メタのマーク・ザッカーバーグCEO。
Drew Angerer/Getty Images
メタ(Meta)は7月18日(米国時間)、商用利用が可能な大規模言語モデル「Llama 2」を公開した。同社はLlama 2を、世界屈指のテック企業が提供する世界最高水準のオープンソースAIだとして宣伝している。
だが、そういうわけでもなさそうだ。
Llama 2へのアクセスを求めるユーザー向けの利用規約では、大規模ユーザーには、小規模企業や個々の開発者と同様のアクセス権は付与されないと規定している。
月間アクティブユーザー数(MAU)が7億人以上というユーザー基盤を持つ企業がLlama 2の使用を希望する場合は、モデルの使用を「リクエスト」する必要がある。アクセス権を付与されるかどうかは、ライセンスに基づきメタが「独自の裁量で」決定する。大企業やプラットフォームに「この権利が明示的に付与され」た場合にかぎり、Llama 2を使用することができる、とメタは説明している。
このような制限があるようでは、Llama 2はオープンソースとは呼べない。非営利団体オープンソース・イニシアチブ(Open Source Initiative:OSI)はオープンソースの基準を設定しているが、同団体ではソフトウェアのライセンスがオープンソースとして承認できるかどうかも審査している。
OSIのエグゼクティブディレクター、ステファノ・マッフリ(Stefano Maffulli)は次のように指摘する。
「Llama 2とFacebookで使用されているライセンスはオープンソースのライセンスではなく、商業的なニーズに対する制限が含まれているため、オープンソースのライセンスとしての資格がありません」
メタの広報担当者は、Llama 2のライセンスは「モデルへのオープンアクセスの責務と、誤使用の可能性に対処できるように準備された防衛策のバランスをとった、オーダーメイドの商用ライセンスです」と説明する。
同じ広報担当者によれば、この制限は、Llama 2の使用中にMAUが7億人に成長する可能性のある企業には適用されないという。「他のライセンス条項を遵守する限り、Llama 2を自由に使用し続けることができます」と話す。
メタの制限に対する懸念
Llama 2のユーザーの大半は、MAU 7億人に満たないと見られる。しかし、グーグル(Google)、アマゾン(Amazon)、アップル(Apple)などメタの主だった競合相手や、アメリカや中国のような大国の政府は、おそらくこのモデルを使用できない。
マッフリはいまだにLlama 2の制限を懸念している。
仮に、誰かがこのAIモデルを使用して何億人もの人々に影響を与える問題を解決したいと思ったときも、メタにLlama 2が使えるように要請する必要があるかもしれないとマッフリは説明する。また、メタが清算されることになった場合も、ユーザーはLlama 2の利用を要請することができなくなるだろう。
「開発者がこのテクノロジーをどこでどのように使うか、関係者に聞かなくても自分で決められなくてはいけません。でもこれでは、相手が対応できなかったり、連絡がとれなかったりする可能性があります」(マッフリ)
AIにおけるオープンソース
OSIは現在、会議や討論会を主宰し、AIとAIによる機械学習に関連してオープンソースとは何かを正式に定義するための提案を受け付けている。しかしマッフリによれば、メタによるLlama 2の提供のしかたは、オープンソースライセンスの基本的な要件さえも満たしていない。
Llama 2のコミュニティライセンス契約は、オープンソース・イニシアチブによってオープンソースとして承認されていない。マッフリの話では、そうした制限がある場合は承認されないだろうという。OSIのオープンソースの定義によると、オープンソースのソフトウェアのライセンスとは、「複数の異なるソースから成るプログラムを含む統合型ソフトウェアを配布する一環として、ソフトウェアを販売または譲渡することをいかなる当事者も制限してはならない」とある。
メタがLlama 2を「オープンソース」として宣伝していることに、マッフリは頭を抱えている。メタがこの言葉を不適切に使用すれば意味がぼやけてしまうからだ。
「オープンソースは、この業界ではよく知られ、明確に定義された用語です。大規模な組織、政府、政策立案者はみなこれらの原則と定義に従っています。オープンソースと同様に巨大で影響力のあるものを保有しながら、それが実態と異なるように宣伝されていることを懸念しています」(マッフリ)
企業がオープンソースの定義に反対したのは今回の件が初めてではない。
モンゴDB(MongoDB)、レディス(Redis)、コンフルーエント(Confluent)、エラスティック(Elastic)など、長いことオープンソースのソフトウェアを保持してきた企業は、アマゾンをはじめとする企業が(真のオープンソースのライセンスがあれば実現可能な)ソフトウェアを販売することを制限するため、ソフトウェアのライセンスを変更した。だがこれが反発を招いている。この制限により、これらのソフトウェアはオープンソースの基準に合致しなくなったのだ。