7月18日に、全国のセブンイレブン限定で発売するシンプルecoラベル版の十六茶(取り扱いは店舗による)。「ゴクゴク飲んでもらえるよう」(アサヒ飲料)容量を現在の630ミリリットルから660ミリリットルに増量した。
撮影:湯田陽子
箱売り・通販がメインだった「ラベルレスペットボトル」(ラベルレスボトル)飲料市場に、変化が起きている。店頭でのバラ売り可能商品の増加だ。
アサヒ飲料はセブンイレブンとタッグを組み、7月18日からは全国で「小さなシール」だけが貼られた新たな装いの「十六茶」を全国のセブンイレブンで販売開始する。
環境負荷を減らせることから飲料メーカー各社が「ペットボトルのラベルレス化」を進めているが、マーケティング面では見た目の“地味さ”という課題もあり、店頭販売で売り上げを伸ばせるのか注目される。
ラベルレスボトル市場、5年間で15倍に成長
ラベルレスボトル市場は5年で約15倍と急成長している。
提供:アサヒ飲料
ラベルレスボトルは、プラスチックごみ削減の観点から、サントリーやコカ・コーラ、キリン、伊藤園といった飲料メーカーに加え、イオンやロハコといったプライベートブランドの参入も相次いでいる。
アサヒ飲料によると、2019年からの5年間でラベルレス市場は約15倍に拡大している。
増える「バラ売り」
アサヒ飲料はシンプルecoラベルを開発し、2021年4月からシンプルecoラベル版おいしい水の店頭バラ売りをスタート。
提供:アサヒ飲料
アサヒ飲料は2018年、日本で初めてラベルレスボトルを発売した。
その後、法律上必要な表示を小さなラベルに集約した「シンプルecoラベル」を開発。これによって1本単位でバラ売りできるようになり、2021年4月にはシンプルecoラベル版の「おいしい水」の店頭販売を開始した。
「おいしい水」のように極小ラベルを貼り付けたボトル飲料の店頭バラ売りは、他の飲料メーカーの商品にも徐々に広がっている。
アサヒ飲料の看板商品の一つ、十六茶についても、これまでは駅構内などのコンビニや量販店・スーパーといったごく一部の店舗で、ボトルの口に近い肩部に極小シールを貼った商品を展開してきた。しかし、肩部の極小シールは「流通の方や生活者の方から、デザイン的に『イケてない』といった声があった」(アサヒ飲料)という。
そこで、十六茶の発売から30周年を迎えた今年、セブンイレブンとタッグを組み、シンプルecoラベル版の商品を発売、全国での本格的な展開に踏み切る。
Z世代・ミレニアル世代の女性から支持
アサヒ飲料マーケティング本部マーケティング二部お茶・水グループのグループリーダー星野浩孝さん(左)と、主任の鈴木慈さん。
撮影:湯田陽子
背景には、シンプルecoラベルに対する消費者の好反応がある。箱入り販売用に「おいしい水」の完全ラベルレスを実現した際も、「ラベルを剥がす必要がないので、家事の手間が省けて助かる」といった声があったという。
「ラベルがないことで、その分のプラスチックが削減できるという『エコな商品』であることが伝わりやすいという点でも大好評でした」
と、アサヒ飲料マーケティング本部の鈴木慈さんは話す。
一方、ラベルレスボトルの認知が広がるにつれ、外出先でも手軽にほしいという声が高まってきた。そのニーズに対応して開発したのが、シンプルecoラベルだ。
「シンプルecoラベルは、原材料など法律上必要な表示を小さなシールに集約し、ボトル胴部に貼り付けたもの。
このデザインが、シンプルでいい、高級感があってスタイリッシュと大変好評です。シンプルecoラベルのおいしい水は2023年も好調で、前年比200%超えの出荷となっています」(鈴木さん)
マーケティング本部の星野浩孝さんは、
「特に若年層、Z世代を中心に多くの支持をいただいています」
と話す。
特にZ世代・ミレニアル世代の女性の支持率が高く、20〜40代の女性購入者が全体の4割以上を占めているという。
プラスチックは従来比33%減、CO2も46%減
今回セブンイレブンで販売するシンプルecoラベル版十六茶は、プラスチックは従来比約33%減、CO2排出量も約46%削減した。
提供:アサヒ飲料
シンプルecoラベル化によって、ラベルのプラスチック削減量は1本あたり約33%減、CO2排出量で同約46%減となっている。
この点は「2050年にプラスチック使用量ゼロ」を目指すセブン&アイグループにも響いたようで、セブンイレブン・ジャパンは、
「アサヒ飲料の環境に対する作り手としての責任、セブン&アイグループの売り手としての責任を考え、今回『十六茶』シリーズにおいてシンプルecoラベルを開発されているとご担当者から話をうかがい、導入に至りました」
とコメントしている。
アサヒ飲料のラベルレス商品は2022年、前年比149%の690万箱を達成。2023年は6月末時点で397万箱を出荷、7〜9月の最盛期にさらに拡大し、2023年通期で800万箱を目指す計画だ。
アサヒ飲料は2023年にラベルレス商品の800万箱販売を目指す。
提供:アサヒ飲料
今後のシンプルecoラベル商品の展開について、星野さんはマーケティング観点での難しさに触れながら、次のように語った。
「マーケティングの観点では、限られた売り場内でいかに商品を目立たせることができるか、いわば“目立ち度”が非常に重要です。我々がいくらシンプルecoラベル商品を提案しても、流通業界の方々にとっては『限られたなかでいかに売上を大きくするか』という大切なミッションがある」
「今回のセブンイレブンさんとの取り組みによって、こうしたラベルが小さい商品でも店頭で売れるんだという実績を積み重ね、流通のみなさんに提案できるようにしたいと思っています」