価値創造が期待される国内企業、150銘柄の株価の動きを表す。
Poetra.RH/Shutterstock
- 新しい株価指数「JPXプライム150」が、2023年7月3日より算出開始された。
- この新しい指数では、特に「エクイティ・スプレッド」と「PBR(株価純資産倍率)」が重視されている。
- つまり、今回の新指数は、特に銘柄の「収益性」を重視したものと考えて良い。
2023年7月3日、日本市場の株価指数に、新しい仲間が加わりました。
「JPXプライム150(正式名称:JPXプライム150指数)」。この新しい指数は、なぜいま作られたのか? また、既存の株価指数、TOPIXやNIKKEI225と、どのように違うのか?
本記事ではそうした素朴な疑問について、Q&A形式でお答えしていきます。
Q. JPXプライム150とは、ひとことで説明すると何ですか?
JPXプライム150とは、JPX(日本取引所グループ)が開発し、2023年7月3日より算出開始された新しい株価指数(市場の動きを表す数値)です。
そのコンセプトは「価値創造が推定される我が国を代表する企業で構成される指数」で、その名の通りプライム市場より選ばれた150の銘柄によって構成されています。
Q. JPXプライム150は、TOPIXやNIKKEI225とどう違うのですか?
日本市場を代表する株価指数としては、TOPIX(東証株価指数)とNIKKEI225(日経平均株価)がすでによく知られていますね。
TOPIXは原則として東証プライム市場に上場する全銘柄(約1800種)から構成され、時価総額をもとに算出される指数。通称「日経225」または「日経平均」とも呼ばれているNIKKEI225は、プライム市場に上場する流動性に優れた225銘柄から構成されています。
一方、今回のJPXプライム150は、プライム市場の中から収益性や人気の高い150銘柄で構成される指数。2023年5月26日を基準日として、150ある構成銘柄の時価総額をもとに算出されます。
NIKKEI225とJPXプライム150は、いずれも著名な大型銘柄で構成されていますが、今回の新指数は特に銘柄の収益性を重視した指数と考えて良いでしょう。
Q. JPXプライム150の銘柄は、どのように選定されているのでしょうか?
JPXプライム150の構成銘柄の選定では、まずプライム市場において時価総額の高い500社がピックアップされます。そこから2つの基準によって、150銘柄に絞られます。
第1の基準では、500銘柄の中から「エクイティ・スプレッド(Equity Spread)」の上位75銘柄が新指数の構成銘柄として選ばれます。ちなみにエクイティ・スプレッドは「ROE(自己資本利益率)-株主資本コスト」で計算される値のこと。これは、会社の自己資本に対する収益性を表しています。
第2の基準では、500の中から残り75銘柄が選定されますが、ここではPBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)が1倍を超える銘柄のうち上場時価総額の高い方から順に選ばれていきます。つまり第1基準では「資本収益性」の優れた銘柄が、第2基準では「市場評価」の高い銘柄が選ばれているわけですね。
JPXプライム150指数の選定基準を示す4象限。水色の箇所から上位150銘柄が選ばれる。
日本取引所グループ
Q. 最近、PBRという言葉をよく聞きます。その詳しい意味は?
PBRとは「株価/1株あたりの純資産額」で算出された数値。分母の「1株あたりの純資産額」とは、会社全体の純資産を出回っている株数で割ったものです。つまりPBRは、会社の純資産に対してどの程度投資されているかを表す指標になります。
理論上、PBRが1割れの状態で会社が解散した場合、株数に応じて純資産が割り振られるので、投資家は市場で売却するよりも多くの金額を手にすることができます。そのためPBRの1割れは割安の基準とされる場合もあります。
しかしそれだけ投資家にとって人気がないということを表しているため、PBR1未満の銘柄が必ずしもお得というわけではありません。資産を持っていても活用できず、企業の収益性がかなり低いことを表しています。
Q. なぜ、いまPBRという言葉が注目されているのでしょう?
2023年現在、実は東証プライム市場と言えど、PBRが1を超える市場評価の高い銘柄は約半数しかありません。欧州の主要銘柄では8割程度、米国では9割以上の銘柄がPBR=1を超えており、日本市場はPBRが異常に低い市場として知られてきました。それだけ収益性が低く投資家からの人気が少ないことを表しています。
東証を運営するJPXはこうした現状を改善しようと努めてきました。今回の新指数、JPXプライム150は国内企業に対して株価や収益性を重視した経営を促す一方、国内外の投資家に対しては収益性や市場価値の高い魅力的な国内企業への投資を呼び込む狙いがあるとみられます。
Q. では、JPXプライム150はどうすれば購入できますか?
JPXプライム500の構成銘柄全体に分散投資したいのであれば、NIKKEI225やS&P500(Standard & Poor's 500 Stock Index)で見られるような指数連動型のインデックス型投資信託やETFが選択肢として挙げられます。しかし、この新指標は算出されたばかりであり、現時点で同指数連動型の商品は販売されていないようです。今後、どのような連動型商品が設定されるか期待したいところです。
もしJPXプライム500の構成銘柄に対して個別株投資をしたいのであれば、150の選定企業リストの中から気になる銘柄を選ぶと良いでしょう。
ちなみに、今回はソニーグループやファーストリテイリング、島津製作所などの老舗有名企業が選定されています。意外にもトヨタ自動車は基準を満たさなかったため選定されていません。
なお、JPXプライム500の構成銘柄は、毎年8月の最終営業日に「定期入れ替え」が実施されます。次回の入れ替えは、2024年8月30日(金)です。
Q. JPXプライム150は、今の日本株の好調にどんな影響をもたらしそうですか?
先ほどお答えした通り、JPXプライム150は収益性や市場価値の高い銘柄で構成されています。高収益性の企業を選ぶ基準として世界中で重要視されるようになれば、投資を呼び込むべく、企業は選定されることを目指して収益率の改善に努めることでしょう。企業がより利益率や株主の利益を重視した経営方針を取るようになり、NIKKEI225のさらなる上昇にも寄与するかもしれません。
しかし、東証が公表している過去データをもとにしたチャートでは過去10年間、JPXプライム150(想定)とTOPIXの値動きは余り大きく差が開いていないようです。結局はNIKKEI225やTOPIXで良いと判断され、重視されなくなってしまう可能性も否定できません。