Instagramの責任者、アダム・モッセーリ。
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Threads(スレッズ)の登場で、Instagram(インスタグラム)とその責任者のアダム・モッセーリ(Adam Mosseri)に注目が集まっている。
メタの最新SNS「Threads」のサービス開始以降、メディア露出が増えているモッセーリは先日、ポッドキャスト番組「20VC」に出演。イギリスのベンチャーキャピタリスト、ハリー・ステビングス(Harry Stebbings)に次のように語った。
「新しいアプリをスタートさせるときは、成功よりも失敗する可能性の方が高い」
だが、最近は利用とダウンロード数が減少しているものの、Instagramにとっては幸運なことに、スタートは予想以上に順調だ。
「私たちは物事を最適化することが得意。誰かが新しいフォーマットを開拓したとき、それが業界の標準になると判断すれば、進んでそのフォーマットを採用する」とモッセーリは語り、例としてInstagramのストーリー機能を挙げた。ストーリー機能はPintarest(ピンタレスト)からLinkedIn(リンクトイン)までほとんどのソーシャル・プラットフォームが一度は取り入れている。
「私たちのDNAの一部は、競争的であること。私たちは常に私たちを取り巻く世界が変化すること、そして、私たちが変化に追いつけなくなることを恐れている」
ポッドキャスト番組「20VC」で語るアダム・モッセーリ(右)。
Screengrab/YouTube/20VC
バーテンダーとしての経歴がIT業界での仕事に与える影響から、Threadsのリリースが早まった背景まで、モッセーリはInstagramの仕事について語った。
印象的な6つのエピーソードを紹介しよう。
サービス開始の舞台裏では、さまざまな議論とスケジュール変更があった
Threadsのサービス開始に際しては、Instagramからフォロワーをインポートすべきか、Instagramに統合するべきか単独のアプリとすべきかなど、社内でかなりの議論があったとモッセーリは述べた。
Threadsを単独のアプリとすることについては、メタ(Meta)創業者のマーク・ザッカーバーグが「最も説得力があった」。当初は「もっと早くサービスを開始したかった」とモッセーリは述べ、「パートナーシップ・チームはすでに全員と何らかの連携をとっていたが、遅らせなければならなかった。すぐに準備が整い、当初はVidCon(訳注:6月21日〜24日に開催された動画関連イベント)までにスタートさせたかった」と続けた。
正式なリリース日が7月6日(米東部時間)に決まった後も、App Storeの予約やタイミングにまつわる複雑な問題が発生して変更を余儀なくされ、リリースは1日早まって7月5日(同)となった。クリエイターや著名人を対象とした早期アクセス期間は、実際に行われた40時間よりももっと長くなるはずだったとモッセーリは付け加えた。
Instagramにとって、クリエイターは依然として最優先事項
「我々は若いユーザーを大切にしており、クリエイターを最も大切にしている」とモッセーリは述べ、クリエイターをアプリの健全性と成功の「先行指標」と呼んだ。特にThreadsの立ち上げ初期はそうだったという。
また、ソーシャルメディアは多くのクリエイターにとってビジネスであると認識しており、メタはしばらくの間「そうしたビジネスをサポートする方法を考えようとしてきた」と語った。
「しかし、すべてのクリエイターにお金を支払うわけにはいかないと考えている。何千万人ものクリエイターがいれば、それだけで必要なお金は膨れ上がり、ビジネスモデルは完全に破壊されてしまう」
そのためInstagramは、サブスクリプション、ブランドとの取引促進など、クリエイターが収益を確保することを支援する「ツール」の提供に力を入れている。
Instagramはまだ、Threadsの投稿に対してクリエイターに報酬を支払っておらず、モッセーリは報酬の支払いは必ずしも「スケーラブル」な手段ではなく、「始めるとすぐに、非常に滑りやすいスロープになる」と語った。
Instagramはリールの成功に満足感
モッセーリによれば、リールはInstagramに費やされる時間の約50%を占めているという。
だが、まだTikTokより優れているわけではないともモッセーリは指摘。「我々は追いつきつつある」と語り、TikTokは「我々がこれまで直面した中で最もよく作り上げられた競合」と付け加えた。
リールは当初、Instagramのストーリーズの機能としてテストされた
2020年にInstagramがリールをスタートさせる前、チームはストーリーズ上にリール機能を構築することに「丸1年を費やした」とモッセーリは述べた。
「これは私の最大の後悔のひとつかもしれない。うまくいかなかった」
理由は、ユーザーは日々、ストーリーズに多くの投稿をしているからだ。仮に誰かが短い動画コンテンツを投稿したとしても、見られない可能性が大きいとモッセーリは述べた。
Instagramにとって、会話に焦点を当てた重要な機能はThreadsだけではない──DMも今までにないほど重要になっている
TikTok以外では、モッセーリはもう1つの競合に注目している。暗号化メッセージング・プラットフォームのTelegram(テレグラム)だ。Instagramの成長の大部分はストーリーズとDMが占め、リソースをメッセージングにシフトしていると語った。「実際、数年前のある時期には、ストーリーズのチーム全員をメッセージングに配置したと思う」。
若いユーザー層にとってもDMは重要だ。
「10代の若者がInstagramでどのように時間を使っているかを見ると、10代はDMにストーリーズよりも多くの時間を費やし、ストーリーズにフィードよりも多くの時間を費やしている」
10代のユーザーはまた、Instagramの新機能「ノート」も積極的に利用しており、ノートは新たな会話を促し、10代の若者たちのアプリに対するエンゲージメントを全体的に高めているモッセーリは述べた。
「しかし大切なことは、我々はメッセージングアプリではない」
近い将来、Instagramのいくつかの機能に別れを告げる準備を(だが、泣くのはまだ早い。おそらくどの機能も恋しく思うことはないだろう)
モッセーリはシンプルさを重視しており、Instagramは機能が多すぎると認識していると述べた。
Instagramのデザイン責任者やプロダクトリーダーなどとこの件について議論しており、「あまり使われていない、あるいはそれほど価値を生み出さない」機能を削除するためにスタッフのリソースを割く可能性もあるという。
それにより、Instagramチームは「よりシンプルで使いやすくするために機能を統合する機会を積極的に探す」ことができるようになると述べた。
ポッドキャスト番組「20VC」はこちら。