2023年末までにアメリカの株式市場で起こりうる弱気シナリオとその対策

年末までに株式市場で起こりうる弱気シナリオ

Anton Petrus/Getty Images

  • S&P500指数が年初来で19%上昇したにもかかわらず、株式市場には多くのリスクが存在する。
  • データトレック・リサーチは、株式市場の上昇に水を差しかねない4つの弱気シナリオを取り上げた。
  • 「株式は、常に不完全で予測不可能な世界において、完璧に近い値付けがされている」

S&P500指数2022年の最悪期を乗り越え、年初来で19%急上昇したが、今後12カ月の株式市場を揺るがしかねないリスクはまだたくさんある。

データトレック・リサーチ(DataTrek Research)の共同設立者、ニコラス・コラス(Nicholas Colas)は2023年7月19日に公開したメモで、年初来の好調な上昇に水を差しかねない弱気なシナリオを強調している。

「我々はポジティブであり続けるが、常に取引の反対側を考慮した方がいい」とコラスは述べ、S&P500における現在から今後に向けての株価収益率が20.3倍であるということは、株価の値付けが完璧に近いことを意味していると付け加えた。

これ(バリュエーション)は、2020年と2021年のように(業績)予想が上がっていれば問題ないがそうではない。実際、S&Pの2024年業績予想は先週、過去最低を更新した。株価は、常に不完全で予測不可能な世界において、完璧に近い値付けをされている。

投資家が備えるべき4つのシナリオと、それに対するリスクヘッジについて紹介する。

1. 投資家が利益を確定し始める

「おそらく、何も『うまくいかない』ことはないだろうが、S&P500指数は年内に横ばいか、数%下落するだろう」とコラスは言う。これは、投資家が利食いを始め、テクノロジー株から金融株や工業株などの出遅れ株にシフトすることが原因かもしれない。

ビッグテックの銘柄はS&P500の約3分の1を占めているため、このセクターが10%下落すれば、株式市場で5%の売りが生じる可能性がある。リスクヘッジのために、金融株や工業株を保有し、ローテーションの恩恵を受けるようにコラスは勧めている。

2. 粘り強いインフレ

インフレが予想以上に粘り強いものとなれば、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は、経済を景気後退に追い込むリスクがあるとしても、利上げを再加速せざるを得なくなるだろう。そうなると、あと1回利上げすれば景気後退は避けられると思っていた投資家も動揺するかもしれない。

この粘り強いインフレシナリオを後押しするのは、原油価格の反発と住宅価格の上昇だと考えられる。

そのリスクヘッジのために、エネルギーセクターの銘柄を保有することをコラスは勧めている。

3. 雇用市場の予想外の鈍化

アメリカの労働市場と経済成長が予想に反して鈍化するのは、金融政策が長期にわたって変化しやすいラグを伴って機能することに起因している可能性があるとコラスは警告する。FRBは過去1年間に5%の利上げを行ったことから、こうしたラグが現れ始める可能性がある。

「雇用の伸びと消費者需要の伸びが数カ月も平均値を下回れば、企業経営者は景気後退が目前に迫っていると確信するだろう。そうなると彼らはレイオフを加速させ、景気後退へのスパイラルが始まる」とコラスは言う。

リスクヘッジとしては米国債の保有が考えられる。

4. 実質金利は上昇を続ける

FRBがバランスシートを縮小していくと、実質金利は上昇を続けるだろう。

「これまでのところ、実質金利の上昇によって株式のバリュエーションが悪化したということはない」が、投資家が債券を株式の正当な競争相手と判断する水準にまで実質金利が達すれば、「それは変わる可能性がある」とコラスは言う。

さらに、実質金利の上昇はドルの価値を押し上げ、企業収益を圧迫する可能性がある。

このリスクヘッジとしては、株価が高いうちに売却し、債券のデュレーションリスクを回避することだという。

「これらのシナリオはいずれも我々の基本シナリオではないが、重要な視点であることに変わりはない。我々よりも慎重な見通しを持っている人もいるだろう。そして、地政学的に不利な出来事に関する『未知の未知』のショックは含めなかったが、それらは常に背景に潜んでいる」とコラスは語った。

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