四川省にある普光天然ガス田(2007年5月)。写真はイメージです。
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7月20日、中国は地下に眠る天然資源を求め、中国南西部の四川盆地で地下1万520メートルまで掘り下げる超深度ボーリング孔の掘削に着手した。国営・新華社通信によると、この地域は天然ガス生産の主要地域で、天然ガスの埋蔵量を産出するためだという。
中国は5月39日に石油資源が豊富な新疆ウイグル自治区のタリム盆地で、深さ1万1100メートルの超深度ボーリング孔の掘削を開始したばかりだ。こちらの掘削工事は、新華社によると、地中を掘り進む細いシャフトは10以上の大陸の地層(岩石の層)を貫通し、約1億4500万年前の白亜紀の岩石層に到達するという。ちなみに、タリム盆地は四川盆地などと並ぶ、中国の4大盆地の一つ。
地下1万メートル級の「世界最深級の人口の穴」
完成すれば、世界最深級のボーリング孔になるが、過去にはこれらのボーリング孔よりさらに深い人工の穴があった。ロシア北西部のコラ半島超深度掘削坑と呼ばれるもので、ソ連時代の科学掘削プロジェクトとして1970年5月に始まり、完了までに20年を要し、深さ1万2262メートルまで到達した。
つまり、これらの超深穴の深さはエベレストの標高約8800メートルという数字を超えるものだ。人類は月に到達したが、足下深くの地面の探索に関して言えば、これまでは地球の表面をなぞった程度だという。深く掘削することにより、地球がどのように形成され、地殻の地質学的タイムラインがどのように機能するかを解明する目的もあるとされる。
米ブルームバーグによると、習近平国家主席は、2021年に行われた国内有数の科学者を対象とした講演で、地球深部探査のさらなる前進を呼び掛けた。このような取り組みは鉱物やエネルギー資源を識別し、地震や火山噴火などの環境災害のリスク評価に役立つ可能性があるとした。
だが、つまるところ最も重要な狙いは地下資源だ。
ボーリング事業に参加している企業の名前
中国の遼寧省大連市にあるペトロチャイナの受入ターミナルで見られる液化天然ガス(LNG)の貯蔵タンク。
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ボーリング孔事業に参画している企業は、いずれも大手の国有石油複合企業。新華社通信によると、今回の四川盆地でのプロジェクトは、中国最大級の国有エネルギー会社・中国石油天然気集団公司の子会社ペトロチャイナ・サウスウェスト石油ガス田社が運営している。
ただ、プロジェクト関係者は、「掘削は多くの困難に直面する」との覚悟を示した。深く掘れば掘るほど地中の温度は上昇し、深度1万メートルでは摂氏200度になり、1万5000メートルにもなれば300度にも達するという。そのため、旧ソ連のコラ半島超深度掘削坑は深さ1万2262メートルで掘削を中止した。
世界第2位の経済大国であり、世界最大の炭素排出国である中国は、膨大なエネルギー需要を抱えている。習主席は、将来のエネルギー安全保障を国家安全保障の優先事項と宣言した。
中国江蘇省南通市にあるペトロチャイナの液化天然ガス(LNG)貯蔵タンク付近さ業務をする作業員(2018年)。
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米CNNによると、実際に中国は再生可能エネルギーの世界的リーダーとなったと指摘。最近の報告書によると、中国は風力と太陽光エネルギーの生産能力を倍増させ、2030年のクリーンエネルギー目標を5年前倒しで達成する軌道に乗っているという。だが、その反面、中国は地球温暖化を引き起こす世界最大の汚染国でもあり、石炭生産を増加させている。米国は中国に次いで世界2位の炭素排出国だ。
米国のジョン・ケリー気候変動特使は先週、北京を訪れ、中国当局者らと会談。気候危機に立ち向かうためのより迅速な行動を呼びかけた。
ケリー氏との会談は避けたが、同氏の訪問中、習氏は環境保護に関する全国会議で中国の炭素排出量は2030年までにピークに達し、60年までにはカーボンニュートラルを達成するという二酸化炭素目標に対する中国のコミットメントは「揺るぎない」と誓った。
「ただし、この目標を達成するための道筋、方法、ペース、強度は自分たちで決定すべきであり、他人に影響されることは決してない」と習氏は強調した。
The News Lens Japanより転載(2023年7月25日公開の記事)