「たまプラーザ テラス」にオープンしたKuradashi(クラダシ)初の実店舗。
撮影:土屋咲花
フードロス削減に取り組む食品ECのクラダシが8月10日、上場後初の通期決算を発表した。
売上高は29億1000万円(前年比40.3%増)、営業損失は1億6400万円(前期は7400万円の赤字)、最終損失1億6700万円だった。
クラダシは、営業赤字の要因として広告宣伝費に2億4000万円あまりを投下したため、と説明している。2024年6月期では黒字転換を目指す。
値上げ影響で仕入れが減少
KPIの推移。第4四半期では、販売側の指標である「平均仕入高」と、購入側の「月間ユニークユーザー数」が下落した。
出典:クラダシ2023年6月期決算説明資料
決算説明会資料によると、第4四半期の業績が思うように伸びず、年間売上予想の30億円に対してはマイナス3.2%と未達だった。
理由は食品の値上げだ。食品値上げは数カ月前に事前告知されることから、スーパーマーケットなどの小売企業各社は値上げ前に在庫を確保する。その結果、クラダシのパートナー企業であるメーカーや卸の在庫処分が進み、フードロス品としてクラダシに供給される商品が減ったという。
クラダシは、そのままでは廃棄されてしまう商品をメーカーなどから買い取り、ダイナミックプライシングによる最適割引額で売り切る食品ECを主力事業にしている。
河村晃平CEOは
「弊社のビジネスモデルは、パートナー企業で発生したフードロス品をユーザーへお届けするマッチングビジネスです。魅力的なフードロス品を多く仕入れることで、売り上げが発生します。
パートナー企業サイドのフードロス品の案内が重要になりますが、第4四半期においては、特に大口の商品案内が減少したことから、平均仕入れ高の減少につながり、 商品魅力度の低下によるユーザーの減少、売上高の減少という結果となりました」
と説明した。
ただ、「影響は短期的」と見る。長期的には需給バランスが崩れると予想し、食品値上げによる影響は2024年6月期の第1四半期までと見込んでいるという。
「物価高による影響は、短期的に見るとマイナスの影響が出るものですが、今後、需給のバランスが崩れると予想しています。トータルでは弊社にとっては商機。そこでしっかりと在庫モデルの成長を図っていきます」(河村CEO)
事業としての安定性が「課題」
決算説明会には、関藤竜也代表取締役社長、河村晃平CEO、高杉慧CFOが出席した。
Zoom画面よりキャプチャ
メーカーや卸売業からのフードロス品を扱う以上、河村CEOは「安定性は課題であると認識している」と話した。
「収益の転換をすることにより、インフレ、物価高による影響を大きく受けない形の体制に変えていきたいと考えている」という。
具体的には、先に自社サイトへ商品を掲載し、注文があった場合にパートナー企業が直接会員に発送する「マーケットプレイス型」の取引形態を強化することでベースとなる売り上げの確保を図るほか、現在2店舗を展開するオフライン事業も育成していくという。
2024年6月期は売上高35億円、営業利益4500万円、最終益8000万円の黒字決算を見込む。
クラダシは2022年6月30日に東証グロース市場に上場した。初値は公開価格の520円を54%上回る800円だった。