ポンス・ブルックス彗星(左)と『スター・ウォーズ』に登場する宇宙船「ミレニアム・ファルコン」(右)。
Comet Chasers/Faulkes Telescope Project/Las Cumbres Observatory/Reuters/Insider
- 「ミレニアム・ファルコン」のような形をした彗星の爆発現象が観測された。
- この彗星は2024年に見られる日食の2カ月後に太陽に最接近する。
- つまり、天文愛好家にとっては、両方の天体イベントを同時期に見るチャンスに恵まれることになる。
天文学者は「一生に一度」だけ地球に接近するのを見ることができる彗星の爆発現象(アウトバースト)を観測した。この彗星はもうすぐ肉眼でも見られるかもしれない。
「ポンス・ブルックス」と呼ばれるこの彗星は、2023年7月20日、岩石と氷のプルームを突如噴き出すアウトバーストを起こし、通常の100倍の明るさになった。
その現象のために彗星とそれを取り巻く光が馬蹄形になり、天文学者はこれを映画『スター・ウォーズ』に登場する宇宙船「ミレニアム・ファルコン」になぞらえた。
この彗星は2024年、太陽に最接近し、同年6月2日に地球から約2億3000万キロメートルの地点を通過する。
この天体イベントをさらに盛り上げているのは、わずか2カ月前にあたる4月8日に、北米大陸で皆既日食も見られるということだ。
「日食の次に彗星が見られるなんて滅多にないこと(once-in-a-blue-moon)だ」と英国天文学協会のリチャード・マイルズ(Richard Miles)はInsiderに語っている。
彗星は肉眼で見ることもできるだろうが、マイルズは双眼鏡を使うことを勧めている。
「普通の彗星と同じように、この彗星もかなり明るくなるのは確実だ。日食中にアウトバーストが発生する可能性もある」
数十年来の謎
71年周期で太陽を周回するポンス・ブルックス彗星が、なぜここ数週間で急激に明るくなったのか、正確には分かっていない。
マイルズによると、地表に活発な氷火山があり、それが彗星の上空を明るくしている可能性があるという。
「彗星の内部に液体があるというのは斬新なアイデアではあるが、天文学者たちは何十年もの間、納得していなかった。だが、この彗星を見ていると『固体や気体だけでなく、内部に液体が存在するためにこのような異常な振る舞いをする』としか説明のしようがない」
このことは、彗星が水だけでなく、「生命の素」も地球にもたらしたという説を裏付けるものだとマイルズは付け加えた。
また、ウェールズのカーディフにあるラス・クンブレス天文台のエドワード・ゴメス(Edward Gomez)博士は「彗星はオールトの雲からやってくる。それは海王星と天王星の軌道よりもはるか彼方にある」とInsiderに語っている。
「そこには太陽系が形成されたときに余った物質がすべて存在している。惑星の材料となったあらゆる物質は、45億年の間に(物理学的プロセスや天候などを通じて)進化してきたが、オールトの雲は手つかずのままだ。そこから、惑星が形成されたときにどのような状況だったのか、そして惑星がどのように形成されたのかを知るためのすばらしいスナップショットを得ることができる」
ポンス・ブルックス彗星は1812年に初めて発見された。71年周期で太陽を周回している。
Comet Chasers/Faulkes Telescope Project/Las Cumbres Observatory
ポンス・ブルックス彗星のアウトバーストは、7月20日にハンガリー、ニーレジハーザにあるハルソナ天文台のエレク・タマス(Elek Tamás)によって観測された。その後、イギリスのカーディフにあるオープン大学のヘレン・アッシャー(Helen Usher)率いるコメット・チェイサーズ、教育・アウトリーチプロジェクトのメンバーによって、フォーク望遠鏡で撮影された。
メリーランド大学のキャリー・ホルト(Carrie Holt)がサイエンティフィック・アメリカンに語ったところによると、この彗星は100億キログラムの塵と氷を宇宙に放出したようだ。
彗星を肉眼で見るには2024年まで待たなければならないが、6インチ望遠鏡を北天の「りゅう座」に向ければ、今すぐにでも見ることができるかもしれない。
「今のところ、彗星は暗い場所で望遠鏡を使わないと見えないが、来年4月の日食の頃には、郊外の住宅地からでも双眼鏡で簡単に見つけられるほど明るくなるだろう」とゴメスは述べた。