老後の準備を始めるのに早すぎるということはない。
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- 時間こそが資産形成における最大の武器となる。
- 2人の人間が老後に備えて毎月1万円を投資するとして、1人が25歳で、もう1人が35歳で始めた場合、65歳時点の資産総額はおよそ倍の開きが出る。
- 今何歳でも、資産形成は先送りにせず、今すぐに始めるべきなのだ。
個人の金銭管理という点では、「時間」はただのありきたりな言葉ではない。時間こそが、資産形成のための最も手軽で、最も信頼できるツールだ。
バンクレイト社(Bankrate)がアメリカ人を対象に、金銭面で何をいちばん後悔しているかと尋ねたところ、老後に備えて早くから資産形成をしなかったこと、という回答が最も多かった。
20代のころから(あるいはもっと早くから)老後に備えて資産形成するという考えは、退職までまだ何十年もあるのだから、あまりにも早すぎると思えるかもしれない。しかし、複利の働きで、わずか数年の差が数十万円もしくはそれ以上の差になることもある。
複利とは指数関数的な成長を意味し、資産形成を図る者に多くの見返りをもたらす。そして、早い段階で行動を起こせば起こすほど有利になる。坂を転がすとどんどん大きくなっていく雪だるまと同じだ。オリジナルの雪だるまが大きくなり、大きくなった雪だるまがさらに多くの雪を集める。
美咲と葵、10年の違いがもたらすもの
次の例と図について考えてみよう。美咲と葵はどちらも年に5.5%の複利収益率で毎月1万円を投資したとしよう。美咲は毎月1万円を25歳から65歳まで投資した。葵は毎月1万円の投資を35歳で始めた。
2人が65歳になったとき、葵の口座には約890万円が、10年早く始めた美咲の口座には約1680万円が残っていることになる。美咲は120万円余分に投資しただけなのに、資産総額は葵のほぼ2倍だ。
毎月1万円を年利5.5%で投資した場合の累積資産を示したグラフ。
Business Insider/Andy Kiersz, Shin Osada
もし美咲と葵が年をとるにつれて(昇級に合わせて)月々の投資額を増やした場合、退職時にはもっと多くの額が口座に残っている。
それに加えて株式市場への投資や確定拠出年金のような退職金口座などを利用すれば、毎年5%以上のリターンを得られるだろう。過去全体を通じて、インフレを調節した株式市場の平均収益率は7%を記録している。
企業DCやiDeCoなどといった税制面で優遇される退職金口座に貯金することで、資金をさらに大きく増やすことが可能だ。そうした口座は税引き前の資金で運用されるため、全額が複利の対象となる。
時間こそが最大の武器となる
時間こそが、うまく貯蓄できた人の多くのポートフォリオに見られる共通項だ。TDアメリトレード(TD Ameritrade )が以前、少なくとも25万ドル(約3500万円)の投資可能資産をもつ1500人のアメリカ人を対象に、資産形成戦略について尋ねた。彼らのおよそ20%が収入の平均29%を貯金もしくは投資する「スーパーセーバー」で、残りは平均して6%しか蓄財していなかった。スーパーセーバーの約半分(54%)が30歳になる前に投資を始めていたのに対して、残りのグループではわずか40%だった。
20歳で資産形成を始めなかったとしてもあきらめる必要はない。今が何歳でも、資産形成は先送りにせず、すぐに始めたほうがいい。資産づくりにはかなりの忍耐が必要で、失われた時間を取り戻す方法はないのだから。