スレッズでどのようにインフルエンサー・マーケティングを展開すべきか、ブランドは模索している。
Murat Kocabas/SOPA Images/LightRocket/Getty Images
Instagram(インスタグラム)の新しいアプリ「Threads」(以下、スレッズ)にはまだハッシュタグはないかもしれないが、スレッズのあちらこちらに「#ads」が登場することは止められない。
7月5日のローンチからわずか2日で、一部のブランドやインフルエンサーはスポンサード・コンテンツを投稿し始めた。
ストリーミング・プラットフォームのHuluは、インフルエンサー・マーケティング会社Influentialを通じて、TikTokのフォロワー400万人以上、スレッズへの早期アクセスを許されたコメディクリエイターのアダム・ローズ(Adam Rose)と契約。一方、クリエイターエコノミー・スタートアップのHashtag Pay Meは、マイクロインフルエンサー(特定のジャンルに影響力を持つインフルエンサー)のクリステン・ブスケット(Kristen Bousquet)と契約した。
Hashtag Pay Meは、スレッズがローンチした翌日、ブスケットのインスタグラムのストーリーとスレッズで会社を宣伝するために彼女に200ドル支払った。
「その後、この実績を使って、以前一緒に仕事をしたブランドに声をかけた」とブスケットはInsiderに語った。すでに彼女はスレッズに多くのスポンサード・コンテンツを投稿している。
Huluはアダム・ローズを使ってスポンサード・ポストを投稿。
Screengrab/Threads
スレッズはローンチ後最初の2週間で1億5000万ダウンロードを突破し、記録的な成長を見せた。ブランドはすぐにその可能性に注目した。
「新しいプラットフォームが登場すると常にブランドがエキサイトする要素が2、3ある」と、インフルエンサー・マーケティング・プラットフォームCaptiv8の共同創業者クリシュナ・スブラマニアン(Krishna Subramanian)は述べた。
「1つは注目されることであり、最初に参入し、プラットフォームで非常にユニークなことを行って、多くのエキサイティングな注目を集めることだ。次の段階に進むにつれて、プラットフォームから具体的にどのように成果をあげるかが重要になる」
インフルエンサーがフォロワーに直販できるLTKや大手ECのAmazon(アマゾン)などのアフィリエイト・リンクもスレッド上に溢れている。
「このような新しいプラットフォームについて、私たちは常に既存クリエイターに『拡大のチャンス』と伝えている」と語るのはLTKの共同創業者兼社長のアンバー・ヴェンズ・ボックス(Amber Venz Box)だ。
「私たちも、誰がこの新しい場所で何かを作り出すのかを見ているところ。数年に一度しか訪れない新しいチャンスを生かす、新世代のクリエイターが登場するだろう」
インスタグラムの親会社メタ(Meta)は、スレッズを姉妹アプリのインスタグラムのように広告に適したものにしたいと考えている。WebメディアのAxiosによると、ローンチの1週間後、同社はすでにブランデッド・コンテンツ・ツールの導入を検討していたという。
ツールはまだ発表されていないが、だとしても、マーケティング担当者にはペイド・コンテンツのパフォーマンスを判断するための具体的な指標が必要だ。複数のインフルエンサー・マーケティングの専門家は、スレッズはまだあまりにも新しく、「いいね!」、リプライ、リポストといった初歩的な指標はあるものの、デモグラフィック、インプレッション、リーチ、投稿の保存数といった重要なデータが欠けているとInsiderに語った。
「マーケターとして、手元にデータが必要だ」と、The Influencer Marketing Factoryの共同創業者兼CEOのアレッサンドロ・ボグリアリ(Alessandro Bogliari)は述べた。
「データがなければ、何もできない」
クリエイターの報酬額の決定にも、しばらく時間がかかり、一部のクリエイターは損をすることになるだろう。
「クリエイターが投稿に対して受け取る対価のベンチマークがないため、今は西部開拓時代のような感じ」
そう語るのは、スタートアップCanopy for Creatorsの創業者アヨミ・サマラウィーラ(Ayomi Samaraweera)だ。
Insiderは、インフルエンサー・マーケティングの専門家、クリエイター、スタートアップ創業者など14人に話を聞き、スレッズのブランド・パートナーシップの初期段階の状況を探った。新たな活動場所でチャンスを得てリーチを拡大している人もいれば、データ収集のような問題やフィードを「広告のない状態」に保ちたいという思いから、スレッズに懐疑的な人もいる。
なお、メタにもコメントを求めているが、返答はない。
インフルエンサー・マーケティングのためのピカピカの新商品
Huluがアニメシリーズ『フューチュラマ(Futurama)』の宣伝のために、ローズとタイアップして、スポンサード・ポストを行った際には良い指標はなかったが、「イノベーションと話題性」で成功を計測したと、Huluのソーシャルメディア&インフルエンサー・パートナーシップ担当バイスプレジデント、ブリタニー・メシズ(Brittany Mehciz)は声明で述べた。
「あなたはフューチュラマのどのキャラクターですか?」と問いかけたスポンサード・ポストは760以上の「いいね!」と140以上のリプライを集めた。ローズは、プロモーションの成功を測定するために、投稿のエンゲージメントに注目している。
「私のオーガニックな投稿と比べて、『いいね!』数はどれくらいなのか? さらに重要なことは、このようなQ&Aベースの特定のコンテンツの場合は、リプライはどれくらいかだ」
そもそも、スレッズのスポンサーシップはスレッズに限られた、独占的なものではないようで、ブランドはペイド・ポストについて話し合う際、クリエイターに他のソーシャルメディア・プラットフォームへの投稿を求めるだろう。例えば、ローズやブスケットの契約にはインスタグラムへの投稿も含まれていた。
多くのインフルエンサー・マーケティングの専門家は、インスタグラムとスレッズの直接的な関係に多くの可能性を見ている。
インフルエンサー・マーケティング・エージェンシーBillion Dollar Boyの共同創業者でヨーロッパCEOのトーマス・ウォルターズ(Thomas Walters)は次のように述べる。
「プラットフォーム間の共有性は非常に魅力的。このように密接に関連するアプリ間で展開されるプログラムを集約したいという要求は当然のこと」
スポンサードポスト以外にも、アフィリエイトマーケティングでの活用も拡大している。例えば、以下の画像はAmazon Prime Dayでの事例だ。
Amazon Prime Dayの期間中、スレッズに投稿されたAmazonのリンク。
Screengrab/Threads
スレッズのローンチから1週間後に行われた毎年恒例のAmazon Prime Dayで、クリエイターのアジャイ・グヨット(Ajai Guyot)はセール中のカーテンのアフィリエイトリンクを投稿。インスタグラムのストーリーでリンクを共有したり、プロフィールのリンクに誘導することよりもはるかにシームレスだったと述べた。
「今のところ、ストーリーにリンクを置いたときよりも、クリックは多い」
スレッズはまた、ブランドにとってはツイッター(Twitter)の魅力的な代替手段でもある。ツイッターの一部の過激で、偏向的なコンテンツに悩まされてきた広告主は、スレッズにメリットを見出すかもしれない。
イーロン・マスクがツイッターを買収した後、ブランドは安全性をさらに懸念するようになったとInfluentialの創業者兼CEO、ライアン・デタート(Ryan Detert)は語った。
オンラインでのプレゼンスと事業の大部分をツイッター上で築いてきた一部のブランドとユーザーは、撤退、あるいはツイッターを使い続けるかどうかに頭を悩ませている。ソーシャルメディア・コンサルタントのマット・ナヴァラ(Matt Navarra)もそのひとりで、長年ツイッターをビジネスのメインプラットフォームとして利用してきた。
「ツイッターで起きていること、そしてイーロン・マスクが決断したことが理由で今、ツイッターに代わる真の代替手段を手に入れて、ツイッターから逃げ出したいと考えている人は数多い。私もそのうちのひとり」
メタにはモデレーション(不適切なコンテンツの削除)に問題があるものの、インスタグラムは広告主にとって最重要メディアになっており、スレッズはまもなく、スポンサードコンテンツの運営を開始するだろう。
広告を出すか出さないか
多くのブランドがスレッズを自社のマーケティングプランに取り入れようと積極的に動いているが、一部のクリエイターは全面的な参入に躊躇している。
なかには、ブランドやクリエイターがスポンサードコンテンツのパフォーマンスをチェックできるよう、メタがスレッズにエンゲージメント分析をまもなく導入することを期待して動向を注意深く見ている人もいる。
ライフスタイルクリエイターのスーラジ・サクセナ(Sooraj Saxena)は、自分のツールとして加える前に、スレッズが「少し成熟する」ことを待っていると語った。
「始める前に、もっと分析機能が欲しい」
また、スレッズのユーザーデータの収集方法について懸念を示す人もいる。匿名を希望したある動画クリエイターは、スレッズがどのように情報を保存し、カメラやマイクにアクセスするのかなどを懸念していると述べた。
「すでに十分な数のアプリでモニターされている。これ以上、増やしたいとは思わない」
スレッズは7月5日にローンチした。
Screengrab/Google Play/Instagram; Insider/Sydney Bradley
一部のクリエイターは、スレッズをインフルエンサー・マーケティングから解放されるべきクリーンな場所と考えている。
「スレッズをマネタイズする予定はない。絶対に。実際、そんな姿は見たくない」とファッション&ライフスタイル・クリエイターのタリン・ヒックス(Taryn Hicks)はInsiderに語った。
「クリエイターとして、だがスレッズを楽しんでいるひとりとして、プラットフォームをマネタイズし、広告を入れ始めると、アプリは楽しさを失い始め、親友とのチャットのような雰囲気を失ってしまうと考えている。私は親友とのグループでのやり取りで広告を見たくない」
旅行クリエイターのジェシカ・ウフオマ(Jessica Ufuoma)のように、こうした理由でブランドからのスポンサードコンテンツの依頼を断っているクリエイターもいる。
「スレッズはまだ始まったばかり、まずは慎重にアプローチしている。このタイミングで報酬を受けたコラボを取り入れることは、正しい判断ではないかもしれない」
ここで見てきた理由や他の理由などから、スレッズが当初の勢いを維持したければ、ハッシュタグ、検索機能の改善、トレンド・ディスカバリーなどの新機能を早急にローンチする必要があるだろう。利用者が減少すれば、ブランドにとってスレッズでのマーケティングにお金を費やす価値はなくなってしまう。