2018年9月30日、北京の天安門広場で行われた国慶節前日の式典で、人民英雄記念碑に向かって歩く習近平国家主席。
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- ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は、中国は「長期にわたる経済版のコロナウイルス感染症」に苦しんでいるとフォーリン・アフェアーズ誌に書いた。
- 中国のコロナ後の立ち直りの遅さは長期的な傾向かもしれないとポーゼンは述べている。
- 他の権威主義的な政権と同様、中国の経済発展も予測可能なパターンに従っていると彼は指摘している。
ある専門家は、国際政治の専門誌「フォーリン・アフェアーズ(Foreign Affairs)」に、「中国経済は、新型コロナウイルスのように症状が長引き、感染者が長期にわたって衰弱した状態によく似ている」と書いた。
その記事の筆者、ピーターソン国際経済研究所(Peterson Institute for International Economics)のアダム・ポーゼン(Adam Posen)所長によると、金融市場はまだ事態の深刻さを十分に理解していないという。
「経済版の長引く新型コロナウイルスとでも呼ぶべきだろう」と彼は述べ、「中国は活力を取り戻せておらず、非常に厳格で費用がかかった3年間にわたるゼロコロナ政策が終わった今でも低迷を続けている」と付け加えた。
2022年の終わりに中国政府がゼロコロナ政策を大幅に緩和した時、市場は爆発的な回復を期待した。2023年の第1四半期には景気回復の傾向が垣間見られたが、その後の製造業、消費、輸出、投資の伸びは急激に落ち込んだ。一方、債務の混乱は地方政府と巨大な不動産セクターの足を引っ張り続けている。
それでも、この国の成長予測は、以前の高水準からは下がってはいるものの、比較的楽観的なままだ。例えば、バンク・オブ・アメリカとゴールドマン・サックスは2023年の予想から1ポイント未満の下方修正をしている。国際通貨基金(IMF)は2024年の中国の成長率を4.5%と見ており、その数字は経済協力開発機構(OECD)の5.1%という見通しを下回っている。
しかし、ポーゼンからすると、中国経済はもっと深刻で長期的な不調に陥っている。それは新型コロナウイルスのパンデミックによるものではなく、中国政府の経済支配力の拡大によるものだという。
ポーゼンは、他の例としてロシア、ベネズエラ、トルコを挙げ、「独裁政権における経済発展は、予測可能なパターンをたどる傾向がある。つまり、政治に迎合的な企業が公的資金によって繁栄する成長期を迎えるのだ」と述べた。
「だが、政権が支持を拡大すれば、彼らはますます恣意的な方法で経済に介入し始める。やがて、不確実性と恐怖に直面して家計や中小企業は流動性の低い投資よりも現金を貯蓄することを好むようになる。その結果、成長率は持続的に低下する」
中国の場合、習近平国家主席の極端なコロナ対策が、大規模な介入に対する国民の「免疫」を作り、経済の活力が低下したのだとポーゼンは述べている。
それ以前の数十年間、中国共産党は何もせず傍観していたが、ゼロコロナ時代に民間に対しての支配を強化し、それはピークに達した。
そして、ゼロコロナ政策が突然終了して、国の経済が依然として「党とその気まぐれに左右されている」ことを示したため、成長は回復しないだろうと彼は付け加えている。
このような不確実性の中で「自己保険」をかけるために、人々は現金をため込み、自動車、事務用機器、不動産など、容易に現金に換えられない資産への支出を減らしている。
「この疾患は経済全般に及ぶものであり、唯一の確実な治療法を提供できない。その治療法とは、政府の経済生活への介入には限界があることを一般の中国人や企業に確信させることだ」とポーゼンは述べている。
また、消費者がさらなる混乱を警戒し続ける以上、中国政府の景気刺激策はいずれも意図するような結果をもたらさないだろう。
「流動性の低い投資に対する意欲が低く、マクロ経済政策に対する反応性が鈍い。要するに経済版の長引く新型コロナウイルス感染症だ」と彼は書いている。
それはすでに起こっている。中国人民銀行は金利を引き下げ、直近の中国の政治局会議で景気刺激策への取り組が約束されたのにも関わらず、経済活動にはほとんど改善が見られない。
欧米諸国は中国政府との緊張を高めているが、ライバルにとっても中国の経済的苦境は必ずしも良いニュースではないとポーゼンは述べている。
「再び世界的な不況に見舞われた場合、中国の成長は前回のように海外需要を回復させる助けにはならないだろう。欧米の政府関係者は予想を下方修正すべきだが、過度に喜んではいけない」