FIRE達成後の生活は、驚きでいっぱいだ。
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- FIREを達成後の生活は必ずしもイメージと一致しない。
- FIREを達成すれば、自由の感覚が手に入るが、想定外の側面に適応する必要もある。
- 適応のためには、基本的に考え方の転換が必要だ。
FIRE達成後の生活は、驚きでいっぱいだ。
多くの経験者によると、FIREを達成すれば自由と解放を感じられる一方、いくつかの思いがけない側面に適応する必要も出てくるかもしれない。
たとえば、アイデンティティの危機に直面し、新たなやりがいを見つけなければならなくなる人もいる。最初の幸福感がいつまでも続かないことに気づく人もいる。居心地のいい場所から踏み出すことにした人もいる。しかし、長期的に見ればいずれも悪いことではない。
本記事では、実際にFIRE達成者たちが語る、退職後の生活における想定外の変化について紹介する。
1. FIREによって幸福度が大きく増すわけではない
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FIREをしたからといって長期的な幸せが手に入るわけではない。
44歳で早期退職し、ブログ「アーリー・リタイアメント・ナウ(EarlyRetirementNow)」で発信するカーステン氏は、退職した翌日に急に幸せになったわけではなかったという。
「もちろん、FIREすれば幸せになるよ! 前よりもずっと!」と彼はブログに記す。「でも、私の幸福度は0から100に跳ね上がったわけではなく、あらかじめ少しずつ『勘定に入っていた』んだ……」
そして、幸福感が急増する人にとっても、それが長く続かないことは確かだ。
「実際のところ、幸福感の高まりはせいぜいで3カ月から半年しか続かない」と、ブログ「ファイナンシャル・サムライ(Financial Samurai)」のFIRE達成者サム・ドーゲン氏は述べる。「やがて通常の状態に戻ってしまう」
2. アイデンティティの危機が起こるかもしれない
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FIRE達成後の生活における「老練なベテラン」を自称するドーゲン氏は、FIREのデメリットの1つとして、何年間も仕事が自分のアイデンティティ形成に大きな役割を果たしていた人は、アイデンティティの危機に陥りかねないことを挙げる。
「仕事を辞めて初めて、自分がいかにその仕事に打ち込んでいたかを知るものだ」とドーゲン氏は記す。アイデンティティの危機は3カ月程度で終わることもあれば、仕事にどれだけのめり込んでいたかによっては、数年続く場合もあるという。
ドーゲン氏はこう続ける。「初対面の場で最もよく聞かれる質問は、『お仕事は何を?』だ。それに対して、何もしていませんと答えたら、まるで自分が負け犬のようで恥ずかしく感じるかもしれない」
3. 新たなやりがいを見つける必要があるかもしれない
30代でリタイアする人の多くは、フリーランスになったり事業を始めたりする。つまり、働くのを完全にやめるわけではない。
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結局、多くのFIRE達成者は新たなやりがいを求めることになる。
34歳でFIREを達成して「マッド・フィンティスト(Mad Fientist)」を運営するブランドン氏は、早期退職後の考え方の変化で最も大きかったのは、もはやお金がモチベーションにならないと気づいたことだという。
「私にとって、かなり衝撃的かつ戸惑いを感じる変化だった」と彼は記す。「大人になって以来そのときまでずっと、お金こそがモチベーションだったから。しかし十分に(むしろ予想以上に)手にした今、もうお金はそれほど重要ではなくなった」
それは恵まれた立場だが、主なやりがいの源を失うと、もはや何を目指せばいいのかわからなくなりうる、と彼は言う。
「仕事を辞めた後に始めようと計画していたことの一部は事業プロジェクトだったが、お金を稼ぐことにあまり魅力を感じなくなると、それをやる意味がわからなくなった。自分の人生と将来の計画をすべて見直すと同時に、新たなやりがいを見つけなければならなくなった」
4. 目標や夢が変わることも多い
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やりがいが新たに見つかれば、目標や夢が変わるのも驚きではない。
125万ドル(約1億7600万円)を手に30歳でFIREを達成したグラント・サバティエ氏は以前、退職後にどれほどの変化があるかをあらかじめ知れていたらよかったのに、とInsiderに語った。
「経済的に自立するために5年3カ月間をほぼノンストップで働き、30歳で目標に到達してFIREを果たした途端、働きはじめた頃と比べて自分が大きく変わっていることに気づいた。夢、目標、好きなことが24歳のときとはもう違っていたんだ」と、『FIRE:最速で経済的自立を実現する方法』(朝日新聞出版)の著者でありブログサイト「ミレニアル・マネー(Millennial Money)」を運営するサバティエ氏は言う。
「金融業界は計画や数字の正確さを売り込みますが、結局それは非現実的だ。人は変わるのだから。人生は変わる。みんな変わるんだ。だから、今できる限りのことをして、今の自分には今日という日しかないのだと覚えておくといい」
5. 居心地のいい場所から踏み出すことが人生になる
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FIREそのものが、日常からの離脱、つまりたくさんの居心地のいい場所から一歩踏み出す行為だ。自由な時間と預金が十分にあるのだから、最初の一歩に続いてどんどん新しい領域へと踏み込んでいこう。
「シンク・セーブ・リタイア(Think Save Retire)」を運営するFIRE達成者のスティーブ・アドコック氏は、新たな領域に踏み出すことで全体的な満足度は高まると言う。また、出費を抑えて節約するなど、以前とは違う気の進まないお金の決定もしやすくなるという。
「出費は中毒であり、人の心は意思決定プロセスのなかで快適の種を植えつづける」と彼は自分のサイトに書いている。「つまり、FIRE達成者は自分の経済的目標に沿った決定を下し、たとえその決定に多少の苦労があっても、社会や友人および家族に自分の経済状況を左右されることはない」
アドコック氏自身も夕食の誘いを断ったり、贅沢な旅行を控えたりするようになり、所有物を減らし、愛車のシボレー・コルベットも売った。