イアン・グループ氏はフルタイムで働きながら、副業として金融リテラシーの会社を経営している。
Courtesy of Ian Group
イアン・グループ(Ian Group)氏が19万ドル(約2755万円、1ドル=145円換算)相当の学生ローンを抱えてロースクールを修了した後、物事は彼が想像していた通りには進まなかった。
「ロースクールを出て大金を稼ぎ始めれば、ローンの返済に困ることはないだろうと考えていました」
ところが、グループ氏が卒業した2011年の労働市場は2008年の景気後退の影響で特に厳しい時期にあり、彼は年収5万3000ドル(768万円)の事務職に就くことになったと言う。
「両親に泣きながらこんな話をしたことを覚えています。『返済するだけの金も稼げない。本当に後悔してる』って」
打ちのめされた彼は節約のために両親のいる家に戻り、当初はローンのことは無視していた。返済期限の延長は2回行った。そうすれば一時的に返済を停止できる(それでも利子は増え続け、返済期限延長期間の終了時に元金残高に加算されることになるが)。
「私は責任から逃げたのです」とグループ氏は言う。そのことで彼はさらに大金を払う羽目になった。高い金利のせいで、ローンの元金は19万ドルから21万ドル(約3045万円)まで膨れ上がったのだ。
「結局、他に選択肢はありません。ローンを返済する方法を考える必要があったのです」
彼は債務を管理するために、さまざまな手段を講じた。ローンを低金利で借り換え、予算を組み、収入を増やす計画を立てた。
Insiderが最初にグループ氏に話を聞いた2021年12月の時点で、彼は学生ローンを15万ドル(約2175万円)返済していた。
彼はその後も借金を少しずつ減らし続け、2023年8月の時点で19万ドルを返済している。Insiderが彼のローン残高表を確認したところ、ローン残高は2万ドル(約290万円)だった。
38歳のグループ氏は、2023年末までにローンを完済できると見込んでいる。今日にも完済するだけの余裕はあるが、彼の金利はかなり低いので、月々の返済を続けて、一括払いに使うお金を株式市場に投資しておくことを選んだ。
グループ氏は金利の引き下げ交渉をし、予算を組み、収入を増やすことでローンに立ち向かった。
Courtesy of Ian Group
ローン返済に加え、彼は緊急時用の蓄えを用意した。2021年にフロリダに夫婦で自宅を購入したが、このような多額の出費をまかなうために予算に余裕を持たせたのだ。現在は子ども2人の大学進学のために貯蓄をし、引退後に夫婦で快適な生活ができるように投資をしている。
彼の経済状況は安定している。6年ほど前に大手法律事務所を辞めてテック系スタートアップに転職した際には大幅な年収ダウンを経験したが、それも不安にならなかったほどだ。
彼はフルタイムで働きつつ、副業で金融リテラシーの会社を経営している。その会社で彼は、負債を管理したい人向けに、自身のインスタグラム(Instagram)アカウントIanBuildsWealthやポッドキャストで無料コンテンツを公開し、有料で30日間の「借金バスターズ・ブートキャンプ」を行っている。
グループ氏の負債管理戦略の肝は予算編成にある。毎年新たに予算を立てていたと彼は述べる。
「予算をExcelのスプレッドシートに入力していました。上部に預金口座の残高を記入し、その次に支出(クレジットカードでの消費の見込み、賃貸料、学生ローン)と収入を見積もって記入しました」
それによって、月ごとに収入と支出の差額に応じて預金口座の残高がどれだけ増加または減少するかを追跡することができた。
「預金口座からの引き出し過ぎを防ぎたかったんです。浪費していると残高がどんどん減っていくのが分かります」
グループ氏は最近、個人的に使用し、ブートキャンプの顧客にも提供している予算表をアップグレードした。彼はさまざまなシートのスクリーンショットを公開し、各箇所を説明してくれた。
彼の予算管理表はいくつかの異なるセクションに分かれている。1つ目のシートは収入だ。
なお、図の中の数字は予算管理表の機能を示すための見本の数字で、グループ氏のものではない。
Courtesy of Ian Group
このシートには「月収の見積もり(Estimated Monthly Income)」と「実際の月収(Actual Monthly Income)」という2つの項目が設けられている。C列に記入されている月ごとの見積もりは、月ごとの実際の収入の列に自動入力され、年間の収入がどうなるかが分かるようになっている。だがその眼目は、実際にいくら稼いだのかが判明する各月の末に、実際の金額を入力することにある。
また、仕事が2つあったり、歩合制で稼いでいたりする場合には、複数の収入源を記入することもできる。
2つ目のシートは支出に充てられている。
このセクションも「月の支出の見積もり(Estimated Monthly Expenses)」と「実際の月の支出(Actual Monthly Expenses)」という2つの列が設けられている。収入のシート同様、見積もりと一致しない場合は実際の金額を毎月修正する必要がある。
Courtesy of Ian Group
A列には賃貸料やインターネットから外食やアマゾン(Amazon)での買い物まで、特定の月に生じる可能性のある支出の項目を記入する。
彼は各支出の分類先として8つのカテゴリーを用意している。生活費、交通費、医療費、負債の返済、日用品、外食、ショッピング、一度きりの支出の8つだ。さらに、各費用を「欲しい物」「必需品」「負債」に分類することができる。
3番目のシートは投資管理用だ。
Courtesy of Ian Group
A列にはRoth IRAから課税対象となる証券取引口座まで、さまざまな投資の手段を記入する。彼はここに緊急時用の蓄えも含めている。
ただ、グループ氏は401(k)プランなどの税引前の投資手段は含めていないことに注意する必要がある。 「これは完全に税引後の投資のためのものです」と彼は説明する。
「ここで注目するのは『これだけの収入があり、これだけの支出がある』ということだけ。その目的は、最終的にどれだけの額が残っているかを知ることです」
例えば401(k)に拠出している場合、その金額は自動的に給料(つまり、収入シート)から差し引かれているのだから、改めて差し引く必要はない。
次に、グループ氏は予算の見積もり額の合計、そして実際の額の合計を設けている。
「収入、支出、貯蓄、投資の額を入れると、総合計が表示される」と彼は説明する。
Courtesy of Ian Group
このシートで注目したいのは「実際の予算のサマリー(Actual Budget Summary)」の31行目だ。「数字が0以上なら、その月は正味プラスであり余剰な資金があることになります」とグループ氏は説明する。
「マイナスなら浪費をしているということなので、どう軌道修正するかを考える必要があります」
数字は嘘をつかない。だからこそ彼の予算管理表は効果があるのだ。
「効果的なのは数字が見えるからです。何が起きているか、これで否応なく理解できます」