※本記事は、2021年10月8日に公開した記事の再掲(一部更新)です。
- アメリカ航空宇宙局(NASA)の木星探査機「ジュノー(Juno)」は、2016年から木星の軌道を回り、その驚きの姿を数多く撮影してきた。
- ジュノーはこれまで、木星のサイクロンやアンチサイクロン、オーロラ、大赤斑、巨大な衛星のそばを飛行してきた。
- アマチュア科学者たちは、ジュノーが撮影した未処理画像に手を加え、息をのむような色彩で嵐や雲を強調した画像を作成している。こうした画像は赤道から両極まで、木星の大気の激しく渦巻く縞模様を捉えている。
- ジュノーのミッションでは、木星が時とともにどのように変化してきたかを明らかにするデータも集めている。その歴史は、他の恒星の軌道を回る巨大ガス惑星を理解するためにも欠かせないものだ。
- ジュノーのデータは、木星のX線オーロラのメカニズムや大赤斑の深さ、強力な磁場についても明らかにしてきた。
NASAの木星探査機「ジュノー」は、5年以上にわたって木星の軌道を回り、息をのむような写真を撮り続けている。
ジュノーが打ち上げられたのは、今から12年前の2011年8月5日のことだ。木星に向かって加速するジュノーはお別れに地球の写真を撮影し、搭載するカメラの準備が整っていることを証明した。
ジュノーは2016年、巨大ガス惑星である木星にようやく到着した。その年の7月に木星を回る軌道に入った。
2016年の初期のフライバイ(接近通過)でジュノーがとらえた「Jupiterrise(木星の出)」
Enhanced image by Alex Mai (CC-BY) based on images provided courtesy of NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS
打ち上げ以来、ジュノーは10億マイル(約16億キロ)以上を飛行し、ジュノーカムは1万9800枚を超える写真を撮影してきた。
ジュノーが地球に送信する生データは複数の波長帯で構成されていて、赤、青、緑の3原色を割り当てることで人間が見ているのと同様のカラー画像を作成できる。
アマチュア科学者たちはそれらの波長帯を合成、処理してカラフルなポートレートを作成している。色を鮮やかにすることで、木星の大気、嵐、雲からなるさまざまな縞模様を強調している。
赤みがかったオレンジ色をした木星の北北温帯縞(North North Temperate Belt)と、灰色をした2つのアンチサイクロン(2018年5月23日)。
木星軌道を回るジュノーはいったん木星から離れた後、また近づいて近接距離でフライバイする。こうしたフライバイでは木星の北極近くを飛行する。北極の中央には地球サイズの巨大なサイクロンが存在し、その周りで8つの嵐が渦巻いている。
木星の南極も驚くような光景という点では北極に劣らない。ジュノーは木星の両極のクローズアップ写真を史上初めて地球に届けた。
ジュノーがそれぞれのフライバイで撮影した一連の写真を画像処理のプロが組み合わせると、ジュノーがたどった軌跡を再現できる。この合成画像は、グラフィック・アーティストのショーン・ドーラン(Seán Doran)氏が作成したものだ。
この一連の画像からは、木星に近付いては離れていくジュノーがわずか数時間のうちに一方の極から反対の極へと勢いよく飛行する様子が見てとれる。
ただ、ジュノーのミッションは美しい写真を撮ることではない。木星がどのように形成され、時とともにどのように進化してきたのか、その手がかりを探っている。
その歴史は、科学者たちが太陽系の成り立ちを解き明かす助けになるかもしれない。木星のような別の恒星の軌道を回る巨大ガス惑星について知る手がかりにもなるだろう。
ジュノーは木星の磁場を初めて観測し、科学者が予想していたよりもはるかに強力であることを突き止めた。木星の磁場は、地球の最も強い磁場と比べて10倍も強い。
到着から1年後、ジュノーは木星の大赤斑の近くを通過した。大赤斑は木星の赤道近くに存在する巨大な嵐だ。ジュノーの観測により、その深さは200マイル(約320キロメートル)に及ぶことが分かった。これは地球の海の50~100倍の深さだ。
2017年にジュノーがとらえた大赤斑の画像。ジュノーが測定した速度データと、嵐の風のモデルをもとに動画化もされている。
サイクロンは木星と同じ方向に渦巻いているが、アンチサイクロンは反対方向に渦巻いている。どちらも木星のいたるところで見られ、大きさもさまざまだ。
ジュノーは木星の南極でリボン状に輝くオーロラも観測している。地球のオーロラに似ているが何百倍も強力だ。他の惑星のオーロラとは異なり、木星のオーロラは強力なX線を放出している。
ジュノーは2021年6月、木星の氷衛星ガニメデのそばを通過した。ガニメデは太陽系最大の衛星だ。その地下には海があると科学者たちは考えている。つまり生命が存在し得るということだ。
アマチュア科学者のジェラルド・アイヒシュテット(Gerald Eichstädt)氏は、ジュノーの画像をまとめ、木星とガニメデの近くを飛行した6月のフライバイのタイムラプス動画を作成した。
動画の長さは3分30秒だが、ジュノーが実際にガニメデと木星の間の73万5000マイル(約118万キロメートル)を移動するには約15時間、木星の両極間を移動するにはさらに約3時間かかっている。
ジュノーは木星と太陽の間を横切る、火山活動の活発な衛星イオの影も捉えた。木星には79の衛星がある。
ジュノーはもともと2021年7月に木星の大気に突入し、燃え尽きる予定だったが、NASAはそのミッションを2025年9月まで延長した。衛星ガニメデ、イオ、エウロパへの接近飛行が予定されている。
ジュノーにとって23回目となる木星へのフライバイで撮影されたサイクロンの渦(2019年11月3日)。