NECPC 2023年夏モデル発表会に登壇したNECPC執行役員の河島良輔氏(左)、PCの開発に協力した坪田ラボの坪田一男社長(中央)、NECPC商品企画本部 本部長の森部浩至氏(右)。
撮影:小林優多郎
NECパーソナルコンピュータ(NECPC)は8月1日、2023年夏モデルのノートPCを発表した。
その中でも限定4000台の販売を予定する「LAVIE NEXTREME Infinity」(ラヴィ ネクストリーム インフィニティー)はLAVIEシリーズの最高峰の機種として登場した。
また、新型PCの発表と同時に、NECPC執行役員の河島良輔氏は「コロナ禍で需要の先食いが起きた」とする現状とこれからの業績の見通しを語った。
ゲームもVTuberも「長くいい製品を使いたいニーズ」を狙う
LAVIE NEXTREME Infinityは16型3840×2400ドット有機ELディスプレイ搭載する。タッチ操作には非対応。
撮影:小林優多郎
LAVIE NEXTREME Infinityの特徴は、上位機種ながら「搭載している部材(スペック)の割に、価格設定が比較的に安価」だと言う点だ。
まず画面は16型3840×2400ドットの有機ELディスプレイで、4K解像度での精細な画面表示、DisplayHDR 500 True Black対応の引き締まった黒の表示が楽しめる。
キーボードは列ごとに傾斜がついている。静音式のキータイプ音も比較的おとなしめ。
撮影:小林優多郎
次に、ノートPCには珍しいステップスカルプチャ機構を採用したキーボードを搭載。これはキー列ごとに角度を変えることで、より自然な打ちやすさ実現するもの。
キーボード面自体も本体の手前が薄く、奥が厚い(横から見るといわゆる「くさび形」をしている)チルト形状になっているため、手の置き場や打ちやすさ向上に貢献している。
NECPC直販サイトでカスタマイズできるモデルのスペック表。手前のキャラクターはNECPC公式のキューハチ(左)とラヴィ(右)。デザインは西沢5ミリさん、モデリングはfumiさんが担当している。
撮影:小林優多郎
心臓部であるチップセットは店頭販売構成ではインテル製「Core i7-13700H」、メモリーは16GB DDR5、ストレージは1TB SSD、グラフィックにはインテル製「Arc A570M」を採用している。
さらにコンテンツ面でも、LAVIEシリーズ初となる「バーチャルYouTuber」(VTuber。バーチャルライバーとも呼ぶ)の配信に必要なソフトウェア群や専用のアバターも本体に付属する。
ユーザーがLAVIE NEXTREME Infinityを買ってからVTuber配信ができるように入門ガイドのほか、アバター「ルヴィ」(ラヴィの従兄弟と言う設定)、アバターアプリ「3teneFREE」、ボイスチェンジャーアプリ「Voidol2」、プリセット設定付きの配信アプリ「OBS Studio」が付属する。
撮影:小林優多郎
ディスプレイの画面描画速度(60Hz)やArc A570Mのグラフィック性能を考えると、本格的なVTuberの配信やゲーム用途に向いているとは言い難いが、一方で価格とのバランスの良さはある。
今回、NECPCはLAVIE NEXTREME Infinityの店頭モデルの想定価格を27万4780円としている。
価格だけを見れば十分高いのだが、前述のスペックを考えると、PCに理解の深い人間であれば驚く価格設定だ(特に4K有機ELディスプレイは、この価格帯では非常に珍しい)。
画面上部に太陽光に含まれる波長360~400nmの可視光を照射するバイオレットライトLED搭載している。バイレットライトの効果監修は坪田ラボが担当。バイレットライトがONになっているときは、Webカメラがオフになる仕様だ。
撮影:小林優多郎
NECPCの川島氏はLAVIE NEXTREME Infinityについて「ゲーミングやクリエーション用途も想定している」(川島氏)としたが、決してプロユースを考えて設定したものではないことを強調した。
「(ノートPCに対する)ニーズの3分の1ぐらいがハイエンド(のPC)を欲しがっている。(LAVIE NEXTREME Infinityではゲームもクリエーションも)両方できるが、普段使いもできる。長くいい製品を使いたいニーズにアドレスしたい」(河島氏)
コロナ特需後のPC需要は2023年後半から徐々に回復?
NECPC執行役員の河島良輔氏。
撮影:小林優多郎
加えて河島氏は現状のノートPC市場について、NECPCとしての見通しや考えを述べた。
NECPCによると、コンシューマー向けPC市場は直近、2019年のWindows 7のEOS(End of Support、サポート終了)と、2020年からのパンデミックのテレワーク需要により一度ピークを迎えた。
ただし足元では、これらの需要の落ち着いた2022年〜2023年(予測)では大きく勢いを落としている。
しかし河島氏は「(現在が)底である」と認識を示し、2023年後半から徐々に需要は回復していくと述べた。
NECPCが予測するコンシューマー市場。
撮影:小林優多郎
大きな需要の波としては、2024年度の大学入試共通テストに予定されたCBT活用(コンピューターによる出題/回答方式)や、2025年10月に控えるWindows 10のEOSが挙げられている。
確かにこれらの根拠は2024年以降の法人PC市場に大きな影響を与えそうなトピックではあるが、コンシューマー市場が2023年後半から復調する根拠にはやや時期尚早とも言える。
これに対し河島氏は「コロナ禍後の意識の変化」を挙げた。
スマホの台頭で一時期は「PC不要説」が囁かれていたが、コロナ禍のハイブリッドワークなどでPCの使われ方は再び広がった。2020年にPCを買った人が3〜4年が経過するタイミングで、生産性向上のためにPCを買い換えるだろう、というのがNECPCの考えだ。
LAVIE NEXTREME Infinityを含めPCの新しい需要、在り方が変わっていくのか今後も注視すべきだろう。