ChatGPT開発のOpenAIと楽天が協業、三木谷会長が語る「AI時代にモバイルに取り組む意義」

三木谷氏

Rakuten Optimism 2023の基調講演に登壇した三木谷浩史会長。

撮影:小林優多郎

楽天は8月2日〜4日、4年ぶりのリアル開催となる体験型イベント「Rakuten Optimism 2023」を神奈川県・横浜パシフィコで開催している。

初日である8月2日の基調講演には楽天グループの三木谷浩史会長が登壇し、同グループの近況と戦略を報告した。

基調講演の中では以下の3つのトピックについて三木谷氏が語った。それぞれの内容についてAIとモバイルの観点から解説する。

  • 楽天グループとOpenAIが協業
  • 「Rakuten Link デスクトップ版(ベータ版)」がリリース
  • 楽天がウクライナのモバイル通信インフラを再構築

1. OpenAI・アルトマンCEOがサプライズ登場、「AI戦略」語る

三木谷氏とアルトマン氏

写真左からアルトマン氏と三木谷氏。

撮影:小林優多郎

最も話題性の強い発表は、やはりChatGPTの開発元で話題を呼ぶアメリカ・OpenAIとの協業だろう。

基調講演では三木谷氏と25年来の友人だというサム・アルトマン(Sam Altman)CEOがサンフランシスコからビデオ通話でサプライズ参加した。言葉どおりにとれば、アルトマン氏は13歳の頃から三木谷氏と顔なじみだったことになる。

両社は「最新AI技術によるサービス開発における協業で基本合意」を締結。同日のリリースによると、楽天側からは楽天社内のAIやデータの知見などを、OpenAI側からは楽天に対して優先的に最新APIを提供する。

OpenAIとの協業

三木谷氏は正式リリースに先駆けて、OpenAIとの協業を発表した。

撮影:小林優多郎

アルトマン氏が注目し、三木谷氏が誇るのは楽天グループ内のEC、金融、モバイル、ポイント(消費行動)といった70種類を超えるサービスのビッグデータだ。

OpenAI側は一定品質の学習データを確保することで、ChatGPTを含めたAI技術のブラッシュアップが狙いだ。

楽天のデータ

楽天グループにはさまざまな種類のビッグデータがある。

撮影:小林優多郎

一方、楽天側はすでに社内で展開しているマーケティングやオペレーションなどのAIによるツール群の強化などを目指している。

三木谷氏はさらにビジョンとして「ユーザー、小さな会社、大きな会社、国や地方公共団体をエンパワーしていく」と語り、複数のステークホルダーに対してAI機能を楽天から提供する意欲があると語った。

とはいえ、現在はまだ具体的な新サービスを披露したという段階ではない。

すでに楽天はコミュニケーションツールの「Viber(バイバー)」でChatGPT APIを使ったボットサービスなどを提供しているが、今後さらに踏み込んだOpenAIとの協業が期待される。

2. 現在の楽天の焦点はやはり「モバイル」

Rakuten Link デスクトップ版(ベータ版)

8月2日からRakuten Link デスクトップ版(ベータ版)の提供も開始した。

撮影:小林優多郎

OpenAIが話題をさらっていった形ではあったが、約30分の三木谷氏の基調講演の半分程度はモバイルの話題だった。

もっと言えば、冒頭でまとめた「3つのニュース」のうちの2つはモバイルの話で、特に「Rakuten Link デスクトップ版(ベータ版)」は当初2020年10月下旬の提供が予告されていたが、2023年5月に8月提供開始のアナウンスがあり「待望の機能」と言える。

ベータ版ということで、まだ独自メールの「楽メール」が利用できないなどの制限はあるが、WindowsおよびmacOS版のアプリが公開され、国内通話やSMS、Rakuten Link同士のメッセージやビデオ通話などが8月2日からPCで使えるようになった。

ウクライナへの取り組み

楽天シンフォニーでウクライナの5Gインフラ整備を促進する。

撮影:小林優多郎

一方、ウクライナでの取り組みは、楽天モバイルではなく、楽天モバイルで活用されている通信システムを外販する楽天シンフォニー社によるもの。

楽天シンフォニーとオランダに本社を置く多国籍電気通信サービス企業「VEON(ビオン)」が協業し、5Gを提供できる、強固で将来性のある通信インフラの構築を目指していく。

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