マーケティング担当者はZ世代に注目し始めている。
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1997年〜2012年に生まれたZ世代が徐々に経済的に独立し始めており、結婚やキャリアのスタートといった節目を迎えている。セフォラ(Sephora:LVMH傘下の化粧品や香水の専門店)、シリウスXM(SiriusXM:通信衛星を使ったストリーミングサービス)、ザ・ノット・ワールドワイド(The Knot Worldwide:結婚関連のコンテンツやサービスを提供)のような多種多様な企業が、そうした世代を狙ってマーケティングを強化している。
Insider Intelligenceによると、2021年にミレニアル世代(1981〜1997年に生まれた世代)のうちの6430万人がオンライン購入を行い、2023年にその数は6440万人になると予測されている。一方、Z世代で2021年にオンライン購入を行ったのは3720万人、2023年には4550万人になると予測されている。
「多くのブランドのミレニアル世代を中心としたコア顧客層は年齢が上がり、ブランドはロイヤルティ・プログラムで顧客層を維持したいと考えています」とマーケティング・エージェンシーJanuary Digitalのサラ・エンゲル(Sarah Engel)社長は話す。
「しかし、新規顧客をブランドに取り込むという観点では、ミレニアル世代を取り込もうという話題は毎週出てくるわけではありません。会話に出てくるのは、どこでも『Z世代、Z世代、Z世代』です」
セフォラの最高マーケティング責任者(CMO)のゼナ・アーノルド(Zena Arnold)氏はInsiderの取材に対し、向こう1年間で自社を「Z世代のような成長顧客層から選ばれる小売店とする」ようにポジショニングすることが自身にとっての重要課題だとし、次のように語る。
「この世代は私たちにさまざまなインスピレーションを与えてくれます。私たちは、この世代がどのようにしてビューティ(製品)にアプローチし、購入するかに取り組み続けています」
Z世代の難しいところは、Z世代が商品やサービスと関わる方法が、それより上のミレニアル世代とさえも大きく異なることだ。Z世代はデジタル化の進展とともに成長してきた世代のため、ブランド側も商品・サービスの提供の仕方を相応に見直さなければならない。
例えば、ザ・ノット・ワールドワイドのCMO、ジェニー・ルイス(Jenny Lewis)氏によると、結婚に対するZ世代の考え方はユニークだ。
「Z世代は、ゲストに提供する体験に重点を置いている」
Z世代の結婚に対する考え方は、同社がマーケットプレイスで提供している製品やサービスの種類に影響を与える。マーケットプレイスでは結婚を考えているカップルが関連する製品やサービスを見つけることができ、同社にとって大きな収益の柱となっている。Z世代が結婚の計画を立て始めるにつれて、新しい種類のサービス提供者が登場しているとルイス氏は語る。
「ソーシャルメディア・キュレーターという新たなカテゴリーが登場しています」
シリウスXMのような企業は、自社製品がZ世代に強く支持されているため、大きなチャンスをつかんでいる。
例えば、世界的な広告会社IPGの市場調査部門マグナ(Magna)がニールセン、コムスコア、エジソン・リサーチの調査を分析したところ、Z世代は全世代の中で最もデジタル・オーディオを聞いており、1人あたり毎週最大25時間をリスニングに費やしているという。Z世代のメディア利用時間の約3分の1を占めているのがストリーミング・オーディオだ。
ストリーミング・オーディオは、スポティファイ(Spotify)、シリウスXMのパンドラ(Pandora)、YouTube、iHeartなどがサービスを提供しており、厳しい競争環境にある。シリウスXMはこの秋、オーディオ・プラットフォームの大規模リニューアルを実施する予定で、若いオーディエンス、つまり「Z世代とミレニアル世代のすべて」をターゲットにした大規模なマーケティング攻勢を予定しているとスージー・ワトフォード(Suzi Watford)CMOは話す。
ワトフォード氏の業務には、Z世代ではないミレニアル世代も含まれているが、広告業界の中には、特にビデオゲームのような環境でのブランド・メッセージに寛容なZ世代に焦点を移しているところもある。
スーパー・リーグ・ゲーミング(Super League Gaming)は、ビデオゲーム環境における精巧なブランド体験を築いている。例えば2022年10月には、クライアントのマテル(Mattel)社向けに、バービー人形のドリームハウスをゲーミング・プラットフォームのRoblox(ロブロックス)内に構築した。
「設立当初、私たちはミレニアル世代をターゲットにした、たくさんのプロダクトを扱ってきました」とスーパー・リーグ・ゲーミングのアン・ハンド(Ann Hand)CEOは振り返る。
「ミレニアル世代は、ブランドやブランド・エンゲージメントに対するシニシズム(冷笑主義)がありました。Z世代は、バービーのドリームハウスを不快に思っていません。熱狂的に受け入れています」
ブランドは若い世代を取り込もうと常にリップサービスをしてきたが、ハンドCEOによると、投資は必ずしもそうではなかった。
「マーケティングの基本は若い世代を取り込むこと。しかし、ブランドがオーディエンスの変化に気づき、それに対応するには時間がかかります。残念なことに、大企業は年度末の指標にとらわれすぎていて、過去5年間にうまくいったやり方を踏襲しています。そして、大きな断絶に気づくことになるわけです」
だが広告主は、Z世代が受け入れると、ミレニアル世代などの上の世代も続くというユニークさも見出している。January Digitalのエンゲル社長はこう語る。
「Z世代には、世代を超えたインパクトがあります。Z世代がTikTokでトレンドを確立すると、ミレニアル世代が1年後にそのトレンドをキャッチします。つまり、Z世代をターゲットにしたとしても、Z世代だけをターゲットにすることにはならないのです」