撮影:Business Insider Japan、Ned Snowman/Shutterstcok、StreetVJ/Shutterstock
大手外食決算が出そろった。
国内外約3000店舗を展開するファミレス大手すかいらーくHD、すき家やはま寿司などを展開する巨大外食企業のゼンショーHD、ロイヤルホストやリッチモンドホテルなどを傘下にもつロイヤルHD、そして庶民価格の手ごろなイタリアンで知られるサイゼリヤだ。
サイゼリヤが7月に公表した決算の「異変」については既報の通り。黒字決算ながらも国内事業は営業赤字に陥っており、海外事業で黒字化させる状況となっている構造を取り上げた。
そんななか、大手外食企業の決算を見るとそれぞれ軒並み黒字で、四半期の区切りがやや異なるとはいえ、サイゼリヤが苦しむ「国内」事業でも利益が戻ってきている様子が見て取れる。
各社決算のポイントをまとめた。
外食チェーンをめぐる「国内」の状況
人出の回復と、インバウンド観光客の急増などによって街は活気を取り戻している。
大半の外食大手の決算説明コメントには、2019年比などコロナ前との比較でほぼ並ぶ状況になってきたことが数字で確認できる。
・すかいらーくHD(8月10日発表、2023年12月期第2四半期・決算短信)
「当社グループの第2四半期連結累計期間の既存店売上高は2019年比92.1%となりました」
・ゼンショーHD(8月10日発表、2024年3月期第1四半期・決算短信)
「各報告セグメントの既存店売上高前年比は、『グローバルすき家』で119.3%、『グローバルはま寿司』で108.5%、『グローバルファストフード』で115.8%、『レストラン』で123.0%、『小売』で99.9%となりました」
※ゼンショーは2020年3月期〜2023年3月期まで、通期黒字を維持している
・ロイヤルHD(8月9日発表、2023年12月期第2四半期・決算説明資料)
「第2四半期期間(4月~6月)の経常利益は、外食・コントラクト・食品の3事業がコロナ禍前(2019年第2四半期期間)の水準を超過」
・サイゼリヤ(7月12日発表、2023年8月期第3四半期・決算短信)
「行動制限が徐々に緩和されたことで、客数は増加傾向にあります。しかしながら、資源価格の高騰と円安による食材価格やエネルギー価格の上昇の影響を受けており、売上高は874億53百万円(前年同期比18.6%増)、営業損失は15億77百万円(前年同期は21億77百万円の営業損失)となりました」
サイゼリヤは5月、決算会見のなかで「値上げはしない」と松谷秀治社長がコメントしたと報じられている。
具体的には、メニューの値段を変えず、一部内容量の調整で価格維持をするという方針をとっているほか、粉チーズを有料化するなどで工夫し、「手ごろさ」というブランドを損なわない配慮をした。
とはいえ、この4社のなかでコロナ期間を通じて大々的な「値上げ」に踏み切らなかったのはサイゼリヤのみ。これだけが要因ではないとはいえ、値上げを踏みとどまった1社が国内赤字の状況にあるというのは、対照的だ。
人件費、原材料費、光熱費高騰という三重苦は外食産業にとって共通したネガティブ影響であり、企業努力の範疇の工夫では限界に近い状況なのではないか。
8月に公表された各社の決算のポイントは次のとおりだ。
■すかいらーくHD…復活を感じさせる上半期実績
出典:すかいらーく
すかいらーくHDは8月10日の2023年12月期第2四半期決算で、上半期の黒字を計上した。
累計売上高は1698億円(前年同期比19.9%増)、営業利益29億円(前期は24億円の赤字)、純利益5億円(同28億円の赤字)。すかいらーくHDにとって、上半期黒字の意味は大きい。
前年2022年度の通期決算(2022年12月期)は営業益、最終益ともに赤字だった。
さらに1年前の2021年度通期は決算資料上は182億円の営業黒字だが、427億円という巨額の時短協力金を得てのものだった。コロナ期間を通じて、厳しい事業環境に苦しんできた。
今回の決算資料によると、前出の「三重苦」も含めたインフレ影響(コスト増)は、2022年比で+84億円にも及ぶ。
これらコスト増対策ができているのは、値上げに踏み切ったことに加えて、赤字体質の改革に急ぐ中でロボット導入などの「収益構造改革」を進め、年間目標30億円をかかげる原価低減を進めてきたことが奏功しているとみられる。原価低減については、上半期時点で20.3億円まで積み上げているという。
出典:すかいらーく
決算資料には、この反転攻勢とも言える取り組みの概要が9ページにわたって具体的に言及されている。
結果、通期業績予想を上方修正し、営業益は60億円から100億円に、最終益を10億円から40億円へとそれぞれ修正している。
■ロイヤルHD…ロイホ、ホテル、空港事業まで実質4年ぶりの経常黒字
出典:ロイヤルHD
ロイヤルHDは、ロイヤルホストを中心とする外食だけではなく、ホテル事業(リッチモンドホテル)、空港ターミナルの店舗などのコントラクト事業などを抱えるという点でほか4社とはビジネスモデルが異なる。
いずれもコロナ影響を強く受ける事業だったこともあり、ここ数年は苦境に苦しんだ。
8月9日に公表した決算では、売上高645億円(前年同期比36.3%増)、営業利益25億円(前年は74億円の赤字)、純利益14億円(同7億円の赤字)。
連結経常損益の推移を見ると、助成金収益がない状態での第2四半期黒字は、実に4年ぶりになる。
この第2四半期の経常利益については、2019年の水準(16億円)を超える状況まで盛り返してきた。
インフレ対策としては、高付加価値商品の開発・提供などで対策している。
出典:ロイヤルHD
通期業績予想は上方修正し、営業益を44億円から52億円に、最終益を28億円から36億円とすると公表している。なお、ロイヤルHDと総合商社の双日は3月、ロイヤルホスト初の海外直営店の展開のためのシンガポール法人の設立に向けた合弁契約締結を発表している。
■ゼンショーHD…ロッテリアを傘下に、外食のなかでも堅調なビジネス基盤
出典:ゼンショーHD
ゼンショーHDは、すき家・なか卯などのファストフード業態から、回転寿司チェーン大手のはま寿司、ココスなどのファミリーレストランなど幅広いポートフォリオを持つのが特徴だ。また4月1日からはハンバーガーチェーン「ロッテリア」も傘下に加わっている。
2024年3月期第1四半期決算は、売上高2143億円(前年同期比20.2%増)、営業利益95億円(同259.9%増)、純利益66億円(同50.8%増)と非常に力強い決算になっている。
ゼンショーは今四半期から決算で開示する事業セグメントを変更しているが、旧セグメント(外食事業、小売事業の2セグメント)で見た外食事業は、セグメント売上高1948億円(22.4%増)、営業益99億円(同198.1%増)と好調に推移している。
通期業績予想は5月発表から変更はなく、売上高8984億円(前年比15.2%増)、営業益400億円(同84.5%増)、最終益230億円(同73.4%増)としている。