自民党内でAI利用を推進するプロジェクトチームの会合が開かれ、マイクロソフト、アマゾン(AWS)の担当者がそれぞれ参加した。
撮影:小林優多郎
自民党は7月27日、「AIの進化と実装に関するPT(プロジェクトチーム)」による会議を開催した。
議題は「AI の発展を支える為の計算資源確保の課題について」で、自民党の議員の他に、日本マイクロソフトやAWS(Amazon Web Services)も出席した。
この場で、改めて政府や規制産業で生成AIを積極活用していくとともに、その前提条件として欠かせない「日本に設置したデータセンターでLLMを実行する」ことをマイクロソフトが決定したことも公表された。
Azure OpenAI Serviceの処理が日本国内で完結
マイクロソフトが配布した資料。一般的に回答精度の高いGPT-4の利用を望む声は高いが、リソースやコストの考え方からGPT-3.5とGPT-4では優先度に差をつけて提供する。
撮影:小林優多郎
マイクロソフトは今回、同社のクラウドサービス「Azure OpenAI Service」の東日本リージョンでの展開開始も会議に合わせて発表した。
Azure OpenAI Serviceは、OpenAIの開発した大規模言語モデル(LLM)をAzureで実行するもので、利用者はAPIを通して命令や実行結果のやりとりができる。
従来のAzure OpenAI Serviceは欧米のリージョンで実行されていたが、「日本でのニーズの高まり」(日本マイクロソフト担当者)を機に、今回東日本リージョンでの実行が始まった。アメリカ以外の地域で同様の環境になるのはヨーロッパに続く2事例目で、アジア内では初となる。
プロジェクトチームの座長を務める平将明衆議院議員。
撮影:小林優多郎
国内のサーバーで実行することにより、政府が求める「国内での閉じた環境での利用」や「より低遅延な環境」が整う。
プロジェクトチームの座長を務める平将明衆議院議員は会議の冒頭挨拶で「政府がガチで使うとなると、データセンターは日本にないといけない」と、その重要性を述べた。
なお、東日本リージョンで展開されたOpenAIのLLMのバージョンはGPT-3.5とGPT-4になる。
ただしマイクロソフトによると、GPT-3.5は「当面の間は民間向けに試験的に利用可能」、GPT-4は「政府機関・規制産業など限られたユーザーに限定」して提供する方針だ。
マイクロソフトは8月中のISMAP取得、秋頃の政府提供を目指す
冒頭の挨拶を行った平将明衆議院議員(右)、平井卓也衆議院議員(中央)、塩崎彰久衆議院議員(左)。
撮影:小林優多郎
自民党のAIの進化と実装に関するPTについては、国内外のさまざまなAIに関する起業家や技術者が出席し、意見が交わされてきた。
4月には「OpenAI」のサム・アルトマン(Sam Altman)CEOが、5月にはAI翻訳「DeepL」のヤロスワフ・クテロフスキー(Jaroslaw Kutylowski)CEOが出席している。
会議後に開かれた記者レクリエーションに出席した平議員は、今回のPT内での議論とマイクロソフトからの発表の受け止めについて「重要な提案があった」とコメント。
平井卓也衆議院議員。
撮影:小林優多郎
一方で会議に参加した平井卓也衆議院議員は「日本も基盤モデルを自らやりたい人はたくさんいる。有力な選択肢が増えた」と述べた。
これは今回の会議内で、AzureでOpenAI以外のAIツール(MetaのLlamaやその他オープンソースのもの)が使えることに加え、AWSが7月3日に発表した日本企業向け総額600万ドル相当の「AWS LLM 開発支援プログラム」など、両社の各種提案を受けたことが背景にある。
なお、日本経済新聞は7月27日付で「デジタル庁がまず3億円を投じて1年間利用する方針」と報じているが、平議員は「採用するかは、政府の調達ルールに則って判断する」という言及に留めた。
記者ブリーフィングに参加した日本マイクロソフトの佐藤亮太常務は、Business Insider Japanの取材に対し「(政府でのクラウド利用の基本方針を満たすための)ISMAP※の取得が最速で8月中」と述べ、「そこからご提案して(政府による調達が決まれば)、早くて2023年秋頃にはご利用いただけるのではないか」と回答している。
※ISMAP:政府情報システムのためのセキュリティ評価制度のこと。Information system Security Management and Assessment Programの略で、通称、ISMAP(イスマップ)と呼ばれる。