“出社ガチ勢”化する巨大IT企業、本当の理由。「テレワークは道徳的に間違っている」とまで言う経営者も

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テレワークは日本の大手企業でも定着しはじめたが、アメリカでは社会の意識が次の展開に進みはじめている。

Tada Images / Shutterstock

こんにちは。パロアルトインサイトCEOの石角友愛です。

先日、日本のエンジニア200名以上に対して行われたアンケート結果で興味深いものがありました。アンケートの内容は「リモートワークに対する意識調査」で、その結果、8割のエンジニアが、パンデミック収束後の世界でもリモートワークの継続を望んでいることが分かりました。また、リモートワークを希望する人は、例えば以下のような理由を挙げているといいます。

  • 通勤に時間と体力を奪われないから
  • 会社より自宅の方が仕事に集中出来るから
  • コロナ禍以前から家庭の事情でリモートワークを開始していたから継続したい

このように、「ワークライフバランスを重視する意見」や「話しかけられたりミーティングに突然呼び出されたりすることがないため、オフィスよりも自宅の方が集中できる」という指摘がありました。

逆に、リモートワーク反対派の人の声としては、

  • 経験がまだ浅いので先輩に直接指導してもらいたい
  • 急ぎのトラブル解決はリモートでは対応できない
  • 仕事の進捗報告や確認、相談がしにくい

など、対面ならではの利点が奪われたことによる機会損失や負担増加を指摘する意見がみられました。特に、新入社員などで誰に相談すればよいか分からない人にとっては、リモートワークは厳しい環境ともいえることがこの調査結果を見て分かります。

さて、このようにリモートワークを強く望む人が8割もいるIT業界ですが、アメリカでは、実はそのIT業界でリモートワークを規制する動きが強くなっているのをご存知でしょうか。

「フルリモート排除」に動きだしたグーグル

テレワーク

REUTERS/Gonzalo Fuentes

例えば、CNBCの報道によると、グーグルは6月にハイブリッド・ワーク・ポリシーを更新し、社員の身分証明証のデータ(オフィスバッジ)でオフィスへの出欠を追跡すること、従業員の業績評価に出勤状況を含めることなどを盛り込んだということです。

報道によると、グーグルではほとんどの従業員が週3日はオフィス勤務をすることを求められているということです。

グーグルのチーフ・ピープル・オフィサーであるフィオナ・チッコーニ氏は、「直接顔を合わせることに代わるものはない」という理由から、オフィスへの出勤を倍増させる方針を盛り込んだといいます。

ハイブリッドワークが定着して久しい米IT業界ですが、このように実体としてはオフィスに出勤しない人が多かった可能性があり、今後は週3出勤を半ば強いることで、段階的に脱リモートワークの動きを狙っているのかもしれません。

Google I/O 2023

グーグルの年次開発者会議「Google I/O 2023」に登壇するスンダー・ピチャイCEO。

REUTERS/Jeffrey Dastin

仕事の業績評価に出勤状況やオフィスバッジの追跡が反映されるというのは、アメリカのIT業界の感覚からすると少し意外な対処にも見受けられます。それだけ、グーグルの本気度がうかがえます。

実際に、チッコーニ氏は、「同じ部屋で一緒に働くことがポジティブな変化をもたらすことは間違いありません。先月のI/OとGoogle Marketing Liveで発表した製品の多くは、隣り合わせで働くチームによって考案され、開発され、構築されたものです」と述べ、オフィスで働くことがイノベーションにつながるという点を強調しています。

そして、すでにフルリモートワークを会社から承認された人たちに対しても、「再検討」するように促し、会社が 「ビジネス上の必要性、役割、チーム、組織、場所などに重大な変化が生じた 」と判断した場合、すでに承認されているリモートワーカーも再評価の対象となる可能性があると述べました。このことから、近い将来少なくとも週3のハイブリッドワークが実質的に全ての従業員に強いられる可能性も示唆されていることが分かります。

巨大ITの一角メタも全従業員「週3日リアル勤務」

TwitterとMetaのThreads

REUTERS/Dado Ruvic/Illustration

メタも同様に、9月から週3の出勤を全従業員に促す発表をしました。マーク・ザッカーバーグCEOは、3月のブログ投稿の中で、「内部分析によると、メタでオフィス出勤していたエンジニアは、リモートで働いていたエンジニアよりも平均的に高いパフォーマンスを発揮している」と紹介しました。

このように、巨大IT企業はイノベーションや管理の円滑性、生産性向上などを職場復帰の大きな理由として挙げていることが分かります。冒頭で紹介した日本のエンジニアに実施したアンケート結果でも、「分からないことをすぐ聞いて課題解決ができる」というオフィス勤務の利点は生産性に直結すると言えるため、妥当な考えであるように見受けられます。

アマゾンでは社内のオフィス勤務者が抗議行動

アマゾンの従業員

2022年3月、ニューヨーク市にあるアマゾンのJFK8配送センターにて労働組合選挙に並ぶアマゾンの従業員たち。

REUTERS/Brendan McDermid./File Photo

では、エンジニアなどのオフィスワークと、倉庫工場機能という現場ワークを併せ持つアマゾンではどんな動きが起きているのでしょうか。

アマゾンでは今年の5月から最低で週3日間出勤するようにオフィスワーカーに命じましたが、それに対してオフィスワーカーは反発。アマゾンのシアトル本社では、昼休みの1時間、大勢のワーカーが職場から立ち去り、職場復帰ポリシーへの反発を表明する抗議運動に出たということです。

興味深いのは、アマゾンのオフィス勤務者のこうした動きに対し、The New York Timesの記事では、本質的な問題提起をしていることです。

オフィスワーカーがリモートワークを支持する声と、アマゾンの中枢とも言える工場や倉庫で勤務するワーカーの状況を比較し、「オフィスワーカーの要求と、リモートワークが決して容易ではない何百万人もの工場勤務の労働者の要求は、どのように比較されるべきなのだろうか?」と報じています。

同記事によると、オフィスワーカーはリモートワーク支持の声を挙げること自体に「リモートワークの特権があることによる罪悪感」を感じているといいます。あるオフィスワーカーは「倉庫労働者の労働条件は私よりもはるかに厳しいことは承知の上で、それでも従業員としての自主性を守る権利は保持できるはずだ」と考え、このストライキに参加したといいます。

「リモートワークは道徳的に間違っている」とイーロン・マスク氏

イーロン・マスク氏

6月にフランス・パリで開催されたスタートアップカンファレンス「VivaTechnolgy」に出席するイーロン・マスク氏。スペースX、テスラのCEOであり、ツイッター社のオーナーでもある。

REUTERS/Gonzalo Fuentes/File Photo

このように、リモートワークができない生産現場や物流現場などの従業員の立場を盾に取り、「リモートワークは道徳的にそもそも間違っている」と主張しているのが米テスラのCEOイーロン・マスク氏です。

イーロン・マスク氏は先日、リモートワークをする人を非難し、リモートワークは職場に出勤しなければならない人への侮辱だという考えを示しました。

マスク氏は自宅でノートパソコンを立ち上げて仕事をすることは生産性を低下させる上に、そうした選択肢を持たない工場労働者らに間違ったシグナルを送ることになると述べています。

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