政府が推進するリスキリングだが、日本ではまだまだ浸透していないことがわかった。
撮影:今村拓馬
1年以内の学習経験がなく、かつ学習意欲もない人の割合は、4割にものぼる──。
オンライン動画学習大手・Udemy(ユーデミー)と提携するベネッセが、学生を除く18歳〜64歳の男女3万9998人を対象にしたインターネット調査を実施したところ、日本では「リスキリング」が浸透していない現実が浮き彫りになった。
リスキリングとは、DXなどのスキルを身につけることで、会社組織の中で新しい仕事を担う人材を育成すること。
政府が発表した「三位一体の労働市場改革の指針」(5月16日)では、「リ・スキリングによる能力向上支援」によって成長産業への労働移動を進めることで「構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく」とうたっている。
しかし、リスキリングの意欲は高まっていない状況だ。
「意欲も学習経験もあり」は34%
約4万人の回答を基に「学んでいます」「学ぶつもり」「学ぶのに疲れた」「なんで学ぶの」の4つの層に分類した。
出典:Udemy「社会人の学びに対する実態調査」
調査では、「学生時代を除き、直近1年で学習したことはあるか(目的や学習手段は問わない)」と「今度1年以内に何かを学習したいと思うか」を質問した。
その結果、学習経験も学習意欲もある『学んでいます層』は34.5%だった。また学習意欲はあるものの、学習経験はない『学ぶつもり層』は13.5%だった。
学習意欲がないものの学習経験がある『学ぶのに疲れた層』は12.1%で、学習意欲・学習経験ともにない『なんで学ぶの層』が39.9%と4分類の中では最多となった。
ベネッセでは2022年にも同様の調査を実施しているが、前年と比較して大きな変化は見られなかった。
「リスキング」認知は進む
リスニングの必要性を知りながら、取り組めていないとした人も少なくない。
出典:Udemy「社会人の学びに対する実態調査」
一方で、リスキリングという言葉の認知度は、2022年の調査では23%だったのに対し、今回の調査では56%に急伸した。
Udemy日本事業責任者の飯田智紀氏。
オンライン上での記者会見を撮影
これらの結果について、ユーデミー日本事業責任者でベネッセコーポレーション・社会人教育事業本部長の飯田智紀氏は「認知と実行にはタイムラグもある。リスキリングの必要性は知っていてもまだ行動ができていない人が多い」とした。
その上で飯田氏はリスキリングに向けた行動を起こせない要因として、「時間がない」「やる気がない」「お金がない」という3つの要素があると指摘した。
「この3つの“ない”に対して社会全体でどう解消していくか、 また組織が従業員の悩み事、困り事にどう向き合っていくかが重要になっている」(飯田氏)
ChatGPT、ITパスポートの講座が人気
出典:Udemy「社会人の学びに対する実態調査」
ユーデミーが提供している講座の中で、2023年に人気を集めている講座も発表された。
大企業でも中小企業でも、ChatGPTに関連する講座が、検索結果と受講実績の双方で急上昇したという。
ChatGPT以外では、大企業では情報処理についての国家資格「ITパスポート」に関する受講数が増加した。その理由について担当者は「大企業の社員ではDXを使いこなすためのスキルとして、ITパスポート資格取得が人気になっている」とした。