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AIブームへの対応を急ぐAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)が、新たな組織を設立した。AWSクラウド上で顧客企業が創造的な生成AI技術を利用するのを支援するのが狙いだ。Insiderが閲覧した社内メールから明らかになった。
メールは5月25日にAWSの上級幹部ピーター・デサンティス(Peter DeSantis)が社内に送付したもの。それによれば、この新組織は「ネクスト・ジェネレーション・デベロッパー・エクスペリエンス(Next Generation Developer Experience)」という名称で、「生成AIを使って顧客がAWS上で構築(ビルド)する方法を変革する」ことをミッションとする。
デサンティスはメールで以下のように書いている。
「およそ10年おきに、業界全体、ひいては世界を根本的に変えるテクノロジーのシフトが起こります。私は、インターネットシフトが起きたときを覚えている世代で、コマースの世界が再発明されつつあった初期の頃にアマゾンで働くという驚くべき幸運に恵まれました。(この旅はまだまだ続きます)。
ご存知のように、生成AIは次の大きな技術的破壊になると思われます。私は、AWSがこのエキサイティングな変革の次の波の中心的なプレーヤーになることを確信し、気持ちが弾んでいます」
新組織「ネクスト・ジェネレーション・デベロッパー・エクスペリエンス」を率いるディーパック・シン。
Amazon Web Services
この新組織を率いるのは、長年アマゾンの幹部を務め、最近ではAWSのコンテナとサーバーレス製品を運営していたディーパック・シン(Deepak Singh)だ。シンは、データベース、分析、機械学習の責任者であるスワミ・シヴァスブラマニアン(Swami Sivasubramanian)の直属となっている。
Insiderの既報の通り、アマゾンは現在、生成AIブームに乗じるべく対応を急いでいる。AWSは、API経由で基礎モデルにアクセスできるようにするサービス「Bedrock」や、生成AIを活用したコーディングコンパニオン「CodeWhisperer」といった製品を発表している。
再びデサンティスのメールを見てみよう。
「AWS(とアマゾン)全体で、チームはビルダー(編注:創造的に物事を作り上げる人のこと。アマゾンでは、プログラミングやITのニーズに合わせてクラウドツールを使用するプログラマーやエンジニアを指すのによく使われる)の生産性を向上させるために生成Alツールを実験しています。
チームが具体化させたアイデアに、私はインスピレーションを受けてきました。AWSの顧客も同じように興奮しており、ビルダー向けに生成AIの力を活用する手助けをしてくれるクラウド・プロバイダーと提携することを強く望んでいます」
新しい組織には、ダグ・セブン(Doug Seven)率いるCodeWhispererチーム、ジョナサン・ワイス(Jonathan Weiss)率いるIntegrated Development Environment(IDE)チーム、ハリー・マウワー(Harry Mower)率いるCode Suiteチームが含まれ、それぞれがシンの直属となる。
AWSの開発者担当副社長であるアダム・セリグマン(Adam Seligman)もこの新組織に加わり、開発者向けのツールを開発する予定だ。
「生成AIのおかげで、より幅広いビルダーグループがAWS上でアプリケーションを開発することも容易になるでしょう。私たちはこの分野でもさまざまな取り組みを新しく始める予定です。情熱を持った社内ビルダーやリーダーと一丸となって、迅速に行動するのを見たいと願っています」(デサンティスのメールより)
6月に開催されたAWSの社員集会では、アマゾンのクラウドの責任者であるアダム・セリプスキー(Adam Selipsky)が、この新組織をいち早く拡大させることを示唆している。Insiderが入手した会議の議事録によると、セリプスキーは、生成AIが現在の注力分野であること、AWSは先ごろレイオフや採用凍結を実施したが、AIのような「重要な優先分野」ではまだ採用を続けていることを話していた。
セリプスキーは、「私たちが行っているあらゆることを継続的に検討し、良いこと、付加価値のあることではなく、最も重要なことを優先することが非常に大切」だと語っていた。
Insiderがアマゾンの担当者に問い合わせたところ、メールによる回答があり、アマゾンは25年以上にわたって機械学習とAIを「当社が行っている事実上あらゆること」に活用してきたと述べている。
「あらゆる有意義な物差しで見て、アマゾンはAI業界をリードしています。当社のAWS機械学習ビジネスには、クラウドの中で最も多くの顧客、パートナー、機能が存在します。
まだ初期の段階ではありますが、当社は全事業にわたって生成AIに投資しています。すでに提供済みのものもありますが、近い将来提供するために懸命に取り組んでいる独自機能がさまざまあります」(アマゾンの担当者)