HLD 6の頭蓋骨からコンピューターが作成した画像(黄色で表示)。
Wu et al. PNAS 2019, doi.org/10.1073/pnas.1902396116
- 中国で発見された古代の頭蓋骨は、科学者がこれまで見たこともないようなものだった。
- この10代の若者の頭の形は、現在までに確認されている初期の人類のどの頭蓋骨とも一致しない。
- もしこれが未発見の人類の祖先であれば、人類の進化の物語を塗り替えることになるかもしれない。
これまで知られてきたどの人類の祖先とも似ても似つかない古代の頭蓋骨が科学者たちを困惑させている。
2019年、中国東部安徽省東至県の華龍洞で、12、13歳くらいの子どもの謎に満ちた30万年前の頭蓋骨が脚の骨とともに初めて発見された。
「HDL 6」として知られているこの個体が、現代人と当時中国に存在していた未知のヒト亜科の混合ではないかと研究者たちは考えていると『サイエンス・アラート』が2023年8月7日に報じている。
この頭蓋骨は初期現生人類に似た顔の特徴をしており、55万年から75万年前にホモ・エレクトスとして知られる別の人類の祖先から分岐し始めたと科学者たちは考えている。
だが、2023年7月31日に発表された骨の分析で、その手足、頭蓋冠、くぼんだ顎は「より原始的な特徴を反映しているようだ」と中国科学院(Chinese Academy of Sciences)の古生物学者の呉秀傑は述べている。
これらの特徴は、約40万年前にネアンデルタール人から分岐し、すでに絶滅したデニソワ人の顔の構造により近いものだ。
幼年期のデニソワ人の女性の想像図。
Maayan Harel
この奇妙な頭蓋骨の形状は「中期更新世後期、東アジアの原人化石群には記録されていない」と、科学者たちは最近の分析で述べている。
この発見によって、我々が知るこの地域の人類の系統が塗り替えられる可能性がある。サイエンス・アラートによると、デニソワ人、ホモ・エレクトス、そして我々と「系統学的に近い」この新たな系統は、東アジアで共存していた可能性があることを示唆しているという。
人類の歴史は我々が考えている以上に厄介なもの
人類に至ると考えられていた整然とした進化の道筋を、新たに発見された人骨が揺るがすのは、今回が初めてのことではない。
我々の多くは、ホモ・サピエンスは約20万年前にサブサハラアフリカ(サハラ砂漠より南のアフリカ)でホモ・エレクトスから出現したと教えられてきた。
しかし、現実はもっと厄介なようだ。古代のホモ・サピエンスの化石には、古い顔の構造と現代の特徴が混在していることが多く、その時系列は学校の教科書で考えられているよりも少し複雑なのだ。
例えば、2017年にモロッコで発見されたホモ・サピエンスに似た特徴のある約30万年前の頭蓋骨は、人類がこれまで考えられていたよりもはるかに早く出現していた可能性を示唆した。
また最近、イスラエルとギリシャで発見された約20万年前の頭蓋骨も、人類の祖先がこれまで考えられていたよりもずっと早くアフリカを離れていた可能性があることを示唆している。
ロンドンにある自然史博物館の「イギリス 人類100万年の物語」展に展示されていた20代のネアンデルタール人男性の模型。2014年9月。
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また、古代の人類がネアンデルタール人やデニソワ人と交配し、さらに血統を複雑にしていたことを示唆する古生物学的・遺伝学的証拠もある。
もしそれが正しいと証明されれば、この東アジアの調査結果は、「サピエンス以前の標本」の新たな系統を加えることになり、人類の生命の樹にさらなる洞察をもたらすことになるだろう。