出典:アップル
2023年はApple Vision Proのニュースに隠れてしまったようなところがあり、アップルの新OSの話題が目立ちづらい。しかし、着実に進歩はしている。
特に注目は「iPadOS 17」だ。大きな画面を活かすための機能が増え、使いやすくなった。
新OSのパブリックベータ版が公開になったので、そこから特に注目の4機能をご紹介したい。
例年秋に新バージョンが出るが、パブリックベータ版は、その公開に向けたテストのためのものだ。登録すれば誰でも使うことはできるが、不具合などが存在する可能性があり、日常的に利用することは推奨されていない。
なお今回公開する画像については、報道目的で利用する許可を得た上で掲載している。
1. Threads含めSNSを同時に利用、「ステージマネージャ」の自由度アップ
iPadOSには「ステージマネージャ」という機能がある。複数のアプリを1つの画面に並べて使う際に便利なもので(PCやMacのマルチウィンドウに近いものがある)、iPad Air(第5世代)/11インチiPad Pro/12.9インチiPad Pro(第3世代以降)で利用可能だ。
ただし、現行のiPadOS 16までは「アプリの並べ方」に制約もあり、使い勝手に課題があった。
これが、iPadOS 17では、並べ替えの自由度が増す。アプリのサイズ変更・配置の制約は、iPadに対応したアプリであればほぼなくなる。また、iOS専用のアプリについても、若干だがサイズ変更が可能になった。
新しい「ステージマネージャ」の特徴の1つは、一言でいえば「iOS専用アプリしかないサービスがこれまで以上に使いやすくなる」ということだ。
昨今話題の新SNS「Threads」や「Bluesky」だ。特にThreadsは現状、スマホ版アプリからしか使えず、表示や文章の入力に大きな制限がある。
しかしiPadOS 17のステージマネージャでは、以下のように、3つのSNSを並べて表示しやすくなり、iPad側から物理キーボードを使って入力できるようになるので、使い勝手が大きく上がる。
iOS版しかなく制限が多いThreadsやBlueskyを、Twitterと並べて利用。キーボードも使えるので、「半分仕事でSNSを使っている人」などには、グッと使いやすくなる。
撮影:西田宗千佳
こんな風にアプリの幅(ウィンドウ)のサイズを大小に変えたり、重ねることもできる。
筆者によるスクリーンショット
なお、Macも併用している場合、「近くにある別のMacやiPadでも、キーボードやマウスなどを使う」機能も使える。Macのキーボードとタッチパッドで、iPad側のThreadsを操作……という使い方ができるわけだ。
iPadのみでステージマネージャを使った場合、同時に起動できるアプリは「4つまで」に制限されている。これは現行のiPadOS 16から変わっていない。外部ディスプレイをつなぐと合計8つになる。
前述の「ウインドウレイアウトの自由度拡大」は外部ディスプレイでも有効なので、より「Macっぽく」使えるようになっている。
外部ディスプレイ向けの設定も強化され、自由度が増した。
筆者によるスクリーンショット
2. ロック画面が大幅進化
iPadOS 17の、もっともわかりやすい進化は「ロック画面」だ。
これはステージマネージャとは異なり、iPad miniも含め、iPadOS 17に対応するすべてのiPadで使える。
iPadOS 17のロック画面機能は、iOSでの進化を1年遅れで追いかけるような進化に近い。動く「ライブ壁紙」が使えるようになり、「ウィジェット」のサポートも拡大された。HomeKit対応の家電をロック画面から管理したり、天気やバッテリー残量などを確認したりしやすくなっている。
iOSと同様に、ウィジェットの配置や文字のテイスト変更なども可能に。
筆者によるスクリーンショット
配置場所は決まっているが、広い画面を生かして情報量を増やせる。
筆者によるスクリーンショット
本体を回転させると中身が変わる「万華鏡」壁紙。
撮影:西田宗千佳
これに伴い、いわゆる「アプリの通知」は画面の上方からでなく下から出るのが基本になっている。
即時通知型のキャプションは下から出るようになった。
筆者によるスクリーンショット
3. 手書き文字入力が可能に
iPadはこの数年で「手書き文字入力」機能を拡大している。iPadOS 16まででも、メモや文字入力欄に直接手書きで文字を書く「スクリブル」に対応していたが、タイプやフリックの代わりに手書き入力をすることはできなかった。
しかしiPadOS 17では、こうした部分でも手書き入力が可能になる。
タッチキーボードの代わりに手書き入力が可能に。
筆者によるスクリーンショット
スクリブルとの違いは、
- 入力は画面下部の入力部で行う
- ペンを使わず、手で入力も可能
ということ。
認識精度はなかなか。ひらがななどですばやく書いて、そこから漢字仮名混じりに変換することもできる。
なお、この手書き認識機能はiOS 17にも搭載されるので、「iPhoneでも手書き入力したい」人には朗報だ。
手書き入力はiOS 17でも可能になる。
撮影:西田宗千佳
4. 「ヘルスケア」がiPadにも
iPhoneでは自分の健康に関する情報を一覧できる「ヘルスケア」という機能があった。特にApple Watchや「ヘルスケア」連動対応の体重計などを使っている人には、過去の傾向を含めて一覧できるのでありがたい要素だった。
ただ、常に画面の小さいiPhoneで見なくてはいけないのが不便ではあり、「iPadなどに対応してくれれば」と考えることもあった。
今回から、iPadに「ヘルスケア」の機能がつき、過去の履歴を含め、情報の一覧性が上がった。
「ヘルスケア」情報の表示がiPadからも可能に。ただしiPhoneで集めた情報をiCloud経由で表示するものなので、「iPadがApple Watchなどに対応」したのではない。
筆者によるスクリーンショット
ただしこの機能、「iPadがApple Watchなどに対応した」のではないので、ご注意を。
Apple Watchなどとの連携は、あくまでiPhoneが担当するのは変わっていない。今まで通りiPhoneがデータを集約し、暗号化して記録する。
iPadの役割は、「iPhoneで記録され、暗号化された形でiCloudに蓄積されたヘルスケア情報を読み出し、表示すること」だ。だから、iPhoneがなければ活用できない情報であることに変わりはない。
しかし、自宅などでiPhoneよりもiPadを持つ機会が多い、という人は少なくないはず。そんな人には、ひと手間が減る機能と言えそうだ。