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今回は、こちらの応募フォームからお寄せいただいた読者の方からのご相談にお答えします。
30代後半の方が「キャリアの踊り場に入った」と、焦りを感じていらっしゃるようです。
Aさん
今年で35歳になった者です。ここ2、3年で顕著に感じることなのですが、自分のキャリアが頭打ちになったような感覚に苛まれています。面倒を見ている後輩が何人かいますが、後輩たちのほうが荒削りながらよほど勢いがあり、気圧され気味です。
踊り場感がハンパない現状をどうにかしたいのですが、何をすればいいのか分かりません。ぜひアドバイスをお願いします。
(Aさん/30代後半/男性/企画部門)
Aさんの感覚は、「ごく当たり前のもの」といえますね。人は同じ仕事を長く続けていればマンネリ感を抱き、飽きてくるものです。年齢にかかわらず、そういうものなんです。
特に30代となると、仕事に慣れて自信がついてくる一方、結婚や出産、住宅購入などのライフイベントを迎え、「守るもの」ができる人も多くいらっしゃいます。
転職を考えるにしても、独身時代と比べると制約が増え、「自由がなくなった」と感じがち。それが閉塞感、踊り場感を強める要因の一つといえるかもしれません。
また、30代はマネジメントに移るタイミングでもあるのですが、現場の第一線で動く「プレイヤー」志向が強い方なども立ち止まって悩むケースがよく見られます。
マネジャーに就任したものの、面白みややりがいを感じられない。このままマネジメントの道を歩むか、それとも現場に戻ってスペシャリストの道を極めていくか——悩んで停滞してしまう人も少なくありません。
もちろん、スペシャリストの道を歩みながらも、新たなチャレンジをする機会がなく、「自身の成長が止まってしまった」という声もよくお聞きします。
踊り場を脱するために「何かを変える」行動を
「踊り場感がハンパない現状をどうにかしたい」というAさんに送るメッセージとしては、「何かを変える行動を起こしてください」ということです。今の仕事の延長線上には、特効薬はないと思います。
おそらくAさん自身も「何かを変えなくては」と自覚しているでしょうから、具体的な方法をいくつかご提案します。
今の会社で、立ち位置や業務内容を変えてみる
「転職」をすれば容易に「変化」を得られますが、やはり転職にはリスクがつきものです。ですから、まずは今の会社で変化を起こしてみてはいかがでしょうか。
一例を挙げてみましょう。
- 企画職として、対象とする商材やマーケットを変えてみる
- 新規プロジェクトを起案し、リーダーを買って出る
- 社内横断プロジェクト(働き方改革・サステナビリティ推進など)に参加する
- 別の部署に異動する/子会社に出向する
自社内ですでにポジションを確立しているとしても、少し場所や役割が変われば、新たな刺激を得られるでしょう。
副業を持つ
社内で新たな取り組みをするのが難しければ、社外に出てしまいましょう。近年、「副業」が一般化し、副業者を受け入れる企業が増えています。
副業希望者と企業の求人のマッチングサービスも目的・分野別にさまざまなものが出てきていますし、SNSを通じた募集などもありますので、ワクワク感を持てる案件を探してみてはいかがでしょうか。
「後輩たちのほうが荒削りながらよほど勢いがある」とおっしゃいますが、Aさんも未知の業種に身を投じて新鮮な刺激を受けながら働けば、自然とそうなるのではないでしょうか。
自身のスキルを活かしながら、新しい経験もでき、成長感を得られると思います。
転職活動をしてみる
転職活動をしてみてはいかがでしょうか。
誤解しないでいただきたいのは「転職」ではなく「転職活動」をお勧めしているのです。
転職する・しないにかかわらず、転職活動をしてみると、視野が広がり、さまざまな気づきを得られるでしょう。
自身が培ってきたものが社外でどのように評価されるかが分かるほか、自身のスキルが思いがけない業界や職種で転用できることを知るケースもあります。「こんな社会課題に向き合って、挑戦している人たちがいるのか」と、刺激を受けることも。
転職活動をしてみた結果、自社の良さを再発見し、転職をやめる人も少なくありません。その場合、同じ職場・仕事に戻っても、以前よりポジティブな気持ちで働くことができます。
30代で2回転職。大きく環境を変えた事例
Aさんの同年代で、キャリアの踊り場から脱した方の事例をご紹介しましょう。
商社に勤務していたBさんは、30代前半でキャリアへの停滞感を抱きました。
大学時代の友人が起業したり、CxOとしてスタートアップに転職したりしていて、彼らと会話していると「大変そうだけど、すごく成長しているな」と感じていたそうです。
プレイヤーとして十分な経験を積んだBさんはマネジメントへステップアップしたいと考えたのですが、上が詰まっている状況。裁量権を持てるポジションに就くにはあと10年かかると判断しました。
そこで「早く経営ボードメンバーになれる会社」を目指して転職活動を開始。ヘルスケア関連のベンチャー企業に企画職として入社したのです。
なお、このBさんには後日談があります。30代後半になり、これまで縁がなかった地方へ移住・転職されたのです。
コロナ禍でワーケーションをしたり、家族でキャンプをしたりして過ごす中で、「自然豊かな環境で子どもを育てたい」という思いが強くなったのだとか。
そこで、地方企業の求人を探して転職活動を行った結果、異業種の地方企業の新規事業責任者として転職を果たされました。
Bさんの事例が象徴するように、やはり行動を起こさなければ何も得られません。
いきなり転職活動をしなくても、先に挙げたような方法から、今の自分にできる範囲で行動してみてはいかがでしょうか。
その中で、偶発的な出会いがあり、未来につながるご縁を結べるかもしれません。
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森本千賀子:獨協大学外国語学部卒業後、リクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。転職エージェントとして幅広い企業に対し人材戦略コンサルティング、採用支援サポートを手がけ実績多数。リクルート在籍時に、個人事業主としてまた2017年3月には株式会社morichを設立し複業を実践。現在も、NPOの理事や社外取締役、顧問など10数枚の名刺を持ちながらパラレルキャリアを体現。2012年NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」に出演。『成功する転職』『無敵の転職』など著書多数。2男の母の顔も持つ。