Zホールディングスは2023年度第1四半期決算の投資家向け説明会をオンラインで開催した。
撮影:小林優多郎
Zホールディングス(以下、ZHD)は8月3日、2023年度 第1四半期決算を発表した。
純利益(親会社の所有者に帰属する当期利益)は373億1600万円(前年同期比47.9%増)。売上収益は4305億2300万円(同10.2%増)と、同社史上最高となった。
ZHD全社の業績概要。
出典:Zホールディングス
決算会見に登壇したZHD 専務執行役員GCFO(最高財務責任者)の坂上亮介氏は、その背景について「PayPayやメディア事業の増収。選択と集中で増益」と説明。
Yahoo!ショッピングでの「ばらまきに近いポイント施策」(ZHD関係者)を控えたことによる販促費の抑制や、個人向け証券事業を野村證券に移管するLINE証券と、開発を断念したLINE Bank(日本)の赤字引当金が不要になったことが功を奏した形だ。
PayPayは自社クレカ効果で成長継続
PayPayは各種KPIで成長を続けている。
出典:Zホールディングス
スマホ決済のPayPayに関しては、PayPay単体などの内訳は非開示なものの、連結EBITDA※では初めて黒字化した。
※PayPay社の営業利益に償却費を足し戻したもの。持分プーリング法の適用により、PayPayカード社の財務諸表を2021年期初から連結している。両社間の内部取引分は含まない。
PayPayカードのユーザー数、取扱高は増えている。
出典:Zホールディングス
特にクレジットカードの「PayPayカード」は好調で、有効会員数は前年同期比20%増となる1042万人。取扱高も前年同期比28.2%増となる1兆792億円を記録した。
PayPayは8月1日からアプリ内の「あと払い」の名称を「クレジット」に変更するなど、PayPayとPayPayカードのシナジーを強めている。
PayPay内での他社クレジットカードの利用停止(PayPayカードへの一本化)は、2023年8月から2025年1月に延期されたが、PayPayとしてはよりクレジットカードユーザー向けの施策を強化していく方針だ。
頼みの綱はID連携と新プレミアム会員制度
第1四半期決算では金融分野の再編が取り上げられた。
出典:Zホールディングス
ZHD史上最高の売り上げを記録したとはいえ、前述のLINE証券の移管など、要はLINEとヤフーでグループ内競合していたものを整理する中でのムダを省いた結果だ。ユーザーや投資家目線で、将来を感じさせる材料ではない。
実際、3日の投資家向け説明会では、今後の広告事業の見通しや10月に控える「LINE ID」と「Yahoo! JAPAN ID」のID連携についての質問が相次いだ。
LYPプレミアム会員の特典内容(ZHDの2022年度通期決算資料より)。
出典:Zホールディングス
特にID連携後に開始するリワード制度「LYPプレミアム」(現・Yahoo! プレミアム)に質問は集中。ID統合とLYPプレミアム加入により、現在LINEだけを使っているユーザーが、特典目的でヤフーのECサービスを使うことなどが狙いである旨が説明された。
また、現在は全社的に販促費を抑える傾向にあるが、LYPプレミアムについては「ID連携をプロモーションする上で販促的なコストは計上していく」(坂上氏)方針だ。
ID連携自体については個人情報に関する懸念が一部では出ているが、ZHDの出澤剛CEOは「ユーザーのみなさんにていねいな説明をしつつ、同意をいただき、進めていきたいと考え」と述べ、「予定通り10月の頭から開始する前提で準備している」と話した。