投資信託とは? 投資を始める前に知っておくべきこと

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投資信託は、専門家による積極的な運用で、投資家にシンプルさと安心感を提供する。

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  • 投資信託とは、投資家から資金を集めて証券を購入する投資商品のポートフォリオのことだ。
  • 大部分の投資信託は、市場を上回る運用成績を上げることを目指してプロが運用する。
  • 投資信託はプロによる運用と分散を提供することにより、ポートフォリオに付加価値を提供する。

投資信託は投資商品の一種で、株式、債券またはその他証券を購入するために多くの投資家から資金を集める。運用会社に対して相互に資金を拠出した投資家が、投資信託のポートフォリオとそれが生み出す損益の部分所有者になる。

投資信託の仕組みや留意点、どのように投資を始めるかなど、投資信託について知っておくべきことを説明しよう。

投資信託の仕組み

投資信託は通常、運用収益の最大化と損失の最小化を目指して、証券の売買を行うファンドマネージャーが資産を運用する。投資信託の購入により、投資家はファンドとその資産、つまり投資ポートフォリオ全体の部分所有権を買うことになる。

ここが個別株の購入と違う点だ。個別株投資では、投資家はある企業の部分所有権を直接購入し、(ファイナンシャルプランナーを雇わない限り)その後の行動は自分で管理する。

投資信託の価格は、ポートフォリオ内の全証券を考慮した純資産価額(Net Asset Value:NAV)によって決定される。そのNAVを発行口数で割ると基準価額(Net Asset Value Per Share)が導き出される。

投資信託のポートフォリオは、日中に価格が変動する数多くの証券で構成されるため、そのNAVは市場取引が終わった後に計算される。そのため投資信託は引け後に1日1回しか取引できない。

例:投資信託に2000ドル(約28万円)投資したいとしよう。このファンドの基準価額が20ドルの場合、手数料を考えなければ100口を購入できる(20ドル×100口=2000ドル)。ファンドマネージャーは、この2000ドルに他の投資家からの資金を加え、市場を上回る運用成績を目指して投資する。

投資信託のコスト

投資信託には、アクティブ運用のための手数料が設定されており、これが利益の総額を圧迫していることに注意する必要がある。投資信託は、手数料を大きく2つのカテゴリーに分類できる。

投資家が間接的に負担するコスト:投資家が間接的に負担するコストとしては、投資信託の信託財産にかかる手数料が挙げられる。これには、運用会社に払う信託報酬や、ファンドに組み入れられる株式などを売買する際に発生する売買委託手数料などが含まれ、全体として経費率として表示される。経費率は比較的低いものの、特に長い目で見ると、投資信託の運用成績に大きな影響を与える可能性がある。

投資家が直接的に負担するコスト:また、投資信託の売買にかかる手数料など、投資家が直接負担する費用もある。大半の投資信託には「ロード」と呼ばれる定額の販売手数料や、投資信託の購入や解約の際の手数料とは別に徴収される「信託財産留保額」が課せられる(ただし販売手数料のかからない「ノーロード」投信もある)。 投資信託を購入する場合、コストは重要な検討事項だ。投資信託の目論見書には、すべての関連費用が詳細に記載されている。

投資信託からの収益

投資信託からの収益は以下の通りである。

分配金の受け取り:株式と同様に、投資信託は投資家に定期的に分配金を支払うことがある。投資家は分配金を現金で受け取るか、再投資するかを選択できる。

キャピタルゲイン(値上がり益):投資信託の中で保有する証券が値上がりし、それを売却すると、キャピタルゲイン(値上がり益)が発生する。この利益は、投資信託の投資家に毎年還元される。

NAV: 投資信託の価値が上昇すると、投資口の価格も上昇する。投資家は投資信託を売却することで利益を得られる。

ヒント:NAVを見る際には、あるファンドの1日の価格を他のファンドと比較するのではなく、時間の経過とともにそのファンドの価格がどう推移するかを確認すると良い。

投資信託は良い投資商品か?

「投資信託は、投資家に日々分散投資を提供する簡単で確立された方法だ」とチャールズ・シュワブ・インベストメント・アドバイザリー(Charles Schwab Investment Advisory)のヴァイスプレジデントで、マネージャー・リサーチ部門の統括者であるマイケル・イアキーニ氏は言う。1920年代から投資信託は実績があり、投資家にメリットをもたらしてきた定評ある商品なのだ。

投資信託の歴史は数十年にも及ぶが、投資家はその利点をますます理解するようになってきている。2021年度米国投資信託協会(ICI)の調査によると、投資信託を所有する米国家計の割合は、1980年のわずか5.7%から2020年には45.7%に上昇した。

投資信託に投資をしようと思うなら、必ずコストはチェックしよう。というのも、アクティブファンドは、経費率や手数料が高く利益に食い込みかねないからだ。投資初心者は、高いコストを払わずに収益を獲得するために、アクティブファンドよりもインデックスファンドを選択した方がよいだろう。

投資信託の長所と短所

投資信託を購入する前に、自分の投資スタイルや投資目標に合っているかどうか判断できるよう、その長所と短所を確認しておこう。

長所
  • シンプルで、プロが運用する安心感がある
  • 通常、少額から投資可能
  • 1つの投資信託の中でさまざまな資産クラスや業種を保有するため、ポートフォリオに分散効果を提供する
  • 株価が変わると投資に必要な金額が変わる株式と異なり、一定金額で投資可能

短所

  • プロによる運用報酬が高くつく可能性がある
  • 投資信託は米連邦預金保険公社(FDIC)の保険対象外のため、金融機関の破綻時に損失を被るリスクがある(日本でも投資信託は預金保険機構の保護対象外)
  • 成功している投資信託が大きくなりすぎると、希薄化によって持ち株の価値が下がる可能性がある
  • ファンドマネージャーの投資判断に影響を与えられないため、課税所得を増やす税制上の影響を引き起こす可能性がある
  • 投資信託は引け後にしか取引できないので、市場動向に即座に対応できない

投資信託の種類

投資信託はどれも同じではない。投資信託は投資先の証券や、目指す投資目標などによって分類される。主な7つの種類を順番に見ていこう。

1. 株式ファンド

株式ファンドは主に株式に投資を行い、企業規模や時価総額別に分類されることが多い。株式ファンドは、グロースファンド、バリューファンド、混合ファンドに分けることができる。グロースファンドは市場全体を上回る見込みのある企業の株式を保有する一方、バリューファンドは割安に見える株式を主に組み入れる。混合ファンドはグロース株とバリュー株両方で構成される。2. 公社債ファンド

公社債ファンドは投資家から集めたお金で、短期から長期までの債券を主に購入する。公社債ファンドの中には、国債、社債、住宅ローン担保証券などさまざまな証券を組み入れるものがある一方、債券市場の特定部分に特化したものもある。

公社債ファンドは、各種債券を個別に買わなくても即座に分散効果を得ることができる。また公社債ファンドの多くは毎月分配型なので、投資家は再投資が可能だ。

3. マネーマネジメントファンド(MMF)

マネーマネジメントファンド(MMF)は、信用リスクの低い短期の債券を中心に運用される。米国ではマネーマーケットファンドと言う。こうした投資信託の目的は、流動性を提供し、安定した価格を維持し、証券から得られる定期的な収益を投資家に分配することである。

米国のマネーマーケットファンド(MMF)は、保有証券によってガバメントMMF(国債で運用)、プライムMMF(CPなどでも運用)、非課税MMFに分類される。マネーマーケットファンドで投資することが多い証券は、米国短期証券、連邦機関証券、譲渡性預金証書(CD)、コマーシャルペーパー(CP)および地方自治体債務である。

4. バランス型ファンド

バランス型ファンドは債券と株式どちらにも投資をするため、安定収益と投資の成長という両者の良いところを享受できる。アセットアロケーションファンドとしても知られるこうした投資信託は、通常、当初定めた資産構成を遵守する。資産配分が変わる場合には、自動的にリバランスをして当初の資産配分に戻す。

5. インデックスファンド

インデックスファンドは、S&P500種株価指数やダウ工業株30種平均など特定の指数のパフォーマンスに連動するよう設計された投資信託である。インデックスファンドは、対象とする指数のパフォーマンスに合致するよう構築されているため、パッシブ運用の投資商品である。つまりファンドマネージャーの調査もさほど必要ではなく、取引回数も少ないため、手数料や経費は低くなる。

インデックスファンドは投資信託の形式もあるが、上場投資信託(ETF)の場合もあることは覚えておきたい。インデックスファンドはリスクが低く、メンテナンスが不要な低コスト投資手法であり、時間をかけて安定的なリターンを上げられるため、特に投資家に好まれている。

6. 専門ファンド

専門ファンドまたはセクターファンドは、不動産、テクノロジーまたはヘルスケアといった特定の業種や市場セクター内の証券に特化して投資する。専門ファンドの例としては、不動産投資信託(REIT)やその他不動産関連投資商品に投資する不動産関連の投資信託が挙げられる。専門ファンドはヘルスケアやテクノロジーといった特定のセクターに注力するため分散されていないので、他の種類のファンドや資産と組み合わせると良いだろう。

7. ターゲットデートファンド

ターゲットデートファンドは、特定の目標日を念頭に運用される。これらファンドは時間とともに自動的にポートフォリオ内で資産構成をリバランスし、目標日が近づくにつれてよりリスク回避的な運用に移行していく。退職日を目標日に設定し、ファンドを自分の状況に合わせて調整できるため、ターゲットデートファンドは退職貯蓄として人気がある。

投資信託を購入するにはどうすればいいか?

個人型確定拠出年金口座を持っているなら、すでに投資信託に投資をしている可能性がある。だが、それ以外で投資信託を購入したいなら、口座を持っているオンライン証券会社を通じて売買できる。

また、バンガードやフィデリティといった投資信託を設定している運用会社から直接購入することも可能だが、その場合買える商品の選択肢が限られる。投資商品についてさらに助言が必要なら、ファイナンシャルアドバイザーや証券会社に相談することも考えてみよう。

投資を開始するに当たり、運用会社や証券会社によってそれぞれ具体的な最低投資金額が異なるかもしれない。イアキーニ氏によると、一般的に投資信託の購入に多額の資産は必要ない。通常最低100ドル(約1万4000円)から購入可能だ。投資信託を選んだら、投資対象の資産クラス、経費率、投資目的、インカムなのかグロースなのか、あるいは意図的に保守的な運用をしようとしているのか、運用会社はどこかを確認しよう。

選択肢を絞り込むためには自問すると良い。資産配分のリバランスをどのくらい自分でやる気があるか、貯蓄の目的は何か、何を重視しているのか、だ。例えば、退職後の貯蓄であれば、ターゲットデートファンドが選択肢に入るだろう。あるいは、社会的意識の高い企業に投資をするESG(環境・社会・ガバナンス)ファンドを選ぶかもしれない。答えによって、どの投資信託を購入するべきかがわかるはずだ。

※本記事は取材対象者の知識と経験に基づいて投資の選定ポイントをまとめたものですが、事例として取り上げたいかなる金融商品の売買をも勧めるものではありません。本記事に記載した情報や意見によって読者に発生した損害や損失については、筆者、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。

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