サイゼリヤ「日本は赤字、アジアで稼ぐ」厳しい実情…「粉チーズ無料を終了」の背景

サイゼリヤ

撮影:Business Insider Japan

7月10日に粉チーズ無料提供の終了をアナウンスした外食大手サイゼリヤ。その背景に「今、日本では稼げていない」という難しい状況がありそうなことが見えてきた。

サイゼリヤが7月12日に公表した2023年8月期第3四半期決算は、一見すると本業の儲けにあたる営業利益は順調に回復しているように見える内容だった。

その数字は、売上高1321億円(前年同期比23.1%増)、営業利益35億円(同236.3%増)、純利益26億円(同59.6%減)というものだ。

サイゼリヤ決算短信

出典:サイゼリヤ 2023年8月期第3四半期決算短信より

外食大手はいま、人件費の高騰、エネルギーコスト増、円安による物価上昇などから利益が圧迫され厳しい状況にある。

サイゼリヤも「慢性的な人手不足に加え資源価格の高騰と円安による食材価格やエネルギー価格の上昇の影響により、引き続き厳しい経営環境となっております」(決算短信より)と、経営環境の厳しさに言及する。

決算から2日前に公表された「粉チーズ無料提供の終了」も、こうしたなかでのコストダウン策と見るのが一般的な見立てだろう。

しかし、決算短信のセグメント別利益を見ていくと、サイゼリヤを取り巻く「ビジネスの復調」に、ややいびつに思える状況があることがわかる。

日本でサイゼが「稼げてない」

サイゼリヤ

yu_photo / Shutterstock

サイゼリヤの決算短信の報告セグメントには、日本、豪州、アジアの3つの領域がある。

このうち、最も稼いでいるのは当然日本市場(売上高874億円、同18.6%増)、続いて中国市場などを抱えるアジア(売上高446億円、同32.8%増)、食材生産などを担う豪州(売上高54億円、同40.8%増)と続く。

一方、どの地域が儲かっているのか、つまり営業利益で見ると様相は一変する。

サイゼリヤのセグメント別収益

売上高は日本市場で大きく稼ぐ一方、利益は出ておらず、利益の源泉はアジア市場になっていることがわかる。

決算資料をもとにBusiness Insider Japan編集部作成

セグメント営業利益順に見ると、

  1. アジア 営業利益 +49億円(同62.4%増)
  2. 豪州 営業利益 +1億円(同600%増)
  3. 日本 営業損失 -15億円(前年同期は21億円の損失)

と、実は売上高が最も大きい日本では利益が出せないどころか赤字 —— 少なくとも決算短信で開示された収支上はこういう状況にある。

売上高にして日本のおよそ半分のアジアで利益を出し、日本は赤字でも売上高を稼ぐ。こうした特殊な状況にあるからこそ、質を下げないためのコストダウン策として「粉チーズ無料」も終了せざるを得なかった、ということなのではないか。

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