まる。
出典:楽天ペイメント
楽天ポイントは2002年のサービス開始以来、約21年間・累計発行額3.4兆円分にものぼる日本最大規模の共通ポイントだ。
一方で楽天ペイは、国内3位の認知度にとどまっているという調査結果(MMD研究所)も出ており、いまいち存在感を発揮できていない。
12日の会見に登壇した小林重信社長。
撮影:小林優多郎
この状況を楽天ペイメント執行役員でマーケティング本部長を務める諸伏勇人氏は「まだまだ伸び代があるということ」と説明。
また、同社社長の小林重信氏も「(楽天ポイントの加盟店で)ポイントカードを持っているか声をかけられると思うが、そこで楽天ペイも、と結び付けられれば」とその戦略の方向性を語った。
今回の一連の施策による目標については、両者とも具体的な数値の発言を避けたが、諸伏氏は「(2022/2023年5月比でアプリのダウンロード数が)80%超成長しているが、これ以上を目指していきたい」、小林社長は「楽天ポイントカード、楽天カード、楽天IDを使っている人すべてに楽天ペイを使っていただきたい」と意気込みを述べた。
コードのW提示はユーザーの支持を受けられるか
少し気になるのは、ユーザーと加盟店の手間だ。「Wでおトク」というのは聞こえはいいが、例えばコード決済の場合ポイントとコード2種類のコードを提示する必要がある。
ユーザーに対し楽天ペイと楽天ポイントカードを同時に提示してもらうことを目的にした施策もあり、楽天ペイメントとしては「(決済とポイントで)Wでおトク」というイメージを広めていきたい考えだ。
普段から楽天ペイとポイントカード提示でダブルでポイントが貯まることをアピールする楽天。
出典:楽天ペイメント
楽天ペイアプリの場合、ワンタップで決済とポイントそれぞれのコードを切り替える仕組みが存在するが「一つで済むならその方がいい」というのがユーザー、コードを読み取る加盟店の本音ではないだろうか。
決済だけで「ポイントカードの提示が不要になる」ローソンの事例。
出典:ローソン
実際、コンビニの事例を見ると、ローソンではNTTドコモの「d払い」、KDDIの「au PAY」で支払うと、設定済みのdポイント、Pontaそれぞれのポイントカードを自動的に読み込む仕組みを2022年11月から提供している。
また、ファミリマートの場合も自社の「ファミペイ」アプリで自社決済と設定済みのdポイント・楽天ポイント・Tポイントいずれか、セブンイレブンの場合も自社アプリ内でPayPayと自社会員コードの同時読み取りを可能にしている。
諸伏勇人氏。
撮影:小林優多郎
ただ、いずれも開発力・資金力のある小売事業者と密に連携した実例であり、楽天ペイ単独で実現することは難しそうではある。
加えて、単に楽天ペイのコード決済だけでも、加盟店によって店頭でのコード提示型やサードパーティの端末やPOSレジで直接ユーザーのコードを読み取る方式などさまざまで、技術的に決済とポイントのコードを同時に読み取ることが難しい場合がある。
こうした手間が見られる状況について諸伏氏は「(ユーザーからの声を聞いて)ブラッシュアップしていきたい」としつつ、私見として「(2つのコードを出すことが)いいことをチャレンジして成功している、ポイントコンボをしている、お得につながっていると感じているお客様もいる」と述べた。