NASAの火星探査機「インサイト」が送信してきたデータで、火星の自転が毎年わずかに早くなっていることがわかった。
NASA/JPL-Caltech/USGS; NASA/JPL-Caltech
- NASAの火星探査機「インサイト」が、新しい火星の謎を見つけだした。
- 火星の自転は早くなっており、徐々に1日が短くなっているようだ。
- 科学者は、その理由についてはわからないが、古代の氷が関係しているかもしれないと述べている。
我々の地球では1日が長くなっているかもしれないが、火星では不思議なことに1日が短くなっている。
NASAによると、火星の自転周期は24.6時間だが、1年に4ミリ秒早まっており、少しずつ短くなっているという。
NASAの火星探査機「インサイト」によってわかったこの事実は、科学者を困惑させている。
「我々は多くの時間とエネルギーを注ぎ、このような発見を期待して、準備してきた。それにも関わらず、我々は驚かされている」とベルギー王立天文台の宇宙工学エンジニアで、この研究の主任科学者であるセバスチャン・ル・メストル(Sebastien Le Maistr)は語った。
科学者たちは、この変動の要因をはっきりと解明していないが、有力な説は火星に存在する氷が原因である可能性を示唆している。
火星の北極にあるアイスキャップ。
NASA/JPL-Caltech/Malin Space Science Systems
火星は遠くから見ると不毛な荒れ地に見えるかもしれないが、水と二酸化炭素の混合物の氷(ドライアイス)がある。
火星の複数の地点で氷が発見されているが、最もよく見られるのは極地で、季節によって大きくなったり、融けて小さくなったりする。
NASAでは、これが氷河期後期の隆起と呼ばれるプロセスを引き起こしている可能性があるとしている。それは巨大な氷の下に閉じ込められた大地が、氷が溶けた後に盛り上がることだ。
少量の氷が融けても、このような大きな惑星の自転に影響を及ぼすとは思えない。だが、これは前例のないことではない。
例えば、極軸を中心とした地球の自転は、氷河が溶けたことで、80年代から約13フィート(約4メートル)ずれたと考えられている。
一方、月の引力が我々の一日をごくわずかに長く伸ばしている。科学者は、100年あたりで1日2.3ミリ秒長くなっていると算出している。
「インサイト」が撮影した自身のソーラーパネル。左は2018年12月、右は2022年5月。
NASA/JPL-Caltech
この火星に関する最新の発見は、NASAの探査機「インサイト」が900日以上もの日数をかけて集めたデータによるものだ。
「インサイト」は、ソーラーパネルが埃で見えなくなって電力が切れるまでの4年間、地震や隕石の衝突などに関する火星の情報を集めてきた。だが、科学者たちは、その間に地球に送られたそれらのデータについて現在も学んでいるところだ。
「この最新のデータをとても正確に得られたことは本当にすばらしい」とインサイトの主任研究員で、南カリフォルニアにあるNASAジェット推進研究所のブルース・バーナード(Bruce Banerdt)はプレスリリースで述べた。
「私は長い間、インサイトのような地球物理学のデバイスを火星に送りこむ取り組みに携わってきた。このような結果はその数十年にわたる仕事すべてに価値があったということだ」