日本企業のデータ担当役員「勘頼み」「AI活用は半数」「社員教育に消極的」、IBM世界調査で判明

日本企業の半数がAIを活用できておらず、データ活用の費用対効果にシビアでなく、組織のデータリテラシーを上げるため外部人材の獲得に必死になる一方で社員の教育には関心が低い……こんな衝撃的とも言える調査結果が公表された。

調査したのはIBMだ。IBMはレポートの中で企業における「CDO」、Chief Data Officer(最高データ責任者)の重要性を訴えている。世界平均と日本平均の違い、エリートCDOと平凡CDOの違いをレポートを通じて見ていきたい。

注目の役職「CDO」、どんな経歴?

IBM

shutterstock / Poetra.RH

対象になったのは世界30カ国以上、29業種のCDO3000人で、日本からは180人が参加した。

調査の結果、他のCDOに比べてデータ戦略や管理などのコストを抑えながら、同等かそれ以上に年間収益を伸ばすことに成功している「エリート・グループ」が全体の8%存在したという。

エリートグループのCDOにはデータアナリティクスの経歴を持つ人が多かった。

また女性のCDOも増えており、調査回答者の約半数にあたる46%が女性だった。

日本では11%がエリートCDOに該当した。

以下、日本の平均的なCDOとエリートCDOの違いをみていこう。

ROIと従業員教育への意識低い日本

IBM、CDO、DX

組織がデータ・リテラシーを向上させるために 行っている主要アクション。青がエリートグループ、紫が日本の平均。

提供:日本IBM

両者で大きく異なっていたのは、「データROI(投下資本利益率)の向上が職責に含まれているか」どうかだ。エリートグループでは7割がデータROI向上に責任を持っているのに対し、日本はわずか3割にとどまっていた。

これについてIBMは「ROIを事前予測で明確にしないデータ投資は投資とは呼べない。勘に頼る賭けと同じだ」と警鐘を鳴らす。

DXやデータ活用において組織全体のデータリテラシーが重要なのは言うまでもないが、その向上のための手法にも違いが出た。

日本のCDOが「社外の有能な人材獲得」に最も注力していたのに対し(76%)、エリートCDOは「研修を拡充する」(85%)「労働力分析を導入する」(83%)「従業員のリスキリングを行う」(77%)など、社内体制を見直していた。

特に従業員のリスキリングを実施した日本のCDOは52%と世界平均の62%を下回っており、社員の学び直しや人的資本経営についての意識の低さが露呈した形だ。

優劣分けるAIの活用、日本は半数

IBM、CDO、DX

組織のデータ活用において、どの程度AIを利用しているか。青がエリートグループ、紫が日本の平均。

提供:日本IBM

また、AIの活用でも遅れをとっていた。データを価値創造につなげるためにAIと機械学習を活用しているCDOの割合は、エリートグループで88%なのに対し、日本は66%だった。

エリートグループのCDOは他のCDOよりAIを活用している傾向があり、AIの活用こそが彼らの優位性を高めているとIBMは見ている。

たとえば、「データにAIを活用することで意思決定の迅速化や質の向上をはかっている」「意思決定の自動化にAIを利用している」エリートCDOはそれぞれ75%、64%だったのに対し、日本のCDOは54%、46%しかいなかった。

日本IBMは26日に本調査について開いた説明会で、「IBMはさまざまな会社のデジタルトランスフォーメーション(DX)のコンサルティングをしてきた。これまではデジタル化に関するものが多かったが、今後、日本企業はDXのX側、AIを活用したトランスフォーメーションにも挑戦していくべきだ」と語った。

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