Reuters
アマゾン(Amazon)は最近、「ハブへの復帰」方針を打ち出し、従業員にハブと呼ばれるそれぞれのチームに割り当てられたオフィスでの勤務を強制している。
Insiderが最初に報じたように、現在自分が住んでいる都市に近いオフィスに通っている従業員は、転勤するか、別チームへの異動を模索するか、留まるために特別な承認を得なければならなくなった。
この「従業員との対話」と記されたガイドラインから、アマゾンが、新しいオフィス復帰ポリシーに対し従業員からの反発に遭うのではないかと考えていることが読み取れる。また、このガイドラインには、今回の突然の方針変更をどのように社員に伝えるべきかも記されている。
「我々は必ずしも従業員が、管理職との最初の対話で決断することを期待しているわけではありません」と、この文書には書かれている。
アマゾンの広報担当者のブラッド・グラッサーはInsiderの取材にメールで回答し、「社員が少なくとも週3日一緒に働くようになってからは、かなりの熱気と協力関係、そしてネットワークが作られています」と述べた。
「我々は、より多くのチームを同じ場所に集める最善の方法を検討し続けています。また、従業員に影響を与える意思決定をする際には、従業員と直接コミュニケーションをとるようにしています」(グラッサー)
以下はガイドラインの要点だ。
- 自主退職とみなされた従業員には退職金は支給されない。
- 現在の場所に留まることを承認された従業員でも、週に3回はオフィスに出社しなければならない。これは、その従業員の所属するチームメンバーが他の都市にいる場合も適用される。
- アマゾンのマネジャーは、従業員とこうした込み入った話し合いをする際には「共感と前向きな意思」を持って臨むべきである。
今回の新方針の目的は、対面で働く機会を増やすことだ。アマゾンが2月に週3回の出勤ポリシーを導入した後、多くの従業員がその効果を疑問視した。特に、パンデミック(世界的なコロナの大流行)時にリモートで働く前提で雇用された社員やオフィスから遠い場所に移住した社員は混乱している。アマゾンは2022年、従業員をオフィスに強制的に戻すつもりはないが、「しばらくは実験的な試みを行い、そこから学び、調整を続ける」と述べていた。
3つの選択肢
社内のガイドラインによると、ハブの近くに転居したくない従業員には3つの選択肢がある。これらはアメリカに拠点を置く従業員に適用され、国外にいる従業員は現地の規則とスケジュールに従わなければならない。
1つ目の選択肢は、ディレクターと人事担当のパートナーから、特別な「共同ロケーションの例外」の承認を得ることだ。承認を受けた従業員でも、他のチームメイトがどこにいるかにかかわらず、週3回オフィスに出社する必要がある。
2つ目の選択肢は、自分のニーズに合った新しいチームを60日以内に探すということ。優秀な従業員であれば、新しいチームを探すために最長6カ月までの猶予が与えられる。
最後の選択肢は、退職金なしで会社を去ることである。文書にはこう書かれている。「これは自発的な退職とみなされる。転勤に興味がないのであれば、会社を辞めるという選択肢もある」
特別な例外
管理職向けのガイドラインによると、アマゾンは場合によっては最低週3回オフィスに出社しなくてもよい「リモートワーク特例」を従業員に与えるという。
顧客を訪問したり、アマゾンの他のオフィスに週3回以上行かなければならない仕事については、「フィールド・バイ・デザイン」という役割を作った。
また、カスタマーサービスや広告営業など、リモートでできる仕事には「リモート・バイ・デザイン」というステータスが与えられ、これに該当する従業員はオフィスにあまり出勤しなくてもよいという。
この3つの特例はすべて、アマゾンのSチーム(20数名のトップの幹部からなるグループ)の承認を必要とする。アマゾンには約30万人の従業員がいる。
準備を怠らない
従業員からの強い反発を見越してか、ガイドラインではアマゾンの管理職に対して、いくつかの伝え方とよいアプローチの例が示されている。
それによると、管理職は従業員との対話を「共感と積極的な意思をもってリードするべき」だという。また、従業員が「承認された場所にいない」場合、チームの戦略を説明し、彼ら彼女らにはどのような選択肢があるかを伝えられるように「準備」しておくべきだとしている。
また、管理職は「前もって言いたいことを練習しておく」「率直かつ明確に、そして共感を持って思いやりのある態度で臨むべきだ」と記されている。
従業員が法的措置をとると脅した場合、管理職は人事部と法務部に通知しなければならない。
「従業員は提案された転勤場所に驚くかもしれないので、必要な情報を繰り返し伝えなければならないと想定しておいてください」と、この文書はアドバイスしている。
管理職のための想定問答
ガイドラインには15の想定問答が付いている。
質問のひとつは、従業員がなぜ転勤が必要なのか尋ね続けた場合にどう答えるか、というものだ。回答例は次のように書かれている。
「私たちは、オフィスでチームをひとつにすることに取り組んでおり、あなたの継続的な成長と発展、そして私たちの顧客へのサービスをサポートするためには、オフィスにいることが最適だと感じています。この決定を軽く考えるべきではなく、転居を余儀なくされる従業員への影響を過小評価するべきではありません」
また、管理職に対しては、個々の従業員の状況を開示しないよう指示している。従業員から、なぜ他の従業員がリモート特例を認められるのかと聞かれた場合は、管理職は 「個人の状況は秘密事項です」と答えることとしている。