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大手企業で、インターンシップにもジョブ型を導入することによって学生・企業双方のミスマッチを減らし、「配属ガチャ」問題の解消を目指す動きが進んでいる。
「ジョブ型」雇用に注力する日立製作所は7月20日に説明会を開き、2023年は経験者(600人)と新卒(600人)合わせてジョブ型採用の比率を95%(1200人中1140人)にすると説明した。
鍵を握るのが、採用人数の半数を占める新卒だ。日立では2020年からインターンシップでもジョブ型を導入している。2022年(24卒)は600人を受け入れ、うち140人に内々定を出すなど、効果も上々だ。
2023年はさらに多い800人の受け入れを見込んでいるという。
インターンシップにおけるジョブディスクリプション(JD)は約400にものぼる。
ちなみに中途も合わせた日立製作所全体のJD、採用ポジションは1100超だ。
「配属ガチャ」問題の解消、そして「就社から就職」への意識の転換が狙いだ。
参考記事:4月に転職サイト登録する「新卒」過去最多に。キャリアも“蛙化現象“…配属ガチャが影響か
技術系、文系、それぞれに合った選択肢を
提供:日立製作所
これまでジョブ型インターンシップに参加した学生は学部卒、院卒などでいうと修士が最も多く、博士号(Ph.D.)を取得した人もいた。
上の図はジョブ型インターンシップのジョブディスクリプションの例だが、ここからも分かるように、ジョブ型インターンシップの主な対象は技術系だ。
2022年は600人中570人が技術系、残りの30人が事務系だった。技術系のほとんどが理系の学生だったという。
技術系とは研究開発やシステムエンジニアなど、事務系とは人事・経理財務・法務などを指す。
「会社としてデータを活用した事業への転換をはかっている最中なので、情報系、デジタル系のスキルを持った学生さんが非常に多く参加しています」
そう話すのは、採用を担当する大河原久治さん(人財統括本部)だ。
新卒採用において技術系は全てジョブ型だが、事務系はジョブ型に似た職種別採用のほか、「オープンコース」としていわゆるメンバーシップ型の採用も継続している。2023年の新卒採用計画では600人のうち技術系500人に対して事務系は100人で、事務系の6割をオープンコースが占める予定だ。
「学生の皆さんの中には就活の段階では自分のキャリア観が形成されておらず、まだまだ悩んでいる学生さんもいらっしゃると思います。特に文系の学生さんにはそうした方が一定数いるので、オープンコースを活用してもらい、会社の事業や幅広いジョブについて理解していただくようにしています」(大河原さん)
事業のライバルはアクセンチュア、「採用競合」は…
ジョブ型インターンシップの様子。2022年9月。
提供:日立製作所
今年度(現在の大学3年生・25年卒)から期間や内容など一定の条件を満たしたインターンシップにおいては、インターンシップで取得した学生の情報を企業側が採用活動開始以降に利用できるようになった。
日立製作所では夏季や冬季のインターンで学生が出した成果や、その過程で見えた本人の強みと弱みを、6月以降の選考時に参照。 配属ガチャの解消にさらなるはずみをつける計画だ。
同社がジョブ型雇用を始めたのは、今から20年以上前の2001年。2009年3月期には当時の製造業で最大となる7873億円の赤字を出し、経営危機に陥った。
その後、経営戦略を転換し、現在はデータを活用したサービスに注力している。競合としてアメリカ・アクセンチュアをベンチマークに掲げ、役員報酬でも同社の株価を指標に取り入れる。
いま、事業ではなく「採用競合」として意識する企業はあるのだろうか。
「従来は我々が総合電機メーカーということで、東芝さんや三菱電機さんが例にあげられることが多かった。
今は事業内容も変化し、さらに非常に多様化してきているので、たとえばデジタル人材の獲得では、金融、コンサル、建設、通信など、本当にさまざまな業種と競合するようになっています」(大河原さん)