アマゾン(Amazon)創業者で前最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾス氏。同氏が設立した宇宙開発企業ブルーオリジン(Blue Origin)は月面着陸機の開発を進めている。
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アマゾン(Amazon)創業者のジェフ・ベゾス氏が設立した宇宙開発企業ブルーオリジン(Blue Origin)は、リモートワークを取り入れた柔軟な働き方を認める従来のポリシーを変更し、一部の従業員に週5日のオフィス勤務を命じた模様だ。
Insiderが独自に入手した社内メールから判明した。
全従業員向けに送信されたメールを読むと、ブルーオリジンの経営陣は最近、新たに導入するオフィス復帰ポリシーについて注意喚起を行った模様だ。
具体的な内容としては、コロラド州デンバー、カリフォルニア州エル・セグンド、同ウッドランド・ヒルズ、アリゾナ州フェニックス、バージニア州レストンのリモートオフィス配属の従業員に対して、「デスクの稼働率を向上させる必要がある」ことから、上記の週5日出社ポリシーを遵守するよう求めている。
一方、シアトル都市圏、フロリダ州、テキサス州、アラバマ州ハンツビルのオフィスについては、「フル稼働状態」あるいは「現状、オフィススペースや駐車場の使用に制約があり調整中」という。
「ご存知のように、当社ブルー・オリジンは『ワークフロムホーム(在宅勤務)』ではなく『ワークフロムワーク(職場勤務)』の会社です。
プロジェクトの現場やハードウェアに直接触れられるところで同僚や関係事業者と協業することで、チームはより大きな力を発揮できるのです」
ブルーオリジンの広報担当にコメントを求めたが、返答は得られなかった。
アマゾンやグーグルなど他のテック企業は、ブルーオリジンより柔軟な(オフィス出社とリモートワークを組み合わせた)ハイブリッドワークを採用しており、従業員の大半に最低週3回のオフィス出社を指示している。
しかし、週3日の出社を義務付けるポリシー変更だけでも、一部の従業員からはその有効性を疑問視する声が上がっている状況だ。
ある現役従業員は、ブルーオリジンが週5日フル出社への移行を決めたのはサプライズだったと語る。
Insider編集部が入手した2022年の社内メールによると、同社シニアバイスプレジデント(オペレーション担当)のマイケル・エイローラ氏は管理職に対し、画一的なオフィス復帰ポリシーを導入する計画はないと説明している。
「当社は、全従業員に画一的に適用される(ハイブリッド)勤務スケジュールは採用していません。なぜなら、ビジネス要件、個々の状況や仕事上の役割はそれぞれに全く異なるからです」(エイローラ氏)
エイローラ氏は当時、管理職には「個々の従業員が必要とするフレキシビリティを提供するため」勤務スケジュールを「必要に応じて自由に調整できる裁量権がある」と発言している。
また、職位の変更や「著しいパフォーマンス低下」があった場合、それまで認めていたリモートワークを不可とする可能性が(常に)あることにもエイローラ氏は言及していた。
ブルーオリジンがなぜ今回のポリシー変更に踏み切ったのかは判然としない。冒頭の社内メールを通じた注意喚起を読む限り、同社の経営陣は「企業カルチャー、仲間意識の醸成、業績向上の観点から」対面で働くことを重要視している模様だ。
同メールにはこんな記述がある。
「ロケット、エンジン、そして宇宙システムの設計と製造には、エンジニアチームやファンクショナルサポートチームらとの現場作業が必須です。
オフィスに復帰する従業員が増えるほど、私たちのミッション実現と目標達成に向けた興奮とエネルギーは高まっていくのです」
なお、ブルーオリジンは5月、米航空宇宙局(NASA)の主導で有人月探査を目指す「アルテミス計画」において、イーロン・マスク氏率いる宇宙開発企業スペースXに続く第2の開発元に選定されている。
NASAとの契約額は34億ドル規模で、米ロッキード・マーチンやボーイングらと月面着陸機「ブルームーン」を製造する。