お金もない、仕事もない… 中国の大都会で増える、若者の「ベッドシェアリング」

ベッドでスマートフォンを使う人

Oscar Wong/Getty

  • 中国の大都市では、家賃を払う余裕のない若者たちがベッドをシェアして一緒に寝ている。
  • 「同じ部屋、同じベッド」を貸すという広告がソーシャルメディアで急増している。
  • これは若者2人が同じベッドで同時に眠り、家賃を半分ずつ負担する仕組みだ。

中国の大都市では、生活の苦しい若者たちが家賃をどうにかして工面する方法を見つけた —— 見ず知らずの人間とのベッドシェアリングだ。

中国が若者の失業危機に直面する中、上海や北京といった都市部でベッドのシェアを呼びかける広告が中国のソーシャルメディア「小紅書」に投稿されている。

これはオーストラリアなどを中心にトレンドになっている、ベッドを交代で使うことで家賃を節約する「ホット・べディング」とは異なる。中国では「ベッドメイト」が同じベッドで同時に眠り、家賃を分けるのだ。

この取り決めは、若者たちにとって他者との境界線を維持する新しい方法を考えるきっかけになっている。

「同じ部屋、同じベッド、布団は別」というキャッチフレーズはこうしたベッドメイトを求める投稿でしばしば見られる文言だ。上海の宝山区にあるベッドスペースを宣伝しているある若い女性も同じようなことを書いている

「いびきはかきません。時々寝言を言います。朝は9時くらいに起きて、夜は9時くらいにベッドに入ります。火曜日が休みです」とこの女性は投稿している。

女性は、友人が引っ越してから家賃を1人で払うことができなくなったと書いている。「仲間となる女性と住み続けられることを願っている」という。

女性いわく、部屋は「広々としていて、出窓があり、カーペットやテーブルとイスが2組ある」という。

関心を持ったユーザーが複数、この投稿に返信している。

「とても興味があります。あなたとおしゃべりしてみたいです」とあるユーザーはコメントしていた。7月下旬までに、広告を投稿した女性は8月の借り手を見つけたと書いている。

別の投稿者は、北京の中心部にあるベッドスペースを月額1850元(約3万7000円)で貸すと宣伝している。「きれい好きの女性」歓迎だという。

「毎日、夜の10時から朝の7時まで家を空けることが多いです。ベッドはとても大きいです」とこの投稿者は書いていて、洗濯機や小さなキッチンなど部屋の様子が分かる写真を添えている。

「ここはまだ借りられますか?」と尋ねるユーザーもいた。

「家賃に苦しむことなく、普通の生活を送る」

このトレンドは7月上旬に雑誌『新周刊』の記事で取り上げられてから、より注目を集めるようになった。

「こういった形の賃貸の取り決めは大胆または非常識に聞こえるかもしれないが、一線都市ではこうした共同賃貸アプローチは珍しくない」と記事は指摘している。

一線都市は一般的に、北京、上海、広州、深センの4都市を指す。『第一財経』によると、これらの都市の平均家賃は1平方メートルあたり月に88.15元(約1760円)だという。

北京近郊で暮らしている「同屋同床」の例をニュースサイト『Youth36kr』が報じている。

小紅書で知り合ったこの2人は、アパートの部屋で実際に会うまで互いの本当の名前も、どんな見た目をしているかも知らなかったが、それぞれ月に1500元(約3万円)ずつ払ってこの部屋を借りているという。

いびきをかかない、睡眠時遊行症ではない、部屋に男性を招かないことで2人は合意していると、Youth36krは伝えている。

「2人は家賃に苦しむことなく、普通の生活を送るという最もシンプルな願いを叶えた」という。

希望が見えない若者たち

中国国家統計局によると、6月の若年(中国では16~24歳を指す)失業率は21.3%と3カ月連続で最高を記録した。ベッドシェアリングはこうした状況の中で出てきたものだ。

2023年は1160万人の大学新卒者労働市場に参入すると見込まれる中、Z世代の労働者たちは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の3年間に及ぶ残酷な締め付けによって経済的に打撃を受けている

人材コンサルタントの麦可思(MyCOS)が2023年に発表した調査結果によると、中国の新卒者の平均初任給は2021年の時点で月額5833元(約11万6500円)だった。

見通しの厳しさは中国の若い労働者たちの間に不信をもたらし、「寝そべり(躺平(タンピン))」や卒業写真でゾンビポーズをとるといった、ハッスルカルチャーを拒否する動きが起きている。

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