【佐藤優】知的格差は拡大している。佐藤流読書術のポイントは「3度読み」

お悩み哲学相談Vol.58

イラスト:iziz

シマオ:皆さん、こんにちは!「佐藤優のお悩み哲学相談」のお時間がやってまいりました。読者の方にこちらの応募フォームからお寄せいただいたお悩みについて、佐藤優さんに答えていただきます。さっそくお便りを読んでいきましょう。

佐藤さんは今以上に活字離れが進むと、本の単価が上がって、より知識層と貧困層の差が広がっていくというようなことはあると思いますか?

また、顧客の少ないテーマやジャンルは書籍にするのが難しくなって、本屋がマンガだらけになるというか、知の多様性が保たれなくなるようなことはあるでしょうか。

ネットを見ていたら、全国で70館以上の図書館が導入している、借りた本の金額を記帳するサービスが賛否両論だったことも印象的です。

(しりとり、50代前半、大学職員、男性)

知の二極化はすでに進行中

シマオ:しりとりさんは、活字離れが進んでいる現状を憂えているようですね。本を読む人が少なくなれば本の単価が上がって知的格差がより広がるのではないかと。

でも、一般的には、需要が増えれば価格は上がり、需要が減れば価格も下がるとされていますよね? 本も需要が減れば価格は下がって、むしろ手に取りやすくなるんじゃないですか?

佐藤さん:本の場合は少し事情が違います。活字離れが進んで本が売れないと、初版の発行部数がどんどん減らされます。すると損益分岐点をクリアするために本の単価を上げなければいけません。紙代や印刷製本代などが高くなっているというのもあって、すでに本の単価は上がっていると思います。

シマオ:たしかに、いま新書でも1000円を超える本が結構ありますね。

佐藤さん:そうするとお金に余裕のない人たちは、ネットで情報を集めて本を買わなくなる。すると、ますます本が高くなって、本を買って読む層との知的な格差が広がるというのはあると思います。

シマオ:なるほど。そういう意味では、すでに知の二極化は進んでいるんですね。佐藤さんから見て、いわゆる「エリート層」と呼ばれる人たちはやはり本をたくさん読んでいるのでしょうか?

佐藤さん:はい。優秀な人ほど本をたくさん読んでいると思います。昔も今も、エリートの知識と情報の源は活字であることは変わりません。

ちなみにシマオくん、エリートと言われる人たちの中で、一番本を読んでいるのはどういう人たちだと思いますか?

シマオ:う〜ん……。やっぱり研究者や大学教授とかじゃないですか?

佐藤さん:いえ、私の知る限り、むしろ今の大学教授は本を読まなくなってきているんです。それより上場企業の社長だとか、成功しているベンチャー企業の経営者が一番本を読んでいます。

シマオ:へぇ〜、それはちょっと意外ですね! どんなジャンルの本を読んでいるんですか?

佐藤さん:それはもうあらゆるジャンルの本を読んでいますよ。古典はもちろん、今一番読まれているベストセラーや、文科系から理科系の本まで幅広く読む。

経営者たちはビジネスの世界で厳しい競争を勝ち抜いていかなければなりません。とにかく良質で有益な情報と知恵を少しでも多く得たい。その必死さがあるから、情報源として本が一番だと熟知している訳です。

シマオ:ベンチャー企業の経営者なら若い人も多いと思うのですが、ネット情報ではなくてやはり本なのですね!

イケてる経営者は活字好き

イラスト:iziz

佐藤さん:なぜかと言ったら、値段の割に本の情報量が他の媒体に比べて格段に多いからです。

1冊1000円の新書であれば400字詰め原稿用紙で200枚から300枚くらいの情報量があります。ところがこれが著者に直接会って話を聞く食事会のようなものだと、1回2〜3万円でも話される情報量はせいぜい原稿用紙30枚程度でしょう。

シマオ:たしかに。中には10万円以上の、べらぼうに高い懇親会や食事会のようなものもありますし……。

佐藤さん:私はそういったものはかなりあこぎな商売だと思います。いずれにしても、そういうものと比べると、本は格段に安い。しかも著者が渾身の力を込めて作るものも多い。こういう媒体はやはり活字、本しかないと思います。

シマオ:なるほど。本というのはいわゆる「コスパ」が非常に高いってことですね。

佐藤さん:その通りです。

出版不況の原因は活字離れだけじゃない

シマオ:一方で、いま若い人がYouTubeやTikTokなんかで簡単に情報を得ていますが、情報格差は以前に比べてどんどん広がっているということでしょうか?

佐藤さん:残念ながらそう言えると思います。YouTubeなどで各時代の歴史的な事象を5分でざっと解説なんて動画がありますが、そういうもので表面的な情報、しかも信ぴょう性の低い情報を得て知った気になってしまうのが一番怖いですね。

シマオ:思想も偏りそうですしね……。でも、それで言うとしりとりさんが相談文に書いて下さっているような、書籍も売れるテーマやジャンルに偏っていくというのもあるのでしょうか?

佐藤さん:出版不況のなかで、出版社が目先の利益を追求するあまり、どうしても企画や著者が売れ線に傾いていくというのはあると思います。編集者が企画を立てる際も、まっ先に同様の売れている出版物があるか、著者が売れている著者かどうかをチェックするようです。

シマオ:まったく新しい企画は通りにくくなっているんですね……。たしかに本屋さんに行くと、売れた本の二番煎じ三番煎じで、似たような本が並んでいますよね。

佐藤さん:出版不況の原因は活字離れだけでなく、著者と版元の企画力の低下、組織の硬直化があるかもしれません。

シマオ:ふ〜む、それを防ぐためにも、僕たちは積極的に本を買って読むということをした方がよさそうですね。

佐藤さん:図書館で本を借りるのもいいのですが、やはりできる限り本は実際に自分で買った方がいいというのが持論です。特に、大事な本に関しては読み方が変わってきますから。

シマオ:どういうことでしょうか?

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