トムトル村の郊外にある永久凍土の結晶でできたトンネルを歩く男性。
Maxim Shemetov/REUTERS
- 4万6000年前の永久凍土で休眠状態だった線虫が、最近蘇生したという。
- 科学者たちは以前にも、閉じ込められていた古代のバクテリアや先史時代のウイルスを復活させたことがある。
- 専門家によると、これらのゾンビウイルスはいつか人類に問題をもたらす可能性があるという。
科学者たちは最近、4万6000年前のシベリアの永久凍土から休眠状態にあった線虫を蘇生させ、それらは繁殖したという。
氷の中で休眠状態にあった「ゾンビ」生物が死から蘇るのはこれが初めてではない。ほかにも科学者たちが、氷の中で長い間凍っていた先史時代のウイルスや古代のバクテリアを復活させた記録がある。
だが、気候変動によって世界各地で太古の氷床の溶解が進むことで、太古のウイルスが出現し人類に危険をもたらす可能性を専門家たちは懸念している。
永久凍土に存在する先史時代のウイルス
チベット高原のグリヤ氷冠から2015年に採集した氷を削るヤオ・タンドン(左)とロニー・トンプソン(右)。
Image courtesy Lonnie Thompson, The Ohio State University
2023年3月、フランスのジャン=ミシェル・クラヴェリー(Jean-Michel Claverie)教授がシベリアの永久凍土から4万8000年前の凍結された古代のウイルスを発見した。
永久凍土は一年中凍った土の層のことで、地球の約15%を覆っている。彼は、このウイルスがアメーバと呼ばれる単細胞生物に感染することを発見した。
Insiderが以前報じたように、このウイルスが動物や人間に感染する可能性は不明であるが、研究者たちは当時、永久凍土ウイルスは公衆衛生上の脅威と考えるべきであると述べていた。
他の研究では凍った氷床コアから1万5000年前の先史時代のウイルス28個が見つかっている。そのうち15個は科学的には未知のものであった。
この発見は気候危機がウイルスに及ぼす影響について教えてくれるかもしれないと科学者たちは述べている。
「このような極限環境におけるウイルスや微生物について、我々はほとんど何も知らない」と、この研究の著者で、バード極地気候研究センター(Byrd Polar and Climate Research Center)の科学者ロニー・トンプソン(Lonnie Thompson)は話している。
「バクテリアやウイルスは気候変動にどう対応するのだろうか? 氷河期から現在のような温暖期に入るとどうなるのだろうか?」と彼は言う。
4万6000年前と2万4000年前の線虫が復活
線虫は通常、宿主の体内に寄生する。最近の報告では、線虫の一種である回虫が、永久凍土で凍結された推定4万6000年後に繁殖を始めたことが分かっている(線虫は単為生殖によってオスがいなくても繁殖する)。
しかし、これは初めてのことではない。以前の調査では、氷の中に2万4000年閉じ込められていたと推定される別の線虫であるワムシが、シベリアの永久凍土から発見された。この線虫は繁殖能力もありエサを与えると喜んで食べたという。
解凍されたワムシは、餌を食べるようになった。
Lyubov Shmakova
800万年前のものと思われるバクテリアも
バクテリアは過去にも太古の氷から採取されたことがあり、場合によっては何百万年もの間、地中で繁殖し続けたと考えられるケースもある。
2000年代の科学者たちは、南極大陸から採取した氷からバクテリアを発見した。アルスロバクター・ロゼウス(Arthrobacter roseus)と呼ばれるこの小さな生物は、800万年前の氷の中から採取されたと思われるものだが、実験室で分裂し増殖することができた。
凍った古代の微生物についてもっと知る必要がある
上記の調査結果を鵜呑みにしないことも大切だ。
古代の氷を採取する際、サンプルを原始的な状態に保つのは非常に難しく、氷の年代を確実に特定することはさらに困難だ。したがって、その生物が科学者自身が誤って氷の上に落とした現代のものではないことを確実にするのは難しいかもしれない。
それでも、気候変動によって世界中の氷が徐々に消失している現状では、凍った虫たちが時間の経過とともに発見される可能性があり、これらの発見は極めて重要なものだ。
我々はこれまで、このような生物に接触していない可能性があるため、人体がどのように反応するかは明らかではない。
「我々の免疫防御は、微生物に囲まれた環境で発達してきたことを忘れてはならない」とCNNにスウェーデンのウメオ大学(Umea University)の微生物学名誉教授ビルギッタ・エヴェンガルド(Birgitta Eveng?rd)が語ったことを以前Insiderは報じている。
「我々が何千年も接触していないウイルスが永久凍土の中に隠れているとしたら、それは我々の免疫が十分に機能するものではないかもしれない」
科学者が心配しているのは古代のバクテリアだけではない。我々が絶滅させたり、抑え込んでいた最近やウイルスが氷解した氷の中から再び姿を現す可能性もあるのだ。
例えば、この70年間、炭疽の発生がなかったのにも関わらず、2016年にロシアで炭疽菌が原因で20人の子どもが発病し、1人が死亡した時に科学者たちは困惑した。彼らは熱波によって永久凍土に潜んでいた細菌が放たれたことが原因だと考えている。