メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、創業以来の苦境を乗り切るため、自らに新たな「ペルソナ」を付与した。
Dianna "Mick" McDougall for Insider; Gerard Julien, Justin Sullivan, Alex Wong/ Getty Images
マーク・ザッカーバーグは最近、メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)にとって最新、かつ創業以来最も重要なプロダクトを披露した。
「新型モデルのマーク・ザッカーバーグ」がそれだ。
見事に6つに割れた腹直筋を誇り、ブラジリアン柔術の青帯を持つ「新ザック」は、イーロン・マスクとの「ケージマッチ」対決に応じることにした。メタの広報担当も「彼はふざけてなんかいない、本当に実現するかもしれない」と語っている。
39歳になったザッカーバーグは、全米で絶大な人気を誇る格闘技解説者ジョー・ローガンの『エクスペリエンス』などポッドキャスト番組に出演するたび、「無茶苦茶に殴られる」のと「試合場の内外で相手にプレッシャーをかける」のがたまらなく好きだと熱弁してきた。
ごく最近、彼は傘下のインスタグラム(Instagram)を通じてツイッター(Twitter)によく似たテキストベースのソーシャルアプリ「スレッズ(Threads)」を立ち上げた。
イーロン・マスクによる買収と急進的な社内改革を受けた混乱の最中、ツイッターが最も弱体化したタイミングを狙い澄ましてのローンチだった。
こうした容赦ない大胆なアクションの矛先を向けられたのは、メタの競合企業だけではない。
アップルのプライバシーポリシー変更により深刻なダメージを負い、2022年に創業以来初めての売上高減を記録するなど弱りきった自社に対しても、容赦ない人員整理の大鉈(なた)を振るった。この1年足らずの間に解雇対象となった従業員の数は2万人以上に及ぶ。
ザッカーバーグはいま、自分が決して傷つくことのない離れた場所からメタを支配している。
カリフォルニア州メンローパークの本社キャンパスにいる彼の姿を見慣れた経営幹部たちですら、いまやディスプレー越しに顔を見られるどうかといった状況だ。
ビデオ会議に参加するのは専ら、サンフランシスコやパロアルト、ハワイのカウアイ島など10箇所に所有する高級物件のどこかからで、いずれから顔を出すにせよ、意図的にプレーン背景を適用して居場所を特定できないようにしている。
時々本社のオフィスに姿を現す時も、両脇をセキュリティ要員が固めて出入りするのでよく見えないことが多い。
外部から見ていると、ザッカーバーグの変貌ぶりは漫画の世界のようだ。商売敵イーロン・マスクの尻をぶっ叩いてやろうと、公衆電話ボックスで筋肉隆々のスーパーマンに変身したクラーク・ケント、まさにそんな感じに見える。
この無駄を削ぎ落としたアルファ版「新ザック」はどこからやって来たのだろう。
学生寮の一室からデイリーアクティブユーザー(DAU)22億人超のソーシャルメディア、フェイスブック(Facebook)を立ち上げた生意気な天才エンジニアとしての彼(「ハーバード・ザック」と呼ぼう)はどこへ?
政治家からスポーツ選手、牧師、漁師、えん罪被害者まで、ありとあらゆる市井の人々の声に恭しい態度で耳を傾ける全米行脚を敢行した全能の大富豪としての彼(こちらは「シリコンバレー・ザック」と呼ぶ)はどこに行ってしまったのか?
こうしたザッカーバーグの「メタモルフォーゼ(変身)」は、どうやら表面的な取り繕いではないようだ。
彼は必要に迫られて「変身」した
長年ザッカーバーグの周辺にいた人物たちに取材すると、彼の新たなペルソナは、創業20年の歴史の中でも経験したことのない激動期を生き抜く必要に駆られて生まれたものと、誰もが口を揃える。
過去2年間、フェイスブックはティックトック(TikTok)にユーザーを奪われた。アップルのプライバシーポリシー変更は、圧倒的なシェアを誇ったフェイスブックの広告事業に深刻なダメージをもたらした。
2008年から同社の成長を支えてきたナンバー2で、ザッカーバーグにとっては保護者のような存在だったシェリル・サンドバーグ前最高執行責任者(COO)はすでに彼のもとを去った。
最高技術責任者(COO)を9年超務め、やはりザッカーバーグの指南役的存在だったマイク・シュローファーも新設された非常勤職のシニアフェローに転じた。
これまで一緒にスポットライトを浴びてきた彼ら彼女らのようなリーダーたちは姿を消し、ザッカーバーグ自身が表舞台に立たざるを得なくなり、彼はかつてない孤立の時を過ごしている。
ザッカーバーグが社名変更までして社運を賭けたメタバース事業(リアリティ・ラボ部門)は、累積損失額が第2四半期終了(6月末)時点で400億ドルを超え、いまや先行きの見通しがつかない。
米ウォール街の投資専門家たちが長いこと強気と評価してきたグロース株としてのフェイスブックの揺るぎないイメージは崩れ去った。社名変更してメタバース構想を打ち出した2021年秋からわずか1年余りで、同社の時価総額は実に7000億ドル(約98兆円)も失われた。
「彼は心底恐ろしくなったのです」
ザッカーバーグを長年知る人物はInsiderの取材にそう語った。
だからこそ、彼は創業以来、岐路に立たされるたびにやってきたことを今回もやった。すなわち、自分自身を解決すべきコーディングの問題になぞらえ、メタの存続に必要とされるタイプのリーダーの特徴に合致する新たなペルソナを入力したのだ。
今回は先述のようなシリコンバレーで愛されるタイプのリーダーではなく、ウォール街の眼鏡に適(かな)うようなリーダーをモデルにした。そのモデルとは、経営コンサルタントのアドバイスを受け入れ、全米を行脚する傾聴の旅よりレイオフ(一時解雇)を優先し、何よりも「効率」に価値を置く経営者だ。
これまでのハーバード・ザック、シリコンバレー・ザックに続くこの新しいペルソナを、「コンサル・ザック」と呼ぶことにしよう。
ザッカーバーグは1年前、先述のローガンのポッドキャスト番組で、メタを経営していると、毎朝「みぞおちにボディーブローを食らった」ような気分で目が覚める、とその心中を吐露した。
そして今、コンサル・ザックは反撃に打って出ようとしている。パンチがどこにヒットするか次第で、メタの将来のみならず、同社がその形成に大きな役割を果たすテクノロジーの世界のランドスケープも変わってくるだろう。
ある元幹部従業員はこう話す。
「彼は今、会社を死の淵から救わねばならない戦時下モードなのです」
「俺がCEOだぜ」
ザッカーバーグは長い間、自分は自分でしかないと発言してきた。ハーバード大学卒業から数年が過ぎた2009年、彼はこう語っている。
「仕事仲間や同僚に対して見せる自分のイメージと、それ以外の知人に見せる自分のイメージを切り分ける時代は、おそらくもうすぐ終わるでしょう。自分自身について2種類のアイデンティティを持つことは、不誠実さの見本なのです」
当時の彼はまだ「ハーバード・ザック」だった。
学生寮の自室を拠点に世界最大のソーシャルメディアプラットフォームを開設したフーディ姿の天才ハッカーは、不安と傲慢さを心の内に共存させた純粋なマニアだった。
22歳のザッカーバーグは、フェイスブックが「世界をもっとオープンな場所にする」と高らかに謳(うた)い、「若者はとにかく賢く、生き方がシンプルで、それゆえに大事なことだけに集中できる」と嘯(うそぶ)いた。名刺の肩書きは「I'm CEO, Bitch(俺がCEOだぜ)」だった。
彼がBusiness Insiderのインタビューで初めて語ったフェイスブックの非公式モットーは「Move fast and break things(素早く行動し破壊せよ)」だ。
生意気な少年のような仮面の下には、冷徹なビジネスマインドが潜んでいた。その無慈悲ぶりを示すエピソードとして最もよく知られるのは、共同創業者の一人であるエドゥアルド・サベリンを追放した際の、株式配分を使った理路整然とした手口の狡猾さだろう。
ただ、当時のハーバード・ザックはまだ一大学生であって、自分のイメージ通りに世界を作り変えようと、自分なりの方法を模索している最中だった。
その途上にあっても、彼は自らのリーダーとしてのペルソナにいくつかのマイナーアップデートを施した。
2009年、ザッカーバーグは毎日ネクタイを締めて出勤するようになった。(その前年に世界金融危機による景気後退が始まったことから)フェイスブックの全従業員に、同社が「深刻かつ重要な」局面にいることを示すのが目的だった。
そして、2012年にはフルアップグレードを遂げた「シリコンバレー・ザック」がデビューした。
同年5月18日、フェイスブックは新規株式公開(IPO)を果たした。その翌日、ザッカーバーグは長年の恋人プリシラ・チャンと結婚した。
株主と家族の両方の要求に応じるべく、彼は間もなく「億万長者と普通の人を掛け持ちする」落ち着きの悪いペルソナを採用した。
ある時には、自家製の牛肉ブリスケとリブの燻製にスウィートベイビーレイのバーベキューソースをかけて食べるのが大好きなダボスマン(世界経済フォーラムの年次総会に集う億万長者)。
またある時には、潜在的な競争相手を貪欲に買収する一方で、市井の人々を次々訪ねては四方山話に耳を傾け、お礼のメールを書く毎日に挑戦した。
2014年には、前出の社内モットー「Move fast and break things(素早く行動し破壊せよ)」を修正し、「Move fast with stable infrastructure(安定したインフラとともに素早く行動せよ)」に変更した。
以前のハーバード・ザックは、破壊することをクールだと考える子供にすぎなかった。しかし、シリコンバレー・ザックは、どんな犠牲を払ってでも守り抜かなくてはならないレガシーを抱えた夫になり、父親になったのだった。
少年のような心を持ち、さまざまなことを気に病みがちだった「ハーバード・ザック」。ただ、その心の内には冷徹なビジネスマインドが潜んでいた。
Dianna "Mick" McDougall for Insider; Paul Sakuma/AP
家族を愛し、市井の人々の生活ぶりや仕事ぶりに敬意を払うシリコンバレー・ザックの姿は、大統領選に出馬する気ではないかとの真剣な憶測を呼ぶことになった。
また、そうした誰からも好かれようという彼の振る舞いは、フェイスブックの問題への対応の遅れを生み、ニセ情報の流布、ケンブリッジ・アナリティカによるユーザー情報の不正取得、差別や暴力を煽(あお)る投稿の拡散が生み出したミャンマー・ロヒンギャ族への残虐行為、米連邦議会議事堂へ暴徒乱入など、何百万人もの人々に災いをもたらした。
シリコンバレー・ザックは公の場で謝罪する機会が多かったが、悔恨の情を示そうとする彼の努力はなかなか実を結ばなかった。
2018年4月に上院司法委員会でケンブリッジ・アナリティカ問題について証言した際も、彼はシーザーカット(前髪を下ろして揃えた短髪)にスーツとネクタイという真面目くさった出で立ちで臨んだものの、悔恨が半分、傲慢さが半分の印象を与えるのがやっとだった。
それでも、当時のザッカーバーグは新たなペルソナを必要としていなかった。2018年の夏から冬にかけてある程度の株価調整局面を経験したものの、基本的にフェイスブックはウォール街の支持を失わなかったからだ。
2012〜21年の10年間をかけて、フェイスブックやインスタグラムなどメタが運営する各種アプリの月間アクティブユーザー数(MAU)は合計で10億人から35億人にまで増え、時価総額は1000億ドル前後から1兆ドルの大台を超えるまでに膨れ上がった。
ハーバード・ザックからアップデートしたシリコンバレー・ザックは、その時点ではまだ成長に資するペルソナとして機能していたわけだ。
ところが間もなく、現実世界のあるソフトウェア・アップデートが、シリコンバレー・ザックを心底まで震えさせる日がやって来る。
2021年4月、フェイスブックが公式サイトで『一貫して我々のビジネスモデルを批判してきた』と名指しし、ザッカーバーグとは犬猿の仲とされてきたティム・クック率いるアップルは、メタのビジネスを永遠に変えることになるユーザー通知を送信した。
新たなソフトウェア・アップデート「iOS14.5」には、世界に約10億人いるiPhoneユーザーに対し、フェイスブックやインスタグラムのようなアプリによるトラッキングを受け入れるかどうか、事前に選択するよう求める変更が含まれていた。
※トラッキング……アップルは、アプリ経由で収集したユーザーやデバイスのデータを、「ターゲット広告や広告効果測定を目的として」他社のアプリやサイトなどから収集されたデータに「紐づける行為」や、データを「ブローカーに共有する行為」と定義する。
新規アプリやアップデートを提供する事業者は、アプリにおけるデータ収集方針に関する情報をプロダクトページに掲載した上で、アップルのプライバシーに関する新たなフレームワーク「アップ・トラッキング・トランスペアレンシー(App Tracking Transparency)」を経由して、ユーザーの許可を得なければならなくなった。
アップルは、ユーザーが「Ask App Not To Track(Appにトラッキングしないように要求)」というシンプルなテキストをタップするだけで、フェイスブックの巨大広告ビジネスに組み込まれずに済む仕組みを作り上げたのだった。
その時点で、ユーザーデータを使って精度の高いターゲティング配信を行う「Facebook広告」は、同社の売上高の98%を占めていた。
メタの元幹部従業員はInsiderの取材にこう語った。
「アップルが生み出した状況は、彼らが外向けに語るよりよっぽどひどいものでした。それはフェイスブック社内のあらゆる組織に波及し、蝕(むしば)んでいったのです」
アップルにとってはスイッチを一つオンにしただけ、設定を一つ変えただけの話だったが、フェイスブックにとってそれは存亡の危機を意味した。
フェイスブックは、従来のシリコンバレー・ザック的戦略、もしくはその延長上にある戦術で問題に対処しようとした。壁にぶち当たったら乗り越えろ、と。
元従業員の証言によれば、メタはフェイスブックのEコマース機能「Facebookショップ」の強化に急速に舵(かじ)を切った。
ユーザーがフェイスブックアプリ経由でたっぷり買い物をしてくれれば、アップルがプラグを引き抜いたせいで失われた(広告事業の鍵を握る)ユーザーデータを取り戻すことができるかもしれない、そう考えたわけだ。
具体的なテコ入れ策として、フェイスブックは認知向上と販売促進のためのイベント「コマースデー」も立ち上げたが、うまくいかなかった。前出の元従業員は酷評する。
「際立った悪手でした。うまくいっていないことは誰の目にも明らかでした」
1年も経たないうちに、同社はEコマース事業の強化がまったく奏功していないことを認めざるを得なかった。数字が全てを雄弁に物語っていたからだ。
同社は前年第4四半期(10〜12月)の決算を発表した2022年2月、アップルのプライバシーポリシー変更を受け、同年通期の広告事業売上高が前年比100億ドル減少するとの見通しを明らかにした。
シリコンバレー・ザックは、突如として過去に経験のない状況と対峙せざるを得なくなった。創業以来初となる売上高の減少は、彼がここまで築き上げてきた全てを破壊しかねない規模感で迫ってきた。
さらに悪いことに、シリコンバレー・ザックの対応からは、最悪の状況をひっくり返すだけの効果的な反撃手段が何も読み取れなかった。
しかし、メタに長年在籍するあるベテラン従業員によれば、ザッカーバーグがついに「目覚めた」のはその時だった。
「メタバース構想」はなぜ必要だったのか
ザッカーバーグは当初、覚醒を促す呼びかけになかなか耳を傾けようとはしなかった。何せ、ハーバード大学での事業立ち上げから連邦議会の召喚を受けて証言に立つ日まで、彼が見てきたのは右肩上がりの数字だけだったから。
初期からの投資家の一人はこう語る。
「彼には(大量のデータを差し出す)愚かなユーザーと伸び続ける売上高しか見えていませんでした。そしてそのいずれもが、彼の目の前から忽然と消えたのです」
シリコンバレー・ザックという機能不全を起こしつつあるペルソナにしがみついたまま、彼は新たなメタバース構想を売り込もうとメディアを通じた大々的なキャンペーンを展開した。
定義は曖昧(あいまい)なおかつ、まだ存在してもいない仮想空間について、ザッカーバーグは「2030年までには数千億ドルの売上高を稼ぎ出す存在になる」と豪語した。
彼の頭の中にあったのは、仮想現実(VR)ヘッドセット「メタクエスト(Meta Quest」がアップルのノート型PC「マックブック(MacBook)」に取って代わる世界の姿だった。
ザッカーバーグは会社の看板まですげ替えた。
世界数十億の人々がメタの創り出す仮想空間の中で働き、買い物し、交流するようになり、外から見るだけでは誰もがヘッドセットを装着した怠け者と大差なくなる時代が間もなくやって来る、そんな自らの確信を外向けに示すために社名を変更したのだ。
フェイスブックの名前から離れることには、短期的な実益もあった。
同社の元プロダクトマネージャーで内部告発者のフランシス・ホーゲンが、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に提供した大量の社内資料、いわゆる「フェイスブック・ペーパーズ」から世間の目を逸らすことだ。
当時のことを少し振り返っておくと、ホーゲンは当初匿名で社内資料を提供してWSJの調査報道に協力していたが、2021年10月に米CBSの報道番組「60ミニッツ」に出演して身元を明かし、内部告発に対するフェイスブックの説明は「虚偽」だと批判した。
ホーゲンは直後に米上院公聴会でも証言し、フェイスブックは一貫して「利用者の安全より自社の利益を優先してきた」と述べ、同社への規制強化を求めた。
社内資料には、同社が運営する画像共有アプリのインスタグラムが10代の女子のメンタルに悪影響を及ぼすとの自社調査結果や、2018年に実施したアルゴリズム変更によりヘイトや分断、二極化を促すコンテンツがニュースフィードに表示されやすくなり、拡散が加速する可能性を従業員が認識していた実態などが含まれていた。
メタへのリブランドの数週間後、社内ミーティングでの質疑応答の際に、ある従業員が「社名変更は果たして成功だったのか」と質問をしたことを、その後退社したベテラン従業員はよく覚えている。
回答したのは最高製品責任者(CPO)のクリス・コックスで、彼は「社名変更に関連したメディア報道が『フェイスブック・ペーパーズ』関連の倍以上に達した」ことを考えると、リブランドは成功だったと語ったという。
「社名変更した時点では、メディアに大きく扱ってもらえるというのは、ほとんど淡い夢のような話でした。実際、フェイスブック・ペーパーズはアメリカ国内では特にものすごい話題になっていたので、(それを上回るほど取り上げられたのは)本当にすごいことです」
社名変更を号砲に、シリコンバレー・ザックがメタバース構想に文字通り全力を傾けていく中で、企業規模も大きく膨れ上がっていった。2020年初頭に5万人弱だった同社の従業員数は、2022年半ばに9万人近くまで増えた。
ある元従業員によれば、ザッカーバーグと中間管理職の間にはもともと数段階の職位差しかなかったのに、それが少なくとも10段階に広がったという。「まさに肥大化という言葉がぴったりでした」(元従業員)。
そうなれば当然、中間管理職からその下の中間管理職へと迂遠な伝言ゲームが起きる。ところが、ザッカーバーグはそんな光景を見るのも嫌だった。にも関わらず、彼は肥大化にブレーキをかけるどころか、管理職をもっと採用するよう拍車を掛けた。
例えば、昇進を希望するシニアエンジニアは、昇進に見合うだけの規模のチームをマネジメントして実績を作る必要があった。言い換えれば、採用の実績を作れば作るほど、チームの人員を増やせば増やすほど、より大きな仕事を得られた。規模だけで全てが決まってしまうことも少なからずあった。
結果として、「何の脈絡も必要もなく図体だけ馬鹿でかいチームを運営する、昇進以外頭にない人たちの集まりになってしまいました」(別の元従業員)という。
シリコンバレー・ザックは、ユーザーデータの不正利用事件を受け連邦議会での証言を求められ、安全軽視・利益優先の企業体質を暴き出す内部告発を経験したが、会社そのものは成長を続けた。
2022年、メタの株価は1月初頭の331ドルから11月末の90ドルへと7割超の暴落を記録したものの、ザッカーバーグの態度に終始大きな変化はなかったと、ある現役従業員は語る。
彼は引き続きメタバース構想の実現に執念を燃やし、時折、それまで面識のなかった従業員に直接メールを送って、リアリティ・ラボのプロジェクト進捗を尋ねたりした。
シリコンバレー・ザックは、ユーザーデータの不正利用事件を受け連邦議会での証言を求められ、安全軽視・利益優先の企業体質を暴き出す内部告発を経験したが、会社そのものは成長を続けた。
Dianna "Mick" McDougall for Insider; Zach Gibson/Getty Images
ただ、ウォール街の反応は鈍かった。
社運を賭けたメタバース事業はその時点ですでに巨額の損失を計上し、売上高は2022年第2四半期(4〜6月)に上場後初めての減少を記録。そうした苦境の中で、ザッカーバーグはそれまで想像だにしなかったエンジニアの採用凍結に動かざるを得なくなった。
コロナ下の行動制限からの経済再開と軌を一にして物価上昇が加速し、その沈静化を目指して米連邦準備制度理事会(FRB)が急ピッチの利上げに動いたことで、株価下落や個人消費の減退による景気後退入りの懸念が高まり、投資家たちはメタバースのようなムーンショットにかまっている余裕はなくなったのだ。
投資家が新たに必要としたのは、安定経営と利益確保を責任持って成し遂げてくれる経営者だった。
しかし実際に起きたのは、投資家が期待したのとは逆のことだった。最も経験豊富なベテラン経営幹部たちは、大挙してメタを去っていった。
ハーバード・ザックには、クラスで最も賢いお坊ちゃんでしかなかった頃ですら、頭の切れる年上の取り巻きを常にそばに置いておく抜け目のなさがあった。
そんな取り巻きの筆頭が、グーグルのバイスプレジデントから2008年にフェイスブックの最高執行責任者(COO)に就任したシェリル・サンドバーグだった。
ザッカーバーグがプロダクトとエンジニアリングに専念する間、サンドバーグは14年間にわたってビジネスを仕切った。
「彼女は私を子どものように育ててくれたんです」と、かつて彼は語った。
しかし、ザッカーバーグがユーザー数の頭打ち(2021年第4四半期に創業以来初の減少を記録)や株価の暴落に対処できず、夢物語にうつつを抜かすうち、ビジネスにおける「育ての親」は、「子供」が自分の力で泳ぎ出すか、それとも泳げず沈んでいくのか、全てを本人にまかせる時がやって来たと判断した。
複数の関係者によれば、サンドバーグとザッカーバーグの関係は、パンデミックで物理的な距離が生まれたこともあって、近年ぎくしゃくしていたという。
新型コロナ感染拡大の第一波が押し寄せていた時期、メタの古参幹部たちはザッカーバーグが家族と一緒に隔離生活を送っていたハワイの邸宅を「詣でた」が、サンドバーグはそうしなかった。
ザッカーバーグCEO、サンドバーグCOOの経営体制下で一種の恒例行事として10年以上続いてきた、毎週金曜日のメンローパークでの数時間に及ぶ定例ミーティングも途絶えた。
サンドバーグに近い人物によれば、ザッカーバーグがまだ形にもなっていないテクノロジーに社運を賭ける決断をした時点で、彼女は去るべき時が来たことを悟ったのだという。同じ人物はInsiderの取材にこう語った。
「彼女はメタバース構想に巻き込まれたくないと考えていました。これで終わりだ、そう思ったのです」
2022年6月、メタはサンドバーグが同年秋に退社すると発表した(その後、9月に退社)。
時期を前後して、ザッカーバーグを取り囲むベテラン頭脳集団の連鎖的な離脱が続く。在籍13年超、最高技術責任者(CTO)を9年超務めたマイク・シュローファーが退任し、新設された非常勤職の「シニアフェロー」に就任した。
インスタグラムの最高執行責任者(COO)、フェイスブックのグローバルパートナーシップ担当バイスプレジデントを経て、2021年に同社初の最高事業責任者(CBO)に就任したマーニー・レヴィーンが、2023年夏にわずか2年でその職を退き、会社を離れた。在籍期間はシュローファーと同じく13年超に及んだ。
ある元ベテラン従業員はこう話してくれた。
「ザックは周囲の意見に耳を傾けないほど傲慢な人間ではありません。ただ、いつかの時点から、周囲のベテラン陣は彼と未来へのビジョンを共有できなくなり、ミゾが生まれ、そして去ったのかもしれません」
そのように経営幹部の退職が相次いだことで、メタのありとあらゆる責任と決定権が過去にないほどザッカーバーグに集中し、それによって彼はさらに孤立していった。
サンドバーグの後任COOに就任したハビエル・オリバンには、彼女のような社内外における存在感はない。
2022年8月の就任から約1年になろうとしているが、オリバンは公の場にほとんど姿を見せていない。決算説明会でもたった一度発言したきりで、質疑応答の際に周囲のスタッフに話しかけることすらほとんどしない。
いまやザッカーバーグに何もかもが委ねられており、社内で「スモールチーム」と呼ばれるごく少数の幹部グループが、彼の信頼する側近の全てと言える。
相次いで会社を去ったサンドバーグらベテラン幹部たちとは異なり、スモールチームのメンバーには他社での経営経験や実績を誇る人材がほとんどいない。
ある現役従業員はこう本音を漏らす。
「ザックに集まる情報のことを考えると……先が思いやられます」
また、ある元幹部従業員はこう断言する。
「いまの体制だと、ザックが社内外で何が起きているのかを把握することすら不可能だと思いますね」
急落する株価と相次いで離れていくベテラン幹部たち。そんな中でザッカーバーグはある人々に惹かれるようになっていく。ハーバード・ザックなら嘲(あざけ)り笑い、シリコンバレー・ザックなら目もくれないような存在だった。
彼ら彼女らこそが新たな、より無慈悲なザックの誕生に一役買った人物たち、すなわち経営コンサルタントだった。
「コンサル・ザック」へのアップデート
ザッカーバーグは表向きには、メタバースに投じた数十億ドルの資金にはそれに見合うだけの価値があったと、根拠を欠く軽薄極まりない自信を見せ続けていた。
しかし、内情に詳しい関係者の証言によれば、メタはその時期、コンサルティング大手ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)と密かに契約してコスト分析に当たらせていた。
この動きはメタの経営方針の変化にとどまる話ではなく、創業者CEOのマインドセットにまで変化が起きたことを示していた。
ベインのコンサルタントが(コスト分析業務に)正式着手して間もない2022年5月、メタは採用凍結の決定を社内に伝えた。
少なくとも同年7月までに、バイスプレジデント(アプリケーション基盤技術開発担当、エンジニアリング部門の責任者に相当)マハー・サバら複数の経営幹部が、コンサルタントの発言を随所に散りばめた社内メールをマネジャー宛てに送り、「パフォーマンスの劣後する者」や「勤務態度が怠惰な者」を特定するよう求めた。
また、同じくバイスプレジデント(人事担当)のロリ・ゴラーは、今後「より強度を高めた」業務遂行が必要とされる旨を強調したメールを従業員宛てに送っている。
そして、シリコンバレー・ザックの最新アップデート版となる「コンサル・ザック」が最初に姿をのぞかせたのは同年7月、2022年第2四半期(4〜6月)の決算説明会だった。
ザッカーバーグはこれまで、自社について無限の可能性以外を示唆したことはなかった。それがここに来て、従業員は「より少ないリソースでより多くの業務をこなす」必要があり、一部のチームは「縮小する」と宣言したのだ。
この思いつきとは違う、周到に用意した感じの計画は、以前のシリコンバレー・ザックとは対極をなすものだ。
ザッカーバーグが次なるビッグビジネスの核になると期待したメタバースの失敗は、新たなペルソナへのアップデートを促した。
Dianna "Mick" McDougall for Insider; Facebook
11月9日、ザッカーバーグはメタの従業員総数の13%にも相当する1万1000人をレイオフすると発表した。
その日は水曜日だった。必要な書類を用意し、実際にレイオフを行い、事後に説明会を開く時間を確保すべきというコンサルのアドバイスに従って周到に期日が選ばれた。そして、この時以降も同社が人員削減を実施する際は水曜日が割り当てられるようになった。
メタ従業員の多くはそれ以前からレイオフが行われる可能性を認識していて、来るべきその日に向けて覚悟を決めていたものの、1万人超という規模にはさすがに驚きを隠せなかったようだ。
ザッカーバーグはレイオフ発表の2日後、大規模なビデオ会議を2回開いた。一方は解雇を免れた全員が参加、もう一方には解雇された全員が参加した。
参加した複数の従業員によれば、いずれの回もザッカーバーグは従業員からの質問には回答せず、事前に全従業員向けに送ったメールの文面以外のことはほとんど口にしなかった。
レンズ越しの彼は申し訳なさげに、気落ちした表情で語り、見方によっては感極まっているようにも感じられた。それはシリコンバレー・ザックの最後の姿だった。
1万1000人という大規模レイオフに関して、従業員向けに説明を行ったザッカーバーグ。
CNBC Television YouTube Official Channel
最初のレイオフ実施から3カ月間、ザッカーバーグは脇目を振らずコスト削減に注力した。従業員の福利厚生を削減縮小し、要求するパフォーマンスのハードルを上げ、「管理職が管理職を管理する会社」はもういらないと従業員たちに語った。
年が明けて2月初旬に開いた2022年第4四半期(10〜12月)の決算説明会では、2023年を「効率化の年(the year of efficiency)」と宣言した。
元幹部従業員はこう説明した。
「従業員が辞めても、彼に動揺はありません。彼はメタに関して、本当に長期的なことしか考えていないんです」
コンサル・ザック全開というわけだ。
ザッカーバーグの新たなペルソナは、翌3月に1万人の追加レイオフを発表した際に、よりはっきりとその無慈悲で冷酷な表情を露(あら)わにした。
発表の数日後、彼は従業員総会で「収益の確保があって初めてイノベーションは可能になる」と繰り返し、かつての彼なら嫌気が差していたであろう「財務上の責務」とのマントラまで口にした。
その総会では、ある従業員が「半年足らずの間に2万人超が解雇されたいま、従業員はあなたの意思決定を信頼できると思うか」と質問もしくは詰問したが、ザッカーバーグは謝罪の言葉を口にする素振りすら見せなかった。
彼は確信に満ちた抑揚のない語り口で、従業員はメタが「前進しているかどうか」また「当社が達成する成果(業績)」のみで(CEOとしての)自分を評価すべきだと言い切った。
さらに彼は、ベインのコンサルタントをも赤面させるような、こんな言葉をつけ加えた。
「より効率的な経営はより良い業績をもたらし、それによって働きたくなる、投資したくなる魅力的な企業へと成長することで、長期的なビジョンを実現するためのリソースと自信が生まれてくるのです」
この回答は、ザッカーバーグのマインドセットが驚くほどの変化を遂げたことの証左とも言える。
メタの従業員たちは長年にわたって毎週のように行われてきたCEOとの質疑応答を経て、ザッカーバーグのオープンな態度を高く評価してきた。
2021年に退社して起業するまで10年間、メタの公共政策ディレクターを務めたケイティ・ハーバスはInsiderの取材に対し、「彼はあらゆるタイプの質問に応じ、それに答えていました」と証言する。
ところが、あるベテラン現役従業員は現状をこう語る。
「いまの彼の一挙手一投足は、誰かが振り付けしたものなのです」
従業員数をさらに5000人削減する方針
今回のコンサル・ザックへのアップデートは、メタに大きな影響を与えそうだ。
従業員たちは毎週の質疑応答のような、彼との接点が失われたことに不満を募らせている。次に(レイオフという)伝家の宝刀を抜くのはいつになるやらと、シニカルな態度もまん延する。
内情に詳しい関係者によれば、ザッカーバーグは従業員総数を2020年時点の水準、すなわち今日よりさらに5000人減らそうと考えている模様だ。
ザッカーバーグは4月、追加レイオフを免れた技術職およびエンジニア職の従業員が参加したビデオ会議で、発表済みの2万人超に加えてさらなるレイオフを実施する可能性を否定しなかった。
続く5月、彼は従業員との別のビデオ会議で、2023年の「大規模な」レイオフは終了したものの、「これ(必要なコスト削減を指す)をやり遂げるにはまださらに時間がかかる」と発言している。
6月には、一部の従業員を対象に週3日のオフィス勤務を義務づける計画を発表した。
2020年5月というパンデミックのかなり早い段階で、2030年までに同社従業員のおよそ半分がリモートワーカーに置き換わるとの大胆な見通しを彼自身が語っており、急激な方針転換を「豹変(ひょうへん)」として注目する向きもある。
さらに7月には、昇進を困難にする新基準が導入されるとの通告が行われた。
内情に詳しい関係者によれば、エンジニアリング部門の責任者を務めるサバ(前出)が、社内コラボツール「ワークプレイス(Workplace)」のフォーラムに管理職クラスの昇格について投稿し、マネジメントするチームの規模を評価要素とする比重を下げ、その機会自体も減らすことを示唆したという。
シュローファー(前出)から最高技術責任者(CTO)のポジションを引き継いだアンドリュー・ボスワースは、かつてザッカーバーグと馬が合うと言われたが、最近はその関係が険悪になっているとの話も聞こえてくる。
わずか数年で400億ドル以上の損失を垂れ流してなお何ら進展がないメタバース構想の現状を考えれば、ボズワースはただただ「無駄遣いをいかに少なく済ませるか」(リアリティ・ラボの現役従業員)に取り組んできただけということになる。
同じ現役従業員は「2023年後半にまた経営幹部の入れ替えがあっても全然驚きはない」とストレートに語った。
新生「コンサル・ザック」は冷徹に利益を追求し、ウォール街から賞賛を浴びている。画像は総合格闘技UFCの現役王者らとトレーニング中のザッカーバーグ。
Dianna "Mick" McDougall for Insider; Mark Zuckerberg
コンサル・ザックはすでにメタの構造改革を進めており、その新たなペルソナは最終的により広く政治や社会のあり方にまで大きな影響を及ぼす可能性がある。
ユーザー20億人超のソーシャルメディア企業の頂点に立つザッカーバーグほど強大な影響力もしくは権力を持つ人物は地球上に数人しかいない。
そして、今日より思いやりに満ちていた以前の彼でさえ、世界の情報の流れ(例えば人々の情報収集行動の変化)から民主主義制度の基盤(例えば2016年の米大統領選挙におけるケンブリッジ・アナリティカによる投票操作)まで、あらゆるものに甚大なダメージを与えることができた。
フェイスブックのかつてのモットー通り、彼は素早く行動して多くのものを破壊した。
世界をよりオープンにすると謳(うた)ったハーバード・ザック、全米の市井の人々の声に耳を傾けようとした善人としてのシリコンバレー・ザック。そうした過去のペルソナを過去に葬り去り、ガレージで新たな趣味のブラジリアン柔術に勤しみ、三角絞めを披露する最新ペルソナの彼が、偽情報の流布やユーザーのプライバシー問題への関心を失うかもしれないことは想像に難くない。
しかし、そうしたリスクの高まりにも関わらず、コンサル・ザックは彼がいま最優先する支持者層からは圧倒的な歓迎を受けている。もちろん、その熱烈な支持者層とは、株主のことだ。
それでも、ウォール街のザッカーバーグのファンでさえ、彼がこうしたビジネス志向のペルソナを採用した彼の度量に驚いている。初期からメタに出資するある投資家は、コンサル主導色を強めた現在のアプローチを絶賛する。
「ハイパーグロースの時代はもう終わったのです。
彼にはこれから先も(メタバース構想のように全く新しいビジネスの核になる)再発明が必要になると分かっています。しかし、資金はもはやタダ(同然)ではありません。だからこそ、彼は優先順位をつけ直す賢明な選択肢を選んだわけです。
まあ、彼がそういう行動に出るとは思いもしませんでしたが」
ザッカーバーグの心の奥底には、ズタズタに引き裂かれたシャツを脱ぎ捨て、ケージマッチを渇望する闘士としての彼が潜んでいて、それがここに来てついに鎌首をもたげた姿を晒しただけであって、何も驚くことはないのかもしれない。
彼はある意味、名門フィリップス・エクセター・アカデミーでラテン語を学んでいた高校時代からずっと憧れだった指導者、ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスのペルソナを採用しただけなのだ。
暗殺された大伯父ユリウス・カエサルから後継者指名を受けたアウグストゥスは、敵を打ち負かすためには手段を選ばず、抜け目のない辣腕政治家として知られ、市民共同体の庇護者としての地位を失うことなく、終身皇帝としての絶対的権力を手にした人物だ。
ザッカーバーグはかつてそのアウグストゥス、改名して皇帝オクタウィアヌスとなった歴史上の人物について、こう熱く語っている。
「基本的には、過酷極まりないやり方で、200年にわたる平和の時代(いわゆるパックス・ロマーナ)を築いたのです。そして、それはタダではありませんでした。一定の犠牲を払わねばならなかったのです」
最新の「生まれ変わり」を経て、メタにおけるザッカーバーグの権威は、ローマ帝国におけるアウグストゥスのように絶対的なものになった。彼の支配に疑問を呈する者はもはや誰も残っていない。
先に触れた4月のビデオ会議で、創業以来の大規模レイオフを眼前にして怒りの収まらない従業員たちに謝る素振りも見せず、自分の評価は前進と成果だけで評価されるべきと淡々と語ったように、いまやメタで起きる全てのことの判断と責任はザッカーバーグに委ねられている。
今後メタがどんな道を歩むとしても、その結果によって信任を受けるのも責任を問われるのも彼だ。ザッカーバーグは自身でそのことをはっきりさせたのだ。