電通のグループ会社「電通デジタル」はDX分野での事業拡大を目指している。
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国内外の大手コンサルティングファームが群雄割拠するDX分野で、電通デジタルが競争力強化に本腰を入れている。
電通デジタルは、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が日本で注目され始めた2016年に創業。以来、年平均成長率は22.4%、2022年度の売上総利益は401億円となった。
社員数は当初の約700人から2500人に拡大。2030年までに5000人に倍増し、得意のクリエイティビティを生かしてさらなる事業拡大を目指す。
なぜ「総合デジタルファーム」に変えたのか
電通デジタル社長の瀧本恒氏。
撮影:湯田陽子
「今年の3月までは(自社を)『デジタルマーケティング会社』と呼んでいたが、4月からは新たに、クライアント企業とともに社会・経済の変革と成長にコミットする『総合デジタルファーム』というポジションで展開を始めた」
電通デジタルが7月26日に開いた事業説明会で、社長の瀧本恒氏はこう語った。
とはいえ、同社は以前からDXコンサルを手掛けてきた。
今年からあえて「総合デジタルファーム」と名乗ることにしたのはなぜなのか。
それは「広告の電通」というイメージが強すぎたためだ。コロナ禍で生活者のマインドが変化し、企業が新たな価値を生み出すことが急務となっているいま、事業変革をサポートする“伴走役”としての側面を前面に打ち出していくことにした。
広告を連想させる「デジタルマーケティング」中心の事業展開というイメージからの脱却を狙う。
DXにおける電通デジタルのカバー領域。
提供:電通デジタル
強みは「クリエイティビティ」「人を動かす力」
電通デジタルのDXコンサル事業の概要。既存事業と新規事業の企画から実装、人材育成まで広範囲にわたる。
提供:電通デジタル
DXを含めた企業コンサルの需要は増加している。
IDC Japanの市場予測によると、2021年の国内のビジネスコンサルの市場規模は5724億円で、前年に比べ11.4%増加。特にDX支援需要が追い風となっている。
一方で、アクセンチュアやデロイトトーマツコンサルティングなどの外資系や、野村総合研究所などの日系コンサルも含め、すでに激しい企業競争も起きている。
そうしたDX分野で、電通デジタルにどんな強みがあるのか。
瀧本氏は、マーケティング領域ではすでに圧倒的な強さがあるとしたうえで、次のように話す。
「事業創造、価値創造といった面においては、世の中に伝わるクリエイティビティが必要。ただ、クリエイターの育成やクリエイターを大切にする文化といったものまで含めたクリエイティビティはそう簡単に真似できない。そこは我々に一定の競争力があると思っている」(瀧本氏)
トランスフォーメーション領域(DXコンサルティング)担当執行役員の安田裕美子氏。
撮影:湯田陽子
またDXコンサルティングを手掛けるトランスフォーメーション領域(部門)担当の執行役員、安田裕美子氏はこう話す。
「一つは、人を動かすという側面。電通グループはこれまで、社会的なイベントや新たなカルチャーをつくるといったプロジェクトを数多く手掛けてきた。人を巻き込んで動かしていく実践力には期待していただいていると思う」(安田氏)
ただし、社会を動かすという意味では、企業単体でできることには限りがある。
「企業を連携させていくことも今後非常に大事になってくる。電通はこれまでも、企業が手と手をつないで何かを変えていけるような枠組みをつくる支援をしてきた。その強みを生かせる」(安田氏)
そうした事業展開を支える人材として、コンサル、SIer(システムインテグレーター)、広告会社、事業会社、UX・クリエイティブなど、さまざまな分野からの中途採用を積極的に実施。トランスフォーメーション領域の社員は現在約300人いるが、その数は日々増え続けているという。
今後は、テクノロジーを使って生活者を巻き込んだ社会課題解決や持続可能な社会を目指す「グリーン×テック」サービスのほか、AI関連事業も本格展開していく考えだ。