あなたの日焼け止めが「海のある生き物」を傷つけているかも……? 今年の夏は、海にも肌にもやさしいモノを選びたい

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撮影:美里茉奈

ハワイやパラオをはじめとした世界のビーチリゾートで、サンゴをはじめとした海の生き物たちにとって悪影響を及ぼす化学物質が入った日焼け止めが続々と禁止されている。

日差しの強いビーチでは、日焼け止めは必須。しかし、私たちの紫外線対策は海洋汚染の原因になっていたのだ……。

2017年に沖縄で誕生「サンゴに優しい日焼け止め」

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コーラルリリー「サンゴにやさしい日焼け止め」 SPF 50+ UVA★★★★ 40グラム 税込3273円(公式サイト価格)

撮影:美里茉奈

私たちの生活にとってすでに日焼け止めは欠かせない存在だ。日焼けだけでなく、皮膚がんをはじめとする肌への紫外線ダメージを防ぐ役割もある。

しかし、サンゴや海の生き物たちにとって有害なものを塗った状態で海に入るのは避けたい。

そこで注目したいのが、海に悪影響を及ぼす化学物質を含まない日焼け止め。自然素材のみを使用した日焼け止めは「リーフセーフ(Reef Safe)」と呼ばれ、サンゴ礁など海の環境にやさしい処方が特徴だ。

すでにハワイなどでは、リーフセーフの日焼け止め以外は流通禁止となっている。

実は日本にも、すでにこの取組みを行っているプロダクトがあった。「地元沖縄の観光と環境を守りたい」と2017年に誕生した「サンゴに優しい日焼け止め」だ。

実際に使ってみた

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プラスチックフリーのスチール缶に入った、バームタイプの日焼け止めだ。

撮影:美里茉奈

「サンゴに優しい日焼け止め」には、紫外線吸収剤や界面活性剤、防腐剤、人工香料など、サンゴをはじめとする海の生き物に有害な化学物質などは使われていない。

成分は「ゴマ種子油、酸化亜鉛(ノンナノ)、ヤシ油(ココナッツオイル)、ミツロウ、シア脂、ホホバ種子油、ラベンダー花油、セイヨウハッカ油、ユーカリ葉油、ニオイテンジクアオイ花油」。それでいて、SPF50/UVA★★★★と、高い日焼け止め効果がある。保湿力も高いので、化粧下地としても使える。

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指に取った時は白いが、馴染ませると色は気にならなくなる。白浮きが気になる人にはベージュもある。

撮影:美里茉奈

沖縄在住の私にとって、屋外の暑さでバームが溶けないかという不安もあった。

しかし、バーム状に固める成分であるミツロウの融点は62~65℃ほどのため、私が太陽が照り付けるビーチに持ち出した際は溶けることはなかった。

バームが溶けない分、伸びはそこまで良くはない。一度に取れる量が少ないので、こまめに指につけて塗る必要がある。顔に塗る時はさほど不便を感じなかったが、腕や足などに一気に塗りたい時は、チューブ式のように簡単に出して塗れないのは少し面倒に思った。

一度に多くの量を取って塗りたい場合は、スプーンやスパチュラを用意した方が良いだろう。

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手の甲に塗ってみたところ。ラベンダーやユーカリなど天然オイルの爽やかな香りだ。

撮影:美里茉奈

塗ったは感じはサラッとしており、伸ばすとすぐに馴染む。ベタつきはほぼない。時間が経っても、汗や顔の油分で崩れたような感じはなかった。

「サンゴに優しい日焼け止め」は、ウォータープルーフタイプなので海に入っても安心だ。石鹸(洗顔フォーム等)とぬるま湯で洗い流せて、クレンジング不要なのも嬉しい。

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毎日顔に塗って一週間たったところ。ほとんど量が減っていない。ただし、防腐剤フリーのため、メーカーからは開封後3カ月~半年以内の使用が推奨されている。

撮影:美里茉奈

「サンゴに優しい日焼け止め」のスチール缶の大きさは、直径約5センチ、高さ約2センチ。内容量は40グラム。

最初に見た時は、あまりのコンパクトさに「すぐ使い終わってしまうのでは?」「これで3000円超え?」と心配したが、伸びが良いので一回の使用量は少なくてすむ。

試しに毎日顔に塗ってみたが、一週間たってもほとんど減っていない。小さいから持ち運びも楽なので、結果的にコスパが良いと思う。

他人事ではない、白化し続けるサンゴの危機

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沖縄の言葉でサンゴ礁に囲まれた浅い海を「イノー」という。イノーではサンゴと海に住む生き物たちを観察できる。

撮影:美里茉奈

南の海に広がるサンゴ礁は、多様な生命を育み、環境を守る海の中の熱帯林だ。サンゴに共生する褐虫藻(かっちゅうそう)が光合成を行うことで、海水中の二酸化炭素濃度を調整している。

またサンゴ礁には、防波堤として波をさえぎる役割もある。もしサンゴ礁がなかったら、陸地がどんどん削られてしまう。津波や高波での被害もより大きなものになるだろう。

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サンゴの色は共生している褐虫藻のもの。サンゴは自分では動けないので、褐虫藻が光合成を行いサンゴに栄養を供給する。

撮影:美里茉奈

海の中で大事な役割を果たしているサンゴだが、繊細な生き物で環境の変化に弱い。いわゆる「白化現象」とは、環境ストレスによってサンゴが共生している褐虫藻を吐き出し、骨格だけになった状態を指す。

白くなったサンゴは環境を回復しないままだと、栄養を得られずに死んでしまう。すでに国内最大のサンゴ礁「石西礁湖」(せきせいしょうこ)の平均白化率は92.8%(2022年9月調査)に及ぶというデータもある。

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沖縄本島の浅瀬にいたウミガメ。ケミカルな日焼け止めは、海にすむ生物にも悪影響を及ぼすことも。

撮影:美里茉奈

海水温の上昇をはじめ、淡水や土砂の流入、人間の踏みつけによるダメージ……サンゴのストレスには多くの要因が考えられている。そしてここ最近、世界的に問題視されるようになったのが「日焼け止め」だ。

ビーチリゾートだけの問題ではない。洗い流した日焼け止めは、下水を通じて最終的に海に流れる。それを考えると、海に行く日以外でも、できる限りリーフセーフの日焼け止めを使おうと思った。


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