オイシックスは保育園給食事業「すくすくOisix」を本格展開する。BtoBサブスク事業本部長の浜崎真一執行役員(左)と同事業本部施設食材流通事業部長の清水崇司さんが新戦略を発表した。
撮影:土屋咲花
食品のサブスクリプションサービスを手掛けるオイシックス・ラ・大地が、保育園や幼稚園の給食事業に本格参入する。業務用ミールキットや食育キットを提供し、調理時間や献立を考える時間を削減する。2027年までに現在の約4倍となる3000施設へ導入し、売上は100億円を目指す。
調理時間を3割削減
給食用ミールキットの一例。味付けは園側で調整できるよう、あえて専用のタレなどは提供しないという。
撮影:土屋咲花
「栄養士の方は栄養相談であったり、アレルギーの対応であったり、子どもたちの成長に即した正しい栄養バランスが取れた給食を提供することが仕事です。ただ、残念ながら、1日の労働時間の多くを調理に費やし、キャリアのイメージやモチベーションに対するギャップが生まれやすい現状があります。
実は栄養士の働き方によって、子どもたちや保護者などさまざまな関係者の方たちがネガティブな影響を受けているというのが、我々が見ている絵になります。保育園における栄養士の働き方を大きな社会問題として捉え、さまざまなノウハウやアセットを使って解決していきたい」
BtoBサブスク事業本部長の浜崎真一執行役員※は、オイシックスが保育園給食事業に本格参入する理由をこう述べた。 ※浜崎真一執行役員の「浜」は、さんずいにつくりがまゆ(眉)に似た旧字体の浜が正式表記
既に提供している給食事業「すくすくOisix」を刷新し、オイシックス専属の管理栄養士が考えた献立をもとにしたミールキットを本格販売する。2022年10月には、同事業を担当するBtoBサブスク事業本部を立ち上げた。
刷新したミールキットではカット済み野菜の割合を60%から80%に増やした。
ミールキットはカット処理が施されている分、食材費は増える。ただ、調理時間の短縮などによって人件費を抑えられるため、人件費と食材費を合わせた給食運営のトータルコストの削減につながるという。同社によると、調理時間は約3割、コストは18%削減可能という。
先行導入したある認定こども園では、それまで外部委託していた給食運営をオイシックスのミールキットを利用した自園調理に切り替えたところ、運営人員を5人から4人に削減することができ、給食運営費の削減につながった。
政府の調査などによると、保育園で提供する給食は8割以上が自園調理だ。園の栄養士は献立の作成や食材の買い出し、調理に加えて事務作業を少人数や1人で担うことが多く、負担が大きい。
「労働集約型のビジネスモデルで、人がいないとなかなかサービスを提供できないのが給食事業です。そこに対して、テクノロジーを活用して生産性向上を図ることがあまり進んでいないのがこの業界の大きな課題です」(浜崎執行役員)
食育プログラムもアップデートし、給食と連動する形で提供する。アレルギーや離乳食への対応も進める方針だ。
将来的には病院や高齢者施設などにも給食事業を拡大する。2022年に業務提携したシダックスとも協業し、提供エリアを拡大していくという。
ミールキット、園側には抵抗も?
アレルギー対応も進める。8大アレルゲン不使用の「米粉パウンドケーキ」は、8月から提供する。
撮影:土屋咲花
オイシックスは2015年※から、保育園向けに食材の卸売事業を始めた。2023年7月中旬時点で762施設に導入し、約14億円を売り上げている。
※当時、2018年に経営統合した、らでぃっしゅぼーやで展開。
ただ、ミールキットを利用している園は現状で数十にとどまり、その他の施設は食材販売サービスを利用している。今後はミールキットの導入数拡大を進めていくという。
既にミールキットを利用している園からは評価を得る一方で、園の栄養士ではなくオイシックス側が考えた献立であることに対する抵抗感や、給食全体のコスト削減にはつながるものの、食材単体では高価であることから導入をためらう園もあり、メリットを理解してもらうことが課題だとしている。